TOHOKU UNIVERSITY, 東北大学大学院文学研究科・文学部 西洋史研究室

研究室だより

研究室だより(2020年4月)

KEEP CALM AND STUDY ON

 浅岡善治准教授とも相談の上、このことばを当面、私たち西洋史研究室のモットーとしたいと思います。「落ち着いて研究を続けましょう」というメッセージです。
 これは“KEEP CALM AND CARRY ON”(落ち着いて行動しましょう、がんばりましょう)を下敷きにしています。
 “KEEP CALM AND CARRY ON”は1939年、第二次世界大戦開戦時に、英国情報省が国民向けに作成したポスターのひとつに用いられました。その後、今世紀になって再発見され、現在の英国社会に定着しています。病院・オフィスや一般家庭にも飾られ、また先だっての金融危機の際にも人気を呼んだそうです。困難な状況の下でも日々を丁寧に過ごす決意を、大戦当時の人々から継承していることを願う、英国人の気持ちの現れと、ジャーナリストのコリン・ジョイス氏は説明しています(以上コリン・ジョイス(森田浩之訳)『驚きの英国史』、NHK出版、2012年による)。
 ジョイス氏は「イギリス人らしさ」と上述のことばとをむすびつけて論じていますが、私はこの表現は、英国を超えた汎用性のあるものと思います。これをもとに私たちは、大学の研究室として研究にむかう姿勢を強調し、“KEEP CALM AND STUDY ON”と唱えたく考えます。
 昨年まで英国を揺り動かし続けてきたEU離脱問題は、英国および大陸ヨーロッパの政治・経済・社会などに関する、気づきにくい場合もある多くの問題を、拡大鏡のように示してくれるものでもありました。英国に限ってもそれらは、議会主権という原則の機能の仕方、物流のあり方、国家意識、国内のネーション・階層・世代間の相違など、枚挙に暇がありません。そしてその考察にあたっては、それらがいかなる経緯を経て生まれ、今に至っているのか、つまり歴史に目を向けることも不可欠です。
 目下猛威を振るう感染症COVID-19も同様に、多くの考察を私たちに迫っています。
 人々は感染症およびさまざまな災禍とどのような経緯で、いかに向き合い、また危機を克服してきたか、グローバル化と主権国家の関係はどのように展開してどこに向かうのか、など、今回の事態が私たちに投げかけるさまざまな問いかけを、研究室構成員には大切にしてもらいながら、個々人の研究の深化に努めてもらいたいと思います。
もちろん感染しないよう、また感染を拡大しないよう努めることが、すべての基本になります。細心の注意を払って行動してほしいと思います。

 本年度はこれまで以上に、ホームページによる情報発信に努めていきたいと考えています。ひきつづき私たちの活動を暖かく見守っていただけると幸いです。

(今年度研究室主任 有光秀行)