2005年度日本思想史研究会月例会報告要旨(予告)




開催日 報告者     題 目
4月23日 高橋亜希子 「吉田松陰の対外認識」

平岡 留美 「慶政の遁世観」
5月7日 中野寛美 「十六世紀後半における武士の価値意識―剣術書をてがかりとして―」
6月4日 黒崎史朋子 「小堀遠州の茶の湯」
8月6日 夏季セミナー勉強会
11月12日 高橋俊和 「宣長学の二面性―実証的注釈と皇国主義―」
12月10日 桐原健真 「東方君子国の落日」
01月28日 植村和秀 「丸山眞男と平泉澄の歴史的位置―20世紀と日本思想史の交点 」
2月11日
修士論文・
卒業論文発表会
リンク参照



4月例会報告
◎高橋亜希子「吉田松陰の対外認識」

 尊王攘夷派の志士として知られる吉田松陰(天保元〈1830〉年〜安政六〈1859〉年)は、その激烈な言動により、これまで、自民族中心主義の代表のように言われてきた。しかしながら、彼の「外夷」への敵意は、日本への非礼・強圧的な態度に対して向けられたものであって、ただ外国であるというだけの理由によるものではない。むしろ松陰には、人間存在一般に対する親和的な態度がある。それでは、彼の攘夷思想は、一体どのように形成され、またどのような構造を有していたのであろうか。本報告は、吉田松陰の対外認識の形成とその構造を明らかにすることを目的とする。

◎平岡 留美「慶政の遁世観」

 慶政上人が九条道家の兄であり、『閑居友』の作者であるということは、従来の精密な研究により明らかとなった。しかしこれまでの彼の人物像や著作に対する論証に対して彼の思想、とりわけ遁世観については『摩訶止観』や天台本覚論の影響下にあるといった画一的な論考に止まっている。そこで本報告では慶政の遁世観についてまず『閑居友』における厭世観の欠落に着目し、その事実が前述した思想の影響とどう結びつくのかを考察することで慶政独自の遁世観を確立させたい。

 日 時 :4月23日(土)13時より
 場 所 :文学部 610演習室(6F)



5月例会報告
◎中野寛美「十六世紀後半における武士の価値意識―剣術書をてがかりとして―」

 中世末における武士の価値意識の研究は、従来家訓家法等を読み解くことを中心に行われてきた。しかし、これらの研究では、対象が家や武士団に限定され当時の武士全般における価値意識を明らかにしているとは言い難い。そこで本報告では、すべての武士が共通して体得する必要があった剣術から当時の武士の価値観に迫ってみる。中世末(一六世紀後半)に成立した剣術書が何で自書を価値付けしていたかを考察することにより、その剣術書を読む対象となる武士が当時、何をステータスとしていたかが明らかになると考えられ、そこから一六世紀後半の戦国期における武士の一つの共通価値認識を見出していきたい。

 日 時 :5月07日(土)14時より
 場 所 :文学部 610演習室(6F)



6月例会報告
◎黒崎史朋子「小堀遠州の茶の湯」

 小堀遠州(一五七九〜一六四七)は茶の湯の大成者千利休の孫弟子にあたる人物で、大名や将軍の指南役でもあった。遠州が好んで使用した広間や、彼が選んだ中興名物と呼ばれる道具群は、現在の茶の湯においても不可欠な要素となっており、その影響は大きい。しかし、遠州研究は二十年程も停滞しているといってよい状況にある。その原因の一つに史料の不足が挙げられよう。これまで断片的に引用されるのみであったテキストを、改めて検討・分析の対象とすることで、研究上の新たな展開を期待できないかと考えている。

 日 時 :6月04日(土)14時より
 場 所 :文学部 610演習室(6F)



8月例会報告
◎夏期セミナー勉強会

 夏季セミナーが近づいてまいりました。今年度はテーマを「偉人観」とし、3人の方に発表していただきます。そこで、より一層充実したセミナーにするために、8月の月例会として事前勉強会を開催いたします。
 なお勉強会では、セミナーで発表していただく3人の方からご提示いただいた下記の参考文献(◎のもの)を担当者に発表していただき、質疑・議論を通じて内容理解を深めるという形式で行います。

