!!!社会学入門 {{img Max_Weber.jpg,"align='right'"}}社会学は、社会の構造や変動に注目しながら、人間と社会との相互作用を包括的・多面的に研究する学問です。人文・社会系の学問の中でも同時代的性格が強いと言えます。自我をめぐるミクロ的な問題から地球環境問題に至るまで、幅広い領域で研究がおこなわれています。 本研究室は大正14年7月に社会学講座が開設されて以降培われてきた伝統があり、特に理論研究と実証研究を等しく重要視している点に他大学にはみられない特色があります。 理論研究については、マックス・ウェーバー、タルコット・パーソンズ、ユルゲン・ハーバーマス、ニクラス・ルーマンといった「巨匠」の社会理論の現代的定位により学的基盤を築き上げるとともに、都市、環境、グローバル化、情報文化、コミュニケーション、共同性/公共性といった現代的な課題に取り組まれています。 実際の指導にあたっては、学部1〜2年次に、外国語文献の精読をはじめとする理論的トレーニングを積み重ね社会学の基礎的視角を獲得した上で、現代社会の諸現象に目をむけることになります。 そして、学部3年次の「社会学実習」(通年必修)において、担当教員、大学院生とともに、労働、環境、医療、福祉、教育、情報文化、家族、コミュニティ、などといった現代社会の諸問題に対して社会学的な視座・方法から取り組むことになります(近年の成果は、「社会学調査実習報告書」のページでみることができます)。 最後に、4年間の集大成として卒業論文を執筆します。卒論を提出し、審査を通過すれば、卒業です。これまでの卒論のタイトルと要旨は『ソキエタス』のページで確認することができます。なお、社会学では、たびたび東北大学総長賞を受賞する力作が生み出されています。 また、行動科学研究室との密接な関係のなかで、計量的研究についても専門的に学び研究する環境が用意されています。社会学では、フィールド調査にもとづく社会現象の質的分析に力を入れており、社会学と行動科学の所定の科目を履修することで、社会調査士の資格をとることができます。 このようにして、1学年10名前後の学生に対して教員が5名という少人数教育と、研究拠点大学として数多くの大学院生(社会人院生を含む)が在籍する学問風土のなかで、社会学専修の卒業生は、大学院進学者も含め、専門教育と訓練の確かな成果を存分に発揮し、東北地方は言うに及ばず全国各地のマスメディア、自治体などの現場で幅広く活躍し、今日に至っています。 !!!社会調査士の資格をとる 社会調査士(Japanse Certification Board for Social Researcher)とは、変化の激しい社会の現実を捉え、対応と解決策を図っていく上で、社会調査の専門的な能力を持つ人材を育成し、資格を認定する制度です。 社会調査に関する教育体制の整備、調査を担当する人材の組織的な育成、そして、専門的職業としての資格の制度化を図るために、日本教育社会学会、日本行動計量学会、日本社会学会の三学会が連携をはかり、「社会調査士資格認定機構」が設立されています。 本学では、社会学研究室と行動科学研究室に籍を置き質的、量的調査を専門とする、わが国を代表する強力なスタッフ陣が、資格獲得のサポートをします。 *[JCBSR 社会調査士資格認定機構|http://wwwsoc.nii.ac.jp/jcbsr/] !!!教員推薦書籍―社会学ことはじめ― !!吉原直樹 教授  都市社会学・アジア社会論 *'''ベネディクト・アンダーソン著(白石さや, 白石隆訳)『〈増補〉想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行』'''(NTT出版, 1997年) ナショナリズムが国家や資本の諸制度によって人為的につくられた共同体であることを達意に論じている。近代の国民国家の有り様を考える上で必読書である。 *'''デヴィッド・ハーヴェイ著(吉原直樹監訳)『ポストモダニティの条件』'''(青木書店, 1999年) 空間論的次元からマルクスの資本蓄積論を推敲してきた著者が文化変動の起源に挑戦した話題の書である。モダニティに対する透徹した批判認識が注目される。 *'''斎藤日出治・岩永真治著『都市の美学』'''(平凡社, 1996年) アーバニズムの両義性を社会理論の革新の方向を見据えながら、歴史的文脈におりたって検証することによって、モダンの文法を解読しようとした意欲作である。 !!長谷川公一 教授 環境社会学・社会運動論 *'''アレクシス・トクヴィル著(井伊玄太郎訳)『アメリカの民主政治』'''(講談社学術文庫、1987年) わずか8ヵ月余りの渡米体験をもとに書かれた不朽のアメリカ論。現代社会論の先駆的な古典でもある。パブリックのあり方や市民活動、NPOなど、今日的な課題を考えるうえでも、示唆的である。 *'''塩野七生著『ローマ人の物語』'''全15巻(新潮社、1992-2006年。新潮文庫版もあり) 15年にわたって、ローマ帝国崩壊に至る歴史を、予定どおり1年に1巻づつ刊行するという偉業を、世界で初めて達成した著者の構想力と観察力、筆力に脱帽する。『ユリウス・カエサル』(4・5巻)が圧巻。 *'''大塚信一著『理想の出版を求めて――一編集者の回想1963-2003』'''(トランスビュー、2006年) 著者は岩波書店前社長。旧来のアカデミズムを超えた学際的な知の創出に関わったプロデューサーが、その内幕を語っていて興味深い。いい研究者を育てるのは、同業の専門家集団と院生・学生に加えて、編集者であることがよくわかる。 !!正村俊之 教授  情報社会論・社会的コミュニケーション論 *'''エミール・デュルケム著(宮島喬訳)『自殺論』'''(中公文庫, 1985年) 「社会学的発想」を知るための最適の書物。 *'''アーヴィング・ゴッフマン著(石黒毅訳)『行為と演技―日常生活における自己呈示』'''(誠信書房, 1974年) 社会学的観察とはどのようなものかわかる。 !!永井彰 准教授  批判理論・農村社会学 *'''マックス・ヴェーバー著(尾高邦雄訳)『職業としての学問』'''(岩波文庫、1980年) *'''マックス・ヴェーバー著(富永祐治、立野保男訳、折原浩補訳)『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」』'''(岩波文庫、1998年) 前者は、マックス・ヴェーバーが学生たちに語った講演をもとにしている。直接的には、学問に携わる者の心構えを語っていて、それはそれで興味深いのだが、かれは、そのことをとおして「近代」という時代の意味について語っている。 これを読み終えたら、後者にも挑戦してほしい(こちらは、学術論文なので前者よりは難解)。社会科学的認識ははたして客観性を持ちうるのか、持ちうるとしたらいかなる意味においてかという問題をヴェーバーは論じている。こんにちの科学方法論の水準からすると、やや古いということは否めないが、それでも一読する意味は大いにある(これから社会科学を勉強しようとする人は、方法論の問題を一度はくぐっておく必要があるから)。またこの論文にも、近代という時代についての洞察がちりばめられている。これについても味わって読んでほしい。 *'''ニクラス・ルーマン著(佐藤勉、村中知子訳)『情熱としての愛』'''(木鐸社、2006年) ルーマンは、現代を代表する社会学者の一人である。ルーマンの理論装置を理解するためには『社会システム理論』(恒星社厚生閣)を緻密に検討する必要があるが、ルーマンの着想や分析の独自性を知るためには、むしろこの本の方がよいであろう。 *'''ユルゲン・ハーバーマス著(高野昌行訳)『他者の受容』'''(法政大学出版局、2004年) 近代法治国家の論理とその現代的意味、ネイション・ステートの問題、多文化主義といったテーマについて、討議理論という独自の理論装置を背景にしながら論じている。ハーバーマスという理論家の独自の発想法の一端を読みとることができる。 !!下夷美幸 准教授  家族社会学 *'''フィリップ・アリエス 『「子供」の誕生―アンシァン・レジーム期の子供と家族生活』'''杉山光信,杉山恵美子訳,みすず書房, 1980年(原書:1960年). 私たちがあたり前だと思っている「子ども」「家族」という概念が、決して普遍的なものではないことを教えてくれる本。物事を相対的に捉えることの重要性に気づかされる。 *'''村上泰亮, 公文俊平, 佐藤誠三郎 『文明としてのイエ社会』'''中央公論社,1979年. 欧米近代化とは異なる文明の発展パターンがあることを再認識させてくれる本。社会をダイナミックに類型化し、比較することの面白さを味わうことができる。