英文学研究室では,2000年3月に「東北大学英語文化比較研究会 (Society of Comparative Studies in English Language and Culture)」を設立し,その研究活動の一環として,機関誌『川内レヴュー』を創刊しました.
英文学という学問に一石を投ずるべく,従来の研究手法にこだわらない幅広い視野で,新しい英文学研究を開拓していこうというものです. 創刊号に寄せられた論文は,未知の分野へのさまざまな挑戦に満ちており,我々英文学研究室のこれからの道標となってくれるものでしょう. とはいえ,会も発足したばかりで,これから勉強すべき点は多々あるかと思います. 試行錯誤を重ねてより質の高い研究を生み出していきたいと考えています. 皆様からのお叱りや激励をお待ちしております.
研究会の会員はまだまだ少なく,研究室の大学院生とそのOB有志,あわせて20名ほどで運営しておりますが,専攻や大学の垣根を越えた研究会にしていきたいと考えています. OBを含め,外部の方々からの寄稿を積極的に受け付けていくつもりです.『川内レヴュー』の方針にご賛同いただける方がおられましたら,ぜひ原稿をお寄せくださるようお願い申し上げます.
『川内レヴュー』は、ただ今のところ休刊中です.
『川内レヴュー』投稿規定
- 投稿に際しては,原稿ファイルをワープロソフト形式とテキスト形式のそれぞれで保存したファイルを電子メールの添付ファイルとして提出すること.電子メールによらない場合は,フロッピー,CD-R,メモリースティック等の記憶媒体に保存して提出すること.なお,これらの記憶媒体は原則として返却しない.
- 論文は和文・英文のいずれでもよい.和文の場合は14,000字以内,英文の場合は7,000語以内(注を含む)とする.
- 論文の書式の細部については,原則としてMLA Handbook(邦訳『MLA英語論文の手引き』第4版、北星堂)に従うこと.
第8号目次
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- Vivien and Female Rebellion in Tennyson's Idylls of the King
- Lu Dai
- 1
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- 『大いなる遺産を読む』―真の人間的価値を求めて―
- 斉藤 えい
- 23
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- 『グレート・ギャッツビー』とリベラルな想像力 ―リベラルな国民文学の創設をめぐって―
- 早坂 静
- 37
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- 「テレパシー」描写に見られるStephen Kingの創作態度 ―The Tommyknockersを中心に―
- 佐藤 徹秀
- 49
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- 「TOEICリスニング」の指導法―テクニックの是非をめぐって―
- 鈴木 淳
- 64
第7号目次
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- The Role of Women in Tennyson’s Idylls of the King
- Lu Dai
- 1
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- 『ドンビー親子』―ドンビーの虐待の実態と原因―
- 斉藤 えい
- 26
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- What Lies at the Heart of “Count Gismond” ?
- Kurt Scheibner
- 41
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- 英語教師の「教科書マニュアル依存」による学生への弊害― 中学・高校の英語授業や定期テストにおける 「教師の視点」の育成の重要性について―
- 鈴木 淳
- 71
第6号目次
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- Tennyson and the Concept of the Gentleman
- Lu Dai
- 1
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- Paul's Growth in Sons and Lovers
- Yan Guo
- 26
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- Teachers' Perceptions and the Pratice of Team Teaching in Japanese Upper Secondary Schools
- Akiko Nambu
- 41
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- 大学英語教育における「グループ学習」と「個人間の競争力の育成」の相互作用について ―短大保育科の英語スクーリングの授業を通して―
- 鈴木 淳
- 129
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- 抄訳 チャールズ・ディケンズ『ボズのスケッチ集』(3)
- 原 英一(訳)
- 138
第5号目次
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- Nature in Her Prime: Thoreau's View of Summer
- Michiko Ono
- 1
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- 『二都物語』に見られるキリストの教え ―物語構造からの考察―
- 斉藤 えい
- 16
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- Poetics of Silence: Hardy's Anxiety and his Revision of his Precursors, Tennyson and James Thomson (B. V.)