●荻生茂博氏担当分(担当:石澤理如)
◎源了圓「幕末・維新期における『豪傑』的人間像の形成」(『東北大学日本文化研究所研究報告』19 1983)ほか、荻生茂博「安積艮斎の思想」(『国家と宗教』思文閣 1992)

●見城悌治氏発表分(担当:中嶋英介)
◎見城悌治「1930年代日本における『模範的人物』―大原幽学・二宮尊徳を事例として」(『人民の歴史学』153 2002)ほか、同著「戦中戦後における日本農士学校長・菅原兵治の「尊徳」論/「幽学」論」(『日本思想史研究会会報』20 立命館大 2003)

●池上隆史氏発表分(担当:水野雄司)
◎清水正之「日本思想史と解釈学―芳賀矢一と村岡典嗣」(『論集』4 三重大 人文学部哲学・思想学 1986)ほか、前田勉編『新編 日本思想史研究』(平凡社 2004)畑中健二「国学と文献学」(『日本思想史学』30号 1998)『季刊 日本思想史』第六十三号「特集 日本思想史学の誕生」(ぺりかん社・2003.4)

 日 時 :8月6日(土)14時より
 場 所 :文学部 610演習室(6F)



11月例会報告
◎高橋俊和「宣長学の二面性―実証的注釈と皇国主義―」

 宣長の学問は、『紫文要領』(物語論)と『石上私淑言』(歌 論)を執筆した宝暦13年を境に大きく変容する。『排蘆小船』(歌論)で見せた 文学における実情論は、『紫文要領』で「もののあはれ」論に展開し、それはさ らに『石上私淑言』において、儒教に対抗すべく「神」に結びつけられ、「神代 の心ばへ」へと装いを新たにする。そしてこの「神代の心ばへ」をもとに、漢意 に汚される以前の日本の上代の正実(まこと)を、古文献を使って実証的に究明 する方向に、宣長の関心は移行してゆく。その所産が『古事記伝』全44巻であっ た。
発表では、『排蘆小船』以来、契沖学に学ぶ文献学的注釈を有力な方法として きた宣長が、なぜ「皇大御国の道」を言挙げしなければならなかったか、考える ところを述べてみたい。

 日 時 :11月12日(土)14時より
 場 所 :文学部 610演習室(6F)



12月例会報告
◎桐原健真「東方君子国の落日」

 戦前における会沢評価は、意外なほどに低い。それは、晩年の彼 が尊攘激派ではなく、鎮派を支持したという事情が、明治以後の会沢の評価を低 からしめていたのであろう。これに対し、戦後は皇国史観や国体論への批判とと もに、水戸学における国体論の理論的思想家(イデオローグ)として会沢がク ローズアップされた。本発表は、幕末において、会沢の国体論がいかに変容した かを論ずるために、会沢における国体論の理論的基盤を明らかにすることを目的 とするものである。

 日 時 :12月10日(土)14時より
 場 所 :文学部 610演習室(6F)



1月例会報告
◎植村和秀氏「丸山眞男と平泉澄の歴史的位置―20世紀と日本思想史の交点 」

 丸山眞男と平泉澄は、日本思想史の研究者であると同時に、あるいはそれ以上に、日本思想史の研究対象でもある。ここでは、後者の視点に立って、二人の歴史的位置の把握に努めてみたい。具体的には、二人の時代の特徴として、政治的なるものに自己の生の意味を強く求める点を挙げ、二人が自覚的に、しかしそれぞれの流儀で、この時代を体現したとする。しかもこの時代は、日本とヨーロッパに共通の一時代でもあった。丸山と平泉は、日本思想史のみならず、20世紀思想史の研究対象でもあり、それゆえカール・シュミットやフリードリヒ・マイネッケのような同時代人との比較もまた、ここで試みられる予定である。

 日 時 :01月28日(土)14時より
 場 所 :文学部 文学部棟大会議室(2F)



2月例会報告
◎2005年度修士論文・卒業論文発表会

修士論文発表

平岡留美     慶政の遁世観
中野寛美     近世初期における剣術思想
高橋亜希子    吉田松陰の思想


卒業論文発表

安部早代     近世における遊女観
岡野克俊     折口信夫の研究
高橋恭寛     中江藤樹と藤樹学派
橋本有香里    抜隊得勝の思想
芹澤寛隆     近代日本における大衆の天文観と西洋科学

 日 時 :02月11日(土)10時より
 場 所 :文学部 610演習室(6F)


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