2003年度日本思想史研究会月例会報告要旨(予告)

 

開催日 報告者     題 目
5月10日 藤原義天恩 「本居宣長の神観念」
塩野 雅代 「柳田国男の歴史観 その生成」
6月21日 岩松 宏典 「平田篤胤の他界観──『仙境異聞』と『霊能真柱』を中心に」
7月19日 中嶋 英介 「赤穂浪士による討入り正当化の過程」
9月27日 先崎 彰容 「福沢諭吉における経済と倫理」
11月8日 藤原義天恩 「本居宣長研究−宣長における神人関係」
12月13日 大川 真 「資治通鑑・資治通鑑綱目の間」−新井白石の政権正当化原理
1月24日 合評会  黒住真著『近世日本社会と儒教』(ぺりかん社、2003年)
2月14〜15日 合評会 2003年度修士論文・卒業論文合評会


5月月例会報告
・藤原 義天恩「本居宣長の神観念」

・塩野 雅代「柳田国男の歴史観 その生成」
柳田國男の学問形成を歴史観の生成と捉え、その時期を三区分する。各々の時期における代表的著作を取りあげ、それらを解読することにより、各々の時代における柳田の歴史観を把握する。対象とする著作は、柳田の歴史観の形成を大正末〜昭和初めと捉え、形成以前の思想検討として、(著作ではないが)「山人」論を、形成直前の著として「海南小記」を、形成期の代表的著述として『青年と学門』を取り上げ、彼の歴史観生成の航跡を追う。 

 日 時 :5月10日(土)午後1時より 
 場 所 :文学部 610演習室(6F)



6月月例会報告
 ・岩松 宏典「平田篤胤の他界観──『仙境異聞』と『霊能真柱』を中心に」
霊能真柱』と『仙境異聞』は篤胤他界観の変遷を探るうえで共に重要な著作と考えられるが、先行研究においては前期の『霊能真柱』研究のみが先行し、後期の『仙境異聞』については軽視される傾向にある。これは恐らく『仙境異聞』が聞き私は『仙境異聞』をあえて中心に据え、その独自の他界観を『霊能真柱』的幽冥観と比較し、両書間の差異が有する意味を探ることで篤胤他界観の根底にある思想を論じたいと考えている。 

 日 時 :6月21日(土)午後2時より 
  場 所 :文学部 610演習室(6F)


7月月例会報告
 ・中嶋 英介「赤穂浪士による討入り正当化の過程」
元禄期、赤穂藩の浪士が吉良邸に討ち入ったいわゆる赤穂事件は、発端である刃傷事件から様々な思惑が生じていた。なかでも御家再興を目指す大石と幕府とのせめぎあいなどは、近世武士思想を見る上で貴重な資料群といえよう。これまで赤穂事件の思想史的先行研究は赤穂事件全体に対する諸解釈から着目されていたが、事件内部から浪士の思想を見出すという試みは十分にされたとはいい難い。そのなかで注目したいのが浪士による討入り正当化である。今発表では大石良雄らを中心に、討入りに至る過程を検討したい。 

 日 時 :7月19日(土)午後2時より
  場 所 :文学部 610演習室(6F)
 



9月月例会報告
 ・先崎 彰容 「福沢諭吉における経済と倫理」

福沢諭吉は、啓蒙主義者という大枠を持ちつつも、研究者と時代状況に応じて様々な解釈史を形成してきた。戦後の丸山における「独立自尊」の発見は、人間が政治的主体であることに加えて、多様な領域で活動する存在であることの発見でもあった。また、八〇年代以降では、新自由主義の思想とのかかわりから、福沢を再解釈する動きもみられたのである(坂本多加雄1991)。
 以上のような解釈を許す福沢は、明治の当時から、「拝金宗」として批判されるとともに、儒教道徳を否定したことでも知られる。では、福沢において経済と倫理とは果たしてどのような関連をもったのか、あるいはもたないのか。テキストの読解を中心にして明確な結論を導きだしてゆこう。

 日 時:9月27日(土)午後2時より
 場 所:文学部  610演習室(6F)



11月月例会報告
・藤原義天恩 「本居宣長研究−宣長における神人関係」

宣長にとって神は何であったのか。先行研究においてこの問題は様々な角度から論じられてきたが、本発表ではこれを日常生活の視点から考証する。世を照らす天照大御神、「禍」を起こす禍津日神(まがつびのかみ)や、それを直す神直毘神(かむなほびのかみ)・大直毘神(おほなほびのかみ)、食物の神とされる豊宇気毘賣神(とようけびめのかみ)など、様々な神が人に触れ、その生活に係わる。宣長の文献や生活記録に現れる神々は人にとって、また宣長自身にとって如何なる意味を持つか―これを明らかにしたい。

 日 時:11月8日(土)午後2時より
 場 所:文学部  610演習室(6F)


12月月例会報告 
・大川 真 「資治通鑑・資治通鑑綱目の間」―新井白石の政権正当化原理
 

近世中期の思想家・政治家である新井白石に関して、従来の研究では、易姓革命・資治通鑑の「一統」論を駆使して、徳川政権の絶対君主化(徳川政権による王権の一元化)を図ったとされてきた。しかし、白石の自伝『折たく柴の記』には、「司馬氏資治通鑑・朱子通鑑綱目の間を以て、兼学ばせ給ふべき御事歟」と、歴史を考察する上で、資治通鑑だけではなく資治通鑑綱目を兼学する必要を述べた言辞がある。この言葉を手がかりとして、白石の政権正当化原理を再考する。

 日 時:12月13日(土)午後2時より
 場 所:文学部  610演習室(6F) 


1月例会合評会
・黒住真著『近世日本社会と儒教』(ぺりかん社、2003年)
 

黒住真氏は、日本近世思想史研究を代表する論者である。氏は、荻生徂徠研究によって高名であるが、個別思想家研究にとどまらず近世史を通史的に論述した業績もある。黒住氏の研究は、日本思想史学だけではなく隣接する諸学問からも注目されるが、そのような氏の一連の論攷が、『近世日本社会と儒教』(ぺりかん社、2003年)として発刊された。一月例会では、この書の合評会を行う。多くの方の参加を期する。

 日 時:1月24日(土)午前10時より
 場 所:文学部  610演習室(6F)


2004年2月 修士論文・卒業論文合評会

 

 日時 

2月14日(土)午前11時から修論発表会。(各1時間) 

        
      
       高橋 哲            徂徠学における一考察
       岩松 宏典       平田篤胤の他界観―『仙境異聞』における「山人」を軸として
       塩野 雅代        柳田国男の思想―歴史認識をめぐって
       藤原義天恩        本居宣長研究
      
2月15日(日)午後1時から卒論発表会。(各30分)
     
      
           阿部 豪            夏目漱石の思想―前期三部作を中心に
           佐藤明日香        野溝七生子の思想
           高須賀政洋        『今昔物語集』にみえる鬼の考察
           福浦俊一郎        森鴎外の思想
           藤沢浩太郎        北村透谷の思想
           横内 哲           世阿弥の思想

場所

東北大学大学院文学研究科 
文学教育学合同研究棟610演習室(6階)



 

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