なめらかな変化が大切

                                             行場  次朗

 

 過去、二回ほど「人」のパターンを素材にしたデモを載せて来ましたが、今年も、「人」を使ったデモをお届けします。原案は、インド人の天才認知心理学、神経科学者の V.S. ラマチャンドラン(カリフォルニア大学サンディエゴ校教授)です。ラマ博士の最近の著書は「脳の中の幽霊」ですが、ファントム錯視をやってきた私は、以前から彼の研究に注目してきました。というより、ラマ博士のデモは、世界中の研究者をずっと魅了しつづけてきました。その一つに陰影による奥行き知覚があります。今回載せた図は、私がアレンジしなおしたものですが、下の図をみると、凸面をもつ半球によって「人」の文字が飛び出て見えると思います。しかし、左側の図では、奥行きが感じられず、ごちゃごちゃした印象が生じると思います。陰影にはグラデーションがあるべきで、デジタル的な黒白変化をもつ陰影では奥行き知覚は発生しないのです。図を逆さまにしたり、九十度回転するなど、いろいろお試しください。

 そこで、いつもの説教がましい解説を。人の心の要素もなめらかな変化をもっていれば、全体としてまとまり、調和しやすいと思いますが、デジタル的な変化のみでは、ギスギスして、周囲と軋轢を生じそうです。私も学生さんとの付き合いの中で、二項的な判断をしがちな側面があるので、気をつけなくてはと思っております。

 

 今後とも,視覚認知心理学の魅力を探って行きたいと思っておりますので,どうかご支援よろしくお願いいたします.

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