組織的な大学院教育推進プログラム 東北大学大学院文学研究科

歴史資源アーカイブ国際高度学芸員養成計画



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 プログラムの概要

我が国の「成熟社会化」への進行のなかで、人文知の確かな継承と創造のための機構整備は社会的な要請であり、歴史学も改革を必要としている。変転めまぐるしい現代にあって、過去の文化の叡智と、人々の生きざまに学ぶ総合的な歴史学への社会的要請は大きく、生涯学習ニーズの広範な拡大がみられる。博物館、美術館、文書館等において、収蔵品研究、保管活用、企画展示などには、常により高い水準が求められるようになった。本申請プログラムでは、これらの要請にこたえる高度な資質の学芸員を、国際性豊かなカリキュラムのなかで体系的に育成することをねらいとする。専門分野に深い学識を有し、かつ幅広い対象資料に通じていて、世界各国の学芸員と対等な活動ができる界水準の優秀な人材の着実な養成は、喫緊の社会的急務である。それは本研究科の人材養成目的にも合致する。
 
従来、学芸員教育は、細分化した専門分野において行われてきた。優れた学芸員はこれまでも多く育ってきたが、いわば個々の教員や研究室が有する個別の技量に依存してきたという点は否めない。学芸員の国家資格も、5科目12単位を要件とする学部卒業の資格であり、現今の社会的要請とはギャップが大きい。現実には大学院教育が必須であった。本計画は、いわば個人わざ頼みの現状を改革し、組織的な養成課程として体系化することをめざす。日本のリーダー的学芸員の養成に重点をおくことで、また歴史学全体における大学院教育の改革への牽引車としての役割を果たすことも目標としている。
 本歴史科学専攻では、文字史料に加えて考古資料、美術資料など多様な形を取る原資料を「歴史資として捉え、個別分野横断的な研究方法、新たな資料学・史料学の構築、その社会的公開をめざして、平成14年度から共同の教育研究活動を重ねてきた。今回の申請では、古文書、遺物・遺跡、絵画・彫刻など様々な形態の資料を、統合的に蓄積する「歴史資源アーカイブ」を媒介にして、院生たちを原資料に、現場で、実地に取り組ませる教育プログラムを発展させる。すなわち、各分野で個別に行われてきた学芸員教育を、実物・原典資料を通じてリンクさせ、専門性と広域性を同時に醸成していく。
 二つの学芸員養成コースを新たに設置する。考古学、東洋・日本美術史、美学・西洋美術史からの、モノ資料を主な対象とする教育分野を「キュレイター養成コース」日本史、東洋史、ヨーロッパ史からの、文献史料、木簡、金石文などを対象とする教育分野を「アーキビスト養成コース」として、カリキュラムを体系化する。それぞれの分野での資料の特性を踏まえた高水準の実物教育を行う。前者は美術館、文化財研究所、博物館、埋蔵文化財センターなどで、後者は博物館、史料館、公文書館、図書館などで国際レベルの活躍ができる人材を養成する。
 博士前期課程においては、まず各自の専門分野の原資料に堅実に取り組ませ、歴史資源のもつ本質について良く理解させる。基幹科目として特論、展開科目として研究演習、研究実習等で、正統的な原典主義を徹底して学ばせる。授業では実物教育・実地教育の機会を豊富に提供し、各自の志望進路を加味した学際的な選択を用意し、修士論文へ展開させる。隣接分野の科目履修により、原資料の実態に存在する歴史資源の多様性の認識を深める。デジタルアーカイブは多様な歴史資源研究の鳥瞰図、いわば「羅針盤」の役割も果たすわけである。

 学芸員としての国際的素養を醸成するため、博士前期・後期課程を通して、教員主導の海外実地教育を実施し、交流実績のある機関と院生レベルの相互派遣(国際インターンシップ等)を行う。
 博士後期課程では、学術雑誌への論文掲載指導を通して、原資料から論文に至るプロセスについて正確に把握させる。学内公募により、院生自身に歴史資源研究のプロジェクトを企画・立案させ、教員の指導の下で実施させることで、健全な競争的環境を作り、研究の計画と実施に関する様々なマネジメント能力を養う。院生の研究成果のフォーラムを実施し、隣接分野の実際をも学ぶ機会とする。また歴史資源を扱う調査・研究に共通する倫理的側面については、系統的に指導する。これらプロジェクトにおいても、海外所在の歴史資源研究、比較研究、他国の歴史学との交流を、実物・実地の原則をもって経験する機会をもたせる。
 TA.RA.PD.にはそれぞれの立場での教育経験を積ませて、歴史資源研究法の「技(わざ)の継承サイクル」をカリキュラム化する。またアーカイブの維持管理システムを、各分野の歴史資源の特徴に従って確立し、その運営プロセスを通じての教育を行う。東北大学に収蔵されている豊富な資料、また調査資料、画像記録などは、歴史資源アーカイブの一部としてデータベース化し、社会的共有を進める。高度な分析訓練のための設備、デジタルデータの蓄積と活用に必要な機器を充実させる。東北大学総合学術博物館、東北大学史料館、平成8年から連携大学院文化財科学を実施している多賀城跡調査研究所・東北歴史博物館とは、さらに実質的協力を深めて、現場に学び、地域と連携する機会を拡大する。