2014年度日本思想史研究会月例会報告要旨(予告)


開催日報告者題目
5月17日 安江哲志氏 「直接的なものにおける他者の問題 西田幾多郎の現実世界の認識をめぐって」
王一兵氏 「近世知識人の旅−大槻平泉を中心に」
6月21日 加藤駿氏 「初期社会主義者の性愛観 堺利彦の場合」
久保雄太郎氏 「伊藤仁斎の初期から中期」
7月26日 森本輝嗣氏 「横井小楠における天の観念」
松本学氏 「平田篤胤の医学 ―その諸側面について―」
蒋建偉氏 「会澤正志斎における民の思想  「民命」と「君徳」をめぐって」

2月例会

1月31日(土)卒業論文発表会

 
時間 発表者 題目
13:00-13:30 江頭彰太カ氏 「日本人の死生観と墓制」
13:30-14:00 井出 貴幸氏 「『日暮硯』の研究」
(休憩10分)
14:10-14:40 伊藤 早紀氏 「吉田兼好の思想」
14:40-15:10 加賀 南実氏 「男鹿地方におけるナマハゲ行事」
(休憩10分)
15:20-15:50 坂岡 凱歌氏 「内村鑑三の歴史観」
15:50-16:20 佐々木隼相氏 「加藤弘之における進化論理解の可能性について」
(休憩10分)
16:30-17:00 山口 美智氏 「棺を回す儀礼」
17:00-17:30 白井 孝典氏 「出羽三山講の思想史」

2月1日(日)修士論文発表会

時間 発表者 題目
13:00-13:50 森本 輝嗣氏 「横井小楠の三生思想「再生」と「継承」を中心に」
(休憩10分)
14:00-14:50 安江 哲志氏 「西田幾多郎と現実世界」
(休憩10分)
15:00-15:50 加藤 駿氏 「初期社会主義者たちのジェンダー観」
16:00-16:50 久保雄太郎氏 「伊藤仁斎の本質における一考察」
(休憩10分)
17:00-17:50 王 一兵氏 「大槻平泉研究」

5月例会

安江哲志氏「直接的なものにおける他者の問題 西田幾多郎の現実世界の認識をめぐって」

『善の研究』(明治44年)以来、個(人格)の直接性を問うてきた西田幾多郎 (明治3/昭和20)は、昭和期に至って、個がそこに生きる現実世界の構造に問題関心の重点を置くようになる。折しも大東亜戦争期において展開された西田の国家や他者、身体性への認識は、朝鮮や台湾、中国大陸の現実を割り引いたものであるとの批判や指摘もなされている。それではこのような欠如した現実(西田にとっての現実)とは一体何であるのか。西田哲学が元来持つ特徴に加え、昭和期における国家をめぐる諸論考より、(上の批判を包摂する意味でも)「大東亜戦争の哲学」として、西田幾多郎の思想史的意味を検討する手掛かりとしたい。 (東北大学大学院)

王一兵氏「近世知識人の旅−大槻平泉を中心に」

日本の近世は、階層を問わず旅が広範な人々に普及した時代であった。十八世 紀中葉になって、日本人の伝統的な旅意識と旅の態度にもようやく新しいひろが りと動静がきざしてきたのである。「求道の旅びと」に代わって「好知の旅行者」 が相次いであらわれてきたのである。本発表は仙台藩の藩儒である大槻平泉の旅 を中心に、近世知識人の旅の実態を究明したい。 (東北大学大学院)


6月例会

加藤駿氏「初期社会主義者の性愛観 堺利彦の場合」

1900年代の初期社会主義運動に参加した思想家たちの性愛観を探ることで、彼らの人間理解が前時代とはどう異なるのかを明らかにしたい。今回の報告では堺利彦(1871-1933)が『家庭雑誌』や『平民新聞』などの媒体に発表した文章から彼の性愛観について考える。 (東北大学大学院)

久保雄太郎氏「伊藤仁斎の初期から中期」

伊藤仁斎は日本の儒学思想史の中でも知名度、その思想の体系性としても一際群を抜く存在といえる。一方で、「伊藤仁斎の思想」というものが仁斎50代以降に形成されたものであり、それまでかなりの紆余曲折があったことは有名である。本発表では、修士論文の構成予定として、伊藤仁斎の初期から中期への思想変遷を辿りながら、彼が実際に問題としていたことの思想的目的に焦点を置きながらその変化に注目し、「伊藤仁斎」という人間の本質に迫って行きたいと考えている。 (東北大学大学院)


7月例会

森本輝嗣氏「横井小楠における天の観念」

横井小楠(1809?1869) は、晩年になって天の観念を大成させた。それは大まかに分けると「天の人格化」と、「前生?今生?後生」の二つであるといえ、前者については種々と明らかにされている。しかしながら後者について、果たして彼がどこからそれを考え、提唱したのかは依然として不明な点が多いので、明らかにしていきたい。筆者は当分この問題に注目していく予定であり、本発表を、小楠独自の天の思想の源泉を探る第一歩としたいと考える。 (東北大学大学院)

松本学氏「平田篤胤の医学 ―その諸側面について―」

近世国学の大家である平田篤胤は、幼少期に医術を学び、その後も晩年まで医業を続けた。篤胤の医学は究極的には、神の道にかなう「神医道」 の実現を目指すものであった。しかし系譜的には漢方医学の一派に属し、また西洋医学の知識をも取り入れているなど、篤胤の医学には多様な側面がある。本発表では、篤胤の医学を構成するこれら諸側面について述べると共に、そこから見えてくる身体観・女性観などを明らかにしたい。 (東北大学大学院)

蒋建偉氏「会澤正志斎における民の思想  「民命」と「君徳」をめぐって」

江戸後期水戸藩の儒学者、会澤正志斎をめぐるこれまでの研究において、忠や孝を民に要求する部分が主にクローズアップされてきた。しかしながら、彼の代表作『新論』國體篇下において、その國體論の根幹として「民命を重んずる」こ とが論じられる他、彼の著述の所々で「民命」や「民生」の重視が見られることについては、従来注目されてこなかった。こうした「民命」、「民生」重視の視点は、「君コ」への希求と結びつきながら、攘夷・開国などをめぐる政策論などにも強い影響を与える要素として極めて重要なものと考えられる。本発表ではこうした正志斎の民をめぐる思惟を論じることとしたい。 (早稲田大学大学院)

戻る