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『La Movado』第668号(2006)10月号, p. 11 掲載

『エスペラント日本語辞典』の編集方針

エスペラント日本語辞典編集委員会副主幹 後藤 斉


La Movado667号では、『エスペラント日本語辞典』に多くのページを割いて 紹介していただいた。ありがたいことであるが、この辞典の性格について読者に 一層の理解をいただくために、編集委員会の側から少し補足したい。

この辞書は、「高度な学習辞典」を目標にした。「学習辞典」とは比較的 新しい概念であり、エスペラントの辞書としては世界を見渡してもこれまで 存在していない。したがって、この辞書の編集作業は新しい試みの連続だったと言える。

既存の辞書・文法書の記述が編集の上で指針となったのはもちろんであるが、 実際の使用例、計画言語としての整合性、教育的配慮も十分に考慮した ところに他の辞書に比べて大きな特徴があると考えている。したがって、 Plena Ilustrita Vortaro (PIV) がこの辞書にとって基準になっている、という 理解は正しくない。具体的な例を挙げて、このことを説明してみたい。

この辞書には主見出し語 ŝati の下に副見出し語として副詞 ŝate を 挙げている。残念ながら、誤植が起きてしまい sate と印刷されてしまったが、これには 以下のような事情がある。

この辞書の編集過程では、主見出し語と副見出し語の形をコンピュータにより 何回かチェックしたので、この種の誤植は、原則として、根絶されている。 ŝate に関して誤植が発生したのは、この語の収録を決めたのが、 コンピュータチェック作業後の、紙の上での校正段階になってからのことで、 校正紙によるオペレータへの指示がうまく伝達されなかったことに原因がある。

副詞 ŝate は、PIVを含む既存の多くの辞書に採録されていない。しかし、 実際の用例の豊富さと日常語としての性質から考えて、編集委員会はこの語を 用例つきで挙げるべきだと判断した。この判断はもっと前にすべきであったが、 気がつくのが遅れて、最終段階で追加採用した形になってしまった。

誤植が発生したことは残念だが、編集の最後まで実際の使用例の検討をし、 学習辞典としての内容の充実を図り続けたことの一つの証左であるとして 受け取っていただければ幸いである。


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