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文学研究科・文学部 Webアーカイブ
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インド学仏教史 後藤敏文教授(Goto Toshifumi)

1948年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業、京都大学大学院修士課程修了(インド哲学史)、博士課程単位取得退学(梵語学梵文学)。 1977年、エルランゲン大学に留学し、カール・ホフマン教授(1915ー1996)に師事、印欧語比較言語学を主専攻にDr.phil.を取得。 フライブルグ大学講師、ウィーン大学客員教授、大阪大学教授などを経て、1996から東北大学教授。日本印度学仏教学会理事、 国際印欧語学会(Indogermanische Gesellschaft)顧問、印度学宗教学会会長。Historische Sprachforschung(Historical Linguistics)編集顧問、 Munchener Sprachwissenschaftlicher Studienkreis 同人。[研究課題]インド・ヨーロッパ語比較言語学を背景にした古インドアーリヤ語動詞研究、 その他、ヴェーダ、アヴェスタの文献学的研究、「輪廻と業」理論の成立史研究など

2007年秋、『リグ・ヴェーダ』全訳プロジェクト第1分冊完成

 2007年10月、フランクフルト国際書籍見本市において、ドイツの有力出版グループによって進められている『リグ・ヴェーダ』ドイツ語全訳プロジェクト (Rig-Veda.Dasheilige Wissen)の第1分冊(Erster undzweiter Liederkreis:リグ・ヴェーダ第1巻、第2巻)出版記者会見が行われ、 共同編集・翻訳に当たったハーヴァード大学M.Witzel教授とともに後藤敏文教授がスピーチをしました。

 「ヴェーダ」は、俗にサンスクリット語とよばれる古インドアーリヤ語で書かれたインド最古の宗教文献(バラモン教経典)群の総称。 インドの宗教・哲学・文学の根源をなすものです。その最古のものが『リグ・ヴェーダ』で、紀元前十数世紀頃にインドの西北地方に進出した アーリヤの諸部族が護持していた讃歌の集成です。神々への讃歌という形をとって、当時の「世界理解」の学が総動員されています。引き続き、 ヤジュル、サーマ、アタルヴァの各ヴェーダが編集され、「四ヴェーダ」とよばれます。

 古代インドの言語「古インドアーリヤ語」はヨーロッパ諸言語の多くと同じ起源から発し、インド・イラン共通時代を経て成立しました。 古風精緻な形態は比較言語学の基盤を成し、言語研究に第一級の資料と方法を提供するものです。

 東北大学文学部には1923年に宇井伯壽博士が「印度学講座」を設けて以来(ブックレット創刊号17ー21ページ参照)、 金倉圓照・山田龍城・多田等観・羽田野伯猷博士らによる『西蔵大蔵総目録』や『西蔵撰述仏典目録』の出版、河口慧海収集になる 「河口コレクション」の受け入れなどのエポックも含めて、文献学を基礎とするインド学(独Indologie` 英Indology)の膨大な蓄積があります。 後藤教授は、この意味で東北大学インド学の伝統に連なり、新たな分野を担って、世界のインド学界の中に特筆される研究者です。


 この『リグ・ヴェーダ』ドイツ語全訳プロジェクトは、ズーアカンプSuhrkamp`  インゼルInselの出版社グループが企画した「世界諸宗教出版 (Verlag der Weltreligionen)」[注]の第1冊目に位置づけられているものです。4分冊からなるドイツ語への翻訳であり、 インド・ヨーロッパ語族の文化を理解する上での基礎資料の出版としても大きな反響を呼んでいます。

 後藤教授は、『リグ・ヴェーダ』第1分冊のほぼ半分(191讃歌中、99讃歌)と語彙集を担当したほか、現在は第2分冊目の翻訳に取り組んでいます。 なお、この翻訳にはもう一人の日本人、大阪大学・堂山英次郎講師が参加(51讃歌を担当)していますが、堂山講師は東北大学文学研究科出身であり、 後藤研究室から巣立った研究者です。

[注]世界諸宗教出版からは、2007年には、そのほか「Bhagavad Gita.Der Gesang des Erhabenen」(バガヴァド・ギーター)、 「Vom rechten Leben.Buddhistishe Lehren aus Indien und Tibet」(インド・チベット仏典)、 「Die Mishna.Festzeiten.Seder Mo'ed」(ミシュナー)、「al-Nawawi」などが出版されている。

※詳細は東北大学大学院文学研究科・文学部ブックレット「考えるということ」Vol.4の『文学部の研究紹介』をご参照ください