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東北大学大学院文学研究科・文学部 英語学研究室

2024年度英語学研究室講演会

日時 2024年7月20日(土)10:00〜12:30

会場 文学研究科棟 1階 135教室(東北大学川内南キャンパス) [MAP]

参加申込 不要


講演題目・概要

The Multiple Grammmars Hypothesis and Interspeaker Variation: Towards a More Inclusive Generative Paradigm

講師:佐藤 陽介 氏 (津田塾大学准教授)

概要
「刺激の貧困の議論」とは、PLDと矛盾しない文法が複数存在するにも関わらず我々が短期間にその中から正しい文法を獲得できるという観察をもって、その獲得を可能にするUGがヒトの脳の初期状態として存在するとする生成文法理論の根本的想定である。本発表では、Han et al. (2007)に準じ、ある言語共同体においてPLDと矛盾しない複数の文法がUGにより許容される仮説形成空間に存在する場合、その学習者は「同一言語」でも異なる文法を獲得するという提案を行う。本提案は、生成文法の理論・実践両面に対して波及効果をもたらす。本提案によれば、同一言語共同体にも競合する文法を獲得する話者がおり、当該文法を完全には獲得できてはいないことになる。ここからさらに、共時的言語変化を、Krochらの「多重文法仮説」に基づく通時的変化と同列に扱うことを可能となり、今後この分野の研究を再活性化させる指針となる。さらに、本提案は、これまでの生成文法統語論の常套手段ともとれる「私はこれこれこういう判断をする話者の知識をモデル化する」という類の排他性を再考させる治療的価値を持つ。


【本研究はJSPS科研費 JP19K00560及び津田塾大学2024年度特別研究費「内因的計算可変性ガイドライン (Endogenous Computational Variability Guideline)の理論的・実験的検証」(研究責任者: 佐藤陽介)の助成を受けたものです。】