- Jun Suzuki
- 26
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- 「不在」を探し求めて―手紙として見た『ジュード』―
- 藤田 真知子
- 38
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- Golding as a Psychological Novelist
- Yasunori Sugimura
- 49
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- 「現代のプロメテウス」の行方 ―SupertoysとA. I. の比較を中心に―
- 森 朋子
- 64
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- 抄訳 チャールズ・ディケンズ『ボズのスケッチ集』(2)
- 原 英一(訳)
- 76
第4号目次
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- Making “the Glories”: Queen Anna’s ‘Political Self’
- Sumiko Ozaka
- 1
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- 2004: Traverses de Shakespeare
- Denis Devienne
- 17
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- Creativity in William Blake: Definite Vision-Inducing Agents
- Catalin Ghita
- 27
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- Inward Impulse and Outward Fact: Maggie's Fate in The Mill on the Floss
- Yan Guo
- 42
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- The Survival of an Injured Daughter: Esther Summerson's Narration in Bleak House
- Harumi Matsuura
- 60
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- Some Aspects of Early Spring Thoreau Appreciated
- Michiko Ono
- 80
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- The Tragedy of the Author: A Perspective on the End of Hardy's Fiction-Writing
- Jun Suzuki
- 91
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- 誰が<殉教>を殺したか―『寺院の殺人』に組み込まれた 中世劇、ギリシア悲劇と探偵小説の重層関係―
- 岩田 美喜
- 105
第3号目次
翻訳
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- Nineteen Poems
- (translations) Peter Robinson
- 1
論文
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- 『ハイド・パーク』におけるセクシュアリティ表象の 双方向性について
- 福士 航
- 21
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- The Absurd in Hardy's "The Doctor's Legend"
- Jun Suzuki
- 41
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- 世紀末の「夜の子供たち」―『ドラキュラ』における アブジェクシオンの作用―
- 岩田美喜
- 59
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- The Crying of Lot 49における都市
- 早坂 静
- 79
第2号目次
創作詩
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- Sixteen Poems
- Peter Robinson
論文
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- The Rover における主体形成の揺らぎについて
- 福士 航
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- オースティンとスコット―『マンスフィールド・パーク』をめぐって―
- 佐藤 恵
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- 『レイミア』におけるキーツの政治的姿勢
- 齋藤 智香子
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- テスのアイデンティティーをめぐって―『ダーバヴィル家のテス』の家系図的構造―
- 鈴木 淳
創刊号目次
論文
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- 『川内レヴュー』の創刊にあたって
- 原 英一
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- Marsの旗の下に──DrydenによるThe Knight's Taleの倫理的継承
- 菊池 秋夫
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- 『イザベラ』における失われたロレンゾの頭部をめぐって
- 斎藤 智香子
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- 漱石とオースティン──『明暗』における小説創造の模索
- 佐藤 恵
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- 悲劇の劇場──『鷹の井戸にて』におけるW. B. イェイツと伊藤道郎
- 岩田 美喜
『川内レヴュー』創刊にあたって
本誌は,東北大学英語文化比較研究会の機関誌として創刊された. この研究会は広く文化・文学の形成に関わる諸問題を,学際的かつ多角的視野で研究することを目的として設立された組織である. 当面,英文学研究室の大学院生を中心として出発するが,将来的には英語を中心とする文化,文学,コミュニケーション,さらに言語教育の問題に関心のある多くの方々に,従来の学問分野の枠を越えて参加していただきたく思っている.
学問の世界において二〇世紀後半の変化には非常に激しいものがあり,英文学の研究にあっても,大きな変革が進められてきた. 特に,文学テクストについての認識の変化は著しいものがあり,文学もまたより大きな文化あるいは歴史というテクストの一部であると考えられるようになった. その結果,文学研究も広域的な文化研究の一部として再構築されつつある. 先進的な研究は過去においてもすでにそうであったが,今後は,哲学,歴史学,心理学,社会学,コミュニケーション論,記号論,言語学等の知見や方法がますます積極的に取り入れられて,新たな学問が生まれていくことであろう. 我々の目指すところは,旧来の枠にとらわれることなく,きわめて自由な立場で広汎な文化研究の発展に寄与することである. 学問の変化とともに組織の改編も進展し,東北大学においても,いわゆる「英文科」というものはもはや公的には存在しない. 狭い枠組みが消滅し,そこにとらわれる必要がなくなったということは,一方では大海に乗り出した一艘の小舟の如き不安を伴う. 我々はあくまでも英語そして日本語という言語媒体を土台とし,厳密なテクスト読解の力と技を磨くことによって,堅固な土台を築きあげ,そこから新たな比較文化研究に挑戦していこうと考えている. 真の間異文化的研究(inter-cultural studies)は,それによってのみ可能となるものと信じる.
諸兄姉の叱咤激励をお願いしたい。
2000年3月 原 英一
東北大学英語文化比較研究会の所在
本研究会では英語・英米文学の研究者を会員としてお迎えしています.関心のある方は下記までご連絡ください.
- Address
- 〒980-8576 仙台市青葉区川内27番1号 東北大学大学院文学研究科英文学研究室内
- Tel & Fax
- 022-795-5961
- englit*g-mail.tohoku-university.jp (*は@に変換してください)