2016年度日本思想史研究会月例会報告要旨(予告)
開催日 | 報告者 | 題目 |
---|---|---|
6月25日 | 青野誠氏 | 「幕末期民間社会における心学受容と転換―菅野八郎と信達地方を事例として―」 |
7月16日 | 佐々木隼相氏 | 「人類学と歴史学――民族起源論と記紀批判言説の交錯」 |
11月26日 | 青野誠氏 | 「幕末期民衆の世界観―菅野八郎における「異国」・「異人」観を中心に―」 |
佐々木隼相氏 | 「明治日本の人類学における言語学的研究の意義」 | |
1月28日 | 宣芝秀氏 | 「伊藤仁斎における「人倫日用」―尹拯との比較を通じて―」 |
林京子氏 | 「聖地の誕生―滋賀県高島市太田の事例を中心に」 | |
2月4日 | 卒論修論発表会 |
6月例会
青野誠氏 「幕末期民間社会における心学受容と転換―菅野八郎と信達地方を事例として―」
幕末期に心学が民衆教化のため積極的に支配の側から採用される一方で、心学が本質的に「個人」意識を認め、封建体制の批判に繋がる可能性を孕むという二面性があったことは既に多くの研究がある。だが、実際にその「教化」を受けた民衆がいかなる思想を形成したかについては充分な考察がいまだに為されていない。本発表においては菅野八郎(1813-1888)および彼の周辺の心学者を対象に、地方における民間社会での心学普及の意義を受容側の視点から考察したい。
7月例会
佐々木隼相氏 「人類学と歴史学――民族起源論と記紀批判言説の交錯」
E.S.モース(1838-1925)による大森貝塚発掘を契機に起きた民族起源論争では、記紀の神武東征の記述によりながら大和民族の移動が論じられていた。一方で同時期には、那珂通世(1851-1908)や三宅米吉(1860-1929)が中心となり、史料の有無という観点から記紀批判が行われ始めた。そこでは史実としての神武東征は疑われるべきものとされた。本報告では、記紀をめぐる二つの立場(信頼/懐疑)を関係づけながら考察することで、大学制度が整い始める明治前期の学問の特徴を明らかにすることを目的とする。
11月例会
青野誠氏 「幕末期民衆の世界観―菅野八郎における「異国」・「異人」観を中心に―」
近世民衆の世界観に関する従来の研究では、民間に普及した出版物を分析対象として、そこに描かれた世界観を考察する方法が用いられてきた。その一方で民衆自身が語った世界観については、史料的制約もあり、ほとんど触れられてこなかった。本発表では菅野八郎(1813〜1888)を事例とし、彼の著述に見られる「異国」・「異人」観について年代を追って考察を行う。それによって、幕末という急激に変化する社会状況下での、民衆における世界観の変容の一端を明らかにしたい。
佐々木隼相氏 「明治日本の人類学における言語学的研究の意義」
明治期の日本に紹介された「先史」概念は、西洋において聖書的世界観との長年にわたる対決を経て広まったものであることが強調されていた。受容した日本では西洋で行われたような既存のテクストの支配する時間認識との葛藤はなく、「先史」概念を受容しそれに基づいて種々の研究がすすめられた。本報告では「先史」概念の受容がどのような学術的背景の下に行われたのかを考えることを目的とする。とくに同時期の方言の調査や神代文字に関する議論といった言語学的関心の高まりに注目しながら検討していく。
1月例会
宣芝秀氏 「伊藤仁斎における「人倫日用」―尹拯との比較を通じて―」
十七世紀後半における儒者伊藤仁斎は、「道者、人倫日用当行之路」(『語孟字義』)と記し、「道」の具体的な内容を「人倫日用」とする。仁斎は「人倫日用」論を如何に構築していたのか。従来では、町人としての仁斎の社会的身分から説明がなされてきた。本報告は、朝鮮中期の儒者である尹拯(1629〜1714)との比較を通じて、彼の「人倫日用」論を東アジア思想風景から再構成し、それを支える思想的基盤について考察するものである。
林京子氏 「聖地の誕生―滋賀県高島市太田の事例を中心に」
天台宗西教寺中興真盛が活躍した15世紀末はそれまでの社会通念や秩序が変動し、中世が終焉する時代であった。天台円頓戒復興運動の中で「戒称二門の教え」―念仏専修ではなく、念仏と持戒でこそ救われる―を説いて天皇家、将軍家、戦国大名から民衆まで身分の上下を問わず広く帰依された真盛の生涯と思想を概説し、人々が作り出した真盛ゆかりの聖地の成立を滋賀県高島市太田の実例を中心に考察する。これにより「生身の地蔵」と尊崇された真盛に対する具体的な信仰のかたちや「往生」への願い、かれらのコスモロジーを解き明かすことで、現代に通じる「浄土教の知恵」を考えてみたい。
2月例会
卒論修論発表会
時間 | 発表者 | 題目 |
---|---|---|
11:00-11:30 | 木戸希望氏 | 「空手道近代化の思想と系譜」 |
11:30-12:00 | 枇々木翼氏 | 「古代人の自然観 『日本霊異記』を中心に」 |
(休憩60分) | ||
13:00-14:00 | 青野誠氏 | 「菅野八郎における「個人」意識の研究―民衆思想史研究序説―」 |
(休憩10分) | ||
14:10-15:10 | 佐々木隼相氏 | 「明治日本のアカデミズムと博物思想」 |
(休憩10分) | ||
15:20-16:20 | 林京子氏 | 「真盛上人の思想と実践―女人往生を中心に」 |