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美学・西洋美術史 芳賀京子准教授(Haga Kyoko)

東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。院生時代の1994年、イタリア中部タルクイニア遺跡発掘調査に参加。 土まみれの大理石の少年像を掘り出して感動。その後、イタリア、ギリシア、ドイツに留学し、ヨーロッパの遺跡を訪ね歩いて、 古代ギリシア、ローマ美術史研究の道を追求。日本学術振興会特別研究員、国立西洋美術館リサーチフェローを経て、 2006年、東北大学文学研究科准教授(当時助教授)へ。特別研究員時代の論文に、「共和政期のローマにおけるギリシア人彫刻家と ローマ人注文主ーオクタウィアの柱廊周辺の3つの神殿の場合ー」(2003年)、「コピー作品における彫刻家の独創と注文主の 創意ーアルカメネスのヘルマ柱の場合ー」(2004年)などがある。東北大学赴任前後には、『ロドス島の古代彫刻』の刊行 (2006年2月、中央公論美術出版)、サルヴァトーレ・セッティス著『ラオコーン:名声と様式』の共訳(2006年8月、三元社)が続いた。

2007年6月、東北大学文学研究科美学・西洋美術史研究室、芳賀京子准教授の『ロドス島の古代彫刻』に、2007年度地中海学会ヘレンド賞が贈られました。

 地中海学会(現会長:樺山紘一印刷博物館館長)は、1977年「地中海・環地中海域を総合的に研究する場、 および種々の関連分野間の交流の場」として設立された学際的な学会であり、「ヘレンド賞」は会員である若手研究者に対する奨励賞の性格をもつものです。

 授賞について、次のように説明されています。(『地中海学会月報 300』2007年5月号)。


芳賀氏は『ロドス島の古代彫刻』(中央公論美術出版、2006年)においてロドス島の彫刻に関する資料 (碑文、古文献、出土彫刻)を網羅的に検討して、紀元前4世紀から紀元後1世紀までの同島の彫刻制作、彫刻家の活動の全容を明らかにした 。同書は考古美術史学の記述を目的として、考古学・碑文学・文献学など科学的実証性を発揮しうる方法を最大限援用したものであり、 実証的人文科学の規範的著作ともいいうる。ロドス島の古代彫刻に関するこのような質の高い包括的な研究には類書がなく、 世界のヘレニズム彫刻研究に対して大きな貢献をなすと考えられる。

 また、地中海学会が発行する学術誌『地中海学会研究XXX』(2007年)には、 東北芸術工科大学・篠塚千恵子教授(美術史・文化財保存修復学科)による書評が見られます。少し長めに引用してみましょう。

評者は本書を一読して、20世紀後半にギリシア美術史のなかでもとりわけめざましい進展を続けてきた ヘレニズム美術研究の成果を目の当たりにする思いであった。その研究のめざましい進展ぶりをまさに実感した。 そして、その実感をこれほど深く味わわせてくれる大著が我が国に現れたことに驚きの念を禁じ得なかった。 かつてヘレニズム美術はおよそ300年間も続くにもかかわらずギリシア美術史の概説書では紀元前5、4世紀のクラシック美術に対してデカダンス、 ないし単なる過渡期のような現象とみなされ、簡単に触れられるだけで済まされることが多かった。こうした不当な扱いの背後にある根は、 プリニウスが「彫刻はその後(第121オリンピュア紀[前296〜293年]の後)衰退し、第156オリンピュア紀(前156〜153)に再び息を吹き返した」 (『博物誌』34・52)と述べ、この間の彫刻について記録を残さなかったことへ行き着くにちがいない。ルネサンス以降西洋美術の 古典主義の潮流はいわばこのプリニウスの言葉に呪縛され形づくられていったのだといえなくもない (後略ーその後の研究について触れ、M.Bieber`R.R.R.Smith`B.S.Ridgway`B.Andrea等によってヘレニズム研究が深まっていることについても説明されています)

 こうした近年のヘレニズム美術研究動向の中で本書はまさに最後に挙げた地域流派の見直しを提起した研究書といえる。(後略)

 ロドスを通過した数知れぬ古代の彫刻家たちの足跡を斬新且つ多彩な手法を駆使して生き生きと再現することに見事に成功したこの大著は 今後のヘレニズム美術研究にとっての重要な問題作となろう。

※詳細は東北大学大学院文学研究科・文学部ブックレット「考えるということ」Vol.2の『文学部の研究紹介』をご参照ください