国語学研究室

読書会

●国語史読書会

 国語史とは、日本語の歴史的変遷や、古い時代の日本語について研究する分野です。例えば、「おかし」「あわれ」といった言葉の意味・用法はどのように移り変わってきたか、助詞の「を」「は」「へ」は「お」「わ」「え」と読むのになぜそのように書かないのか、「けり」と「き」はどちらも「過去」を表すが、どのような使い分けがあるのか、「源氏物語」の言葉と「平家物語」の言葉はどのように違うか、といったことが問題となります。扱う時代は、この読書会では、奈良、平安時代から、江戸時代前期ころまでとしています。

 読書会の具体的な活動内容を説明します。国語史読書会は、国語史に関する論文を皆で読んで討論・意見交換をする「論文紹介」と、参加者がそれぞれ興味を持った言葉の歴史に関して具体的に調査し、結果を発表する「古典講読」、の二つを柱に行っています。

 前者の論文紹介は、事前に指定した論文を参加者がそれぞれ読んできて、疑問に思ったこと、意見、感想などをざっくばらんに話し合うという形で進められます。後者の講読は、毎年テキストと各自の担当範囲を定めて、その中から、興味をもった言葉、問題になる言葉について、各参加者が、その歴史を国語学的に研究・調査してきて、その発表に対して、他の参加者から様々に意見を出し合う、という形で進めています。最近数年間の講読テキストは次のようになっています。

平成11年度 宇治拾遺物語
平成12年度 大蔵流虎明本狂言台本
平成13年度 宇治拾遺物語
平成14年度 大和物語
平成15年度 方丈記
平成16年度 平家物語

 国語史読書会は、他の読書会に比べて、事前の調査等に時間がかかり大変ですが、そのために足繁く研究室に通うことにより、国語学・国語史の研究に必要な資料・辞書等の使い方にも習熟し、先輩から研究の技術・考え方等を学ぶことができます。

 また、この他に、その年に国語史で卒業論文を執筆する四年生による構想発表・中間発表も行っていますので、学部生にとっては、自分の卒業論文の題材を探す上でのヒントにすることもできます。古典の言葉に興味のある方、言葉の歴史を自分の力で調べてみたいという方は、是非、国語史読書会の様子を見に来てください。


●現代語読書会

 皆さん考えてみてください。おなかが痛くてお医者さんに診てもらった時、「痛いのはここですか?」と聞かれたら、私たちは「そこ」と答えることでしょう。自分の体の一部にも関わらず、「ここ」ではなく「そこ」と答えるのはなぜでしょうか。

 自分が財布を落としてしまったとしましょう。あっちこっち探し回って、結局テレビの上にあることに気づいた時に、今財布が目の前にあるのに、なぜ「ある」ではなく、過去形の「あった」で表現するのでしょうか。

 このように、私たちは日常生活の中で、頭の中にある“文法”を意識せずに話していますが、いざ改めてそれを考えることになると、ことばの不思議さ、面白さに気づかされます。今や「日本語の揺れ・乱れ」は現代の社会現象の一面とも捉えられ、そのひとつに“ら抜き言葉”があります。これは、“文法”と照らし合わせるならば、実際に使われている言葉と正しいと思われる表現の背後に潜んでいる規範との間に、ずれが生じたからこそ浮かび上がった問題だと考えられます。

 現代語読書会は、以上のようなことを含めて、日本語の文法について皆で問題点を検討することを旨とする勉強会です。例年1冊の概論書をテキストとして、週1時間のペースで行っています。今までに使用したテキストは下記の通りです。

(1) 『日本語要説』(工藤浩ほか,1993年,ひつじ書房)
(2) 『岩波講座 言語の科学5 文法』(益岡隆志ほか,1997年,岩波書店)
(3) 『日本語文法』(岩淵匡,2000年,白帝社)
(4) 『ここからはじまる日本語文法』(森山卓郎,2000年,ひつじ書房)
(5) 『新しい日本語学入門ことばのしくみを考える』(庵功雄,2001年,スリーエーネットワーク)
(6) 『国語教師が知っておきたい日本語文法』(山田敏弘,2004年,くろしお出版)

 このような日本語学の概論書を読むことを通して、日本語の文法の入門的なものから始めます。そして、文法に関する基礎的な知識をおさえた上で、テキストの内容に沿って、代表的な、または分かりやすく面白い文献や、最近の研究の動向を紹介するような形で進めています。現在、学部生から大学院生まで多くのメンバーが参加しており、お互いによい刺激を与えながら日本語のことを楽しく考えています。普段使う「ことば」のことをもっと知りたいという方は、ぜひ現代語読書会に参加してみてはいかがでしょうか。

●方言読書会

 方言読書会は、「方言に興味を持っているんだけど、どのように研究すればいいの?」という悩みのある方にその研究方法を提示する勉強会です。研究方法といっても様々な分野、(たとえば、音韻、アクセント、文法、語彙、談話など)がありますが、方言読書会では、そのような各分野の専門家の大学院生が学部生にテキストや論文の解説、あるいは、実際の大学院生の研究を紹介することで、方言研究への道を拓いてくれます。いわゆる、大学院生と学部生の交流の場でもあります。

 方言読書会は、学部生向けなので、説明は分かりやすく、実際に、ある地域で使用されている方言を例として取り上げ、共通語と比較しながら説明を行っているので、「方言について全然分からないんだけど大丈夫かな」と思っている方でも気軽に参加できます。また、「今まで私が使っていた言葉は方言だったんだ」など、自分の言葉について考える時間を得るいい機会でもあります。例えば、青森県津軽では、「何ともいえず気持ちのよい」ことを「アズマシイ」、西日本各地では、「(ふとんなどを)しまう」ことを「ナオス」と表現するそうです。たまに、お互いに自分の地域の方言について話しあっているうちに、時間がすぎてしまい、もとの話に戻れなくなる場合もありますが、それはそれで、いい研究の題材になるのではないでしょか。

 みなさん、方言読書会に参加して、お互いの地域の言葉について語り合いませんか。また、日本の方言の将来について一緒に考えてみませんか。
 参考までに、今まで読書会で使用したテキストは以下のとおりです。

『社会言語学』(真田信治・渋谷勝己・陣内正敬・杉戸清樹著、1992年、おうふう)
『日本語ウォッチング』(井上史雄著、1998年、岩波書店)
『展望 現代の方言』(真田信治編、1999年、白帝社)
『方言探究法』(森下喜一・大野眞男著、2001年、朝倉書店)
『朝倉日本語講座10 方言』(江端義夫編、2002年、朝倉書店)
『ガイドブック 方言研究』(小林隆・篠崎晃一編、2003年、ひつじ書房)


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