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『エスペラント』(La Revuo Orienta) 第78巻(2010)5月号, pp.12-13. 掲載

de vorto al vorto (11) flanko

後藤 斉


PIVはflankoの第一義を「人間や動物の体の右あるいは左の部分」としています。分かりやすく具体的に言うと体の一部としての「体側,わき腹」です。辞書の中での扱い方として、語源を重視する立場からはこれでいいのでしょう。ただ、この語義はエスペラントに実際の使用の中で他の語義と比べると、それほど目立っているとは言えません。

学習の上で最初に覚えるものとしては別の語義を提示したい気もします。ただ、この単語の使い方はかなり拡散していて、語義としてどのようにまとめればよいか、迷うところもあります。

語義としてもう少しよく見られるのは、人間や動物に限らず、正面(fronto)や背面(dorso)に対して「側面」を意味する場合です。正面がはっきりした直方体に近い形の建物や家具などを思い浮かべるとわかりやすいでしょう。右側面、左側面はそれぞれla dekstra flanko, maldekstra flankoです。(なお、以下の説明では冠詞を省略することがあります。実際の文章では、文脈から十分に限定されている場合には冠詞を忘れないようにしましょう。)

stari ĉe ies flanko「<人の>脇に立っている」では体の一部としての「体側」の語義も生きているでしょうが、位置関係を表す、多少抽象的な使い方になっているとも言えるでしょう。

さらに、側面に限定せずに、広く「がわ、面」と捉えることもよくあります。そうすると、前面(正面)はantaŭa [fronta] flanko、背面(後面)はdorsa [malantaŭa/posta] flankoと言えることになります。また、正面や側面を特定しにくい形をした物についても、ある方向から見える面はflankoと言えるでしょう。実際の使い方としては、この語義が目立つようです。

紙のような薄いものの表と裏のそれぞれの面もflankoです。表面と裏面はfrontoとdorsoでよいのですが、fronta [dorsa] flankoと言うこともできます(frontflanko, dorsflankoと1語にすることもあり、表のことをkapflankoとも言う)。コインなどについて、aversoとreversoという専門用語もありますが、これを覚えるのは学習が進んでからで構いません。

ほかに、内[外]側はinterna [ekstera] flankoです。山[海]側ならmonta [mara] flanko。また、反対側はkontraŭa flanko。

この単語はさらに、具体的な物体の面から離れて、抽象的にもよく使われます。わかりやすい例として、交渉や対立などの当事者の一方がそれぞれflankoです。報道記事でjapana flanko「日本側」などとしてもよく見られます。この語義は合成語でもよく使われ、例えば「六者協議」はses-flanka intertraktado [interparolo]です。Ni aŭdas de diversaj flankoj la opinion, ke ...「さまざまの方面から…とのご意見を伺っている」のように、交渉などの当事者とは言えない場合もあります。

ies flanko「<人の>側」という表現もよく見かけます。『エス日』にはTiu projekto bezonas klarigojn de nia flanko.この企画には私たちの側からの説明が必要だ/Tio estas peko de via flanko.これは君たちの側の過ちだ」などの例文が挙がっています。

Mi, de mia flanko, pretas pardoni lin.「私の側からは彼を許す用意はある」やTia sinteno de la flanko de scienculoj estas imagebla.「学者の側でそういった態度を取るのはありそうなことだ」などでは、flankoを使わない言い方もできそうですが、flankoを使うことで、その立場を際立たせる表現になっています。これをflanke de la scienculojのように言い換えることをPIVは勧めていないようですが