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『エスペラント』(La Revuo Orienta) 第78巻(2010)2月号, pp.6-7. 掲載

de vorto al vorto (8) danki

後藤 斉


Dankon.「ありがとう」は、エスペラントに少しでも触れた人ならば知っている表現です。相手に感謝する状況は日常的によくあり、その際に定型的な表現は便利に使えます。しかし、状況に応じて表現を変えると、自分の感情をさらにきめ細かく伝えることができます。

Dankon.は、実際に、気軽に使える、最も一般的な感謝表現です。感謝をより強く表したい場合には、Koran dankon.と言っておくのが無難でしょう。Elkoran dankon.あるいはTutkoran dankon.とすることもあります。

ほかにMultan dankon.やGrandan dankon.と言うこともあります。接尾辞-eg-をつけたDankegon.もエスペラントらしい表現です。また、それほど頻度は高くありませんが、Koregan dankon.やGrandegan dankon.とすることもできます。さらに、複数にしてMultajn dankojn.やMil dankojn.などと言うこともあります。

感謝する対象が話し相手である場合、Dankon.だけでも明らかですが、Dankon al vi.とすることもできます。一方、対象をDankon al la partoprenintoj.のように限定することもよくあります。

感謝する理由を付け加えたい場合には、Dankon pro via helpo.のように、動機を示す前置詞proで理由となる名詞を導くのが一般的です。Dankon por via helpo.と、目的を示す前置詞porを使って表現することもできます。その理由の内容がこみいっていて名詞で表現しにくいときは、Dankon pro tio, ke vi hieraŭ tiel helpis al mi.のように続けるのが整った言い方ですが、Dankon, ke vi ...のようにkeだけでつなげる言い方も時に聞かれます。

日常的な会話でのありふれた感謝を表すには上に挙げた範囲でも十分に役に立つでしょう。ただ、人間の言葉は創造的な性質ももっていますから、状況や伝えたい感情に応じていろいろな修飾語句をつけることができるのです。例えば、Plej ardajn dankojn.などといった用例もあります。

さらに、人前での謝辞やきちんとした礼状などのような改まった場面のことも考えると、もっと幅広い表現を使えるようにしておくのが望ましいでしょう。

多くの人は、定型表現としてのDankon.をエスペラント学習の中で先に習ったことでしょうが、エスペラントの単語のしくみとしては動詞dankiが元になっています。動詞を使うことのメリットは、感謝する主体、感謝が向かう対象、その様態などについて多様な表現が可能になることです。ただし、ここでは主として話し手が聞き手に直接感謝を表現する場合の表現を見ておくことにします。

まず、一番単純なMi dankas.も感謝表現としてしばしば聞かれます。Mi dankas vin.とすることもよくあります。動詞dankiはこのように他動詞として使うことのほうが多いのですが、Mi dankas al vi.と自動詞扱いしている例もかなり広く見られます。

他動詞dankiの目的語になるのは、上の例のように、感謝の対象である人(あるいは組織など)であるのが普通ですが、頻度は低いもののdanki vian helpon, danki la kunlaboronのような例も見られます。

dankiを強めるには、副詞としてkore, tre, multe, sincere, elkoreを添えるのが普通ですが、profunde, tutkore, varmeなどもよく、ほかにforte, vereなども使えます。

一語の副詞にまとめてしまわずに、el la[mia] tuta koroとすることもできます。さらにel la fundo de mia koro「心の底から」とすると、少し重い感じはしますが、それだけに気持ちがこもっていることが伝わるでしょう。

surgenue「ひざまずいて」も使えますが、少し大仰に聞こえます。古くはhumile「へりくだって」を使った例もありますが、現代では時代がかった表現に聞こえるでしょう。

Mi deziras[volas] danki ...は、字義通りには「感謝したい」ですが、このように言うことは実際に感謝することにもなっています。Mi emas danki...やMi ŝatus danki ...も同様ですが、ŝatiでは語調を和らげるために仮定法を使うことが多いようです。

Mi devas danki ...は「是非とも感謝せねばならない」ということで、感謝の念を強く感じていることが表されています。Mi havas agrablan devon danki ...は、いくぶん持って回った言い方ですが、特に改まった場面にはふさわしく感じられます。

ほかにも、十分に感謝できないと言うことによって、感謝の念が非常に強いことを伝えることもあります。Mi ne povas sufiĉe danki vin.やMi ne scias, kiel mi povas sufiĉe danki vin.あるいはMi ne havas vortojn por sufiĉe danki vin.などです。

定型表現Dankon.は省略的な言い方ですが、主語と動詞を補ってMi esprimas dankon.とすると少し丁寧になります。ただ、この場合、さらに形容詞で修飾してMi esprimas koran[grandan/sinceran] dankon.などとする方が落ち着きがいいようです。Mi deziras[volas] esprimi ...とすることもできます。

Mi ŝuldas dankon al vi.は借金のイメージから「精神的な借りがある」ことを表し、結局「感謝をしなくてはならない」という意味になります。ここでもgrandaなどの形容詞を添えることが多いようです。

もう一つよく使われる動詞はakceptiで、Bonvolu akcepti mian plej koran dankon.「心からの感謝をお受け取りください」のように言って感謝を伝えることができます。

副詞dankeを使うこともできます。Mi danke ricevis vian leteron.「感謝をもってお手紙を受け取りました」とは「お手紙ありがとう」とほぼ同じことを伝えています。kun dankoとして、Kun danko mi ricevis vian leteron.のように言っても同様ですが、ここからkun kora danko, kun granda danko kaj plezuroといったバリエーションの可能性が広がります。

形容詞dankaあるいはdankemaを使って、Mi estas danka al vi.と表現することもできます。このように現在形で今の感謝を伝えることもできるのですが、Mi estos tre danka, se vi helpos al mi.のように、未来形にして、依頼の際に「〜してもらうと、ありがたい」と言いたいときに使いやすい言い方です。表現が断定的すぎると感じられる場合には、語調を和らげるために仮定法にして、Mi estus tre danka, se vi helpus al vi.と言うこともよくあります。


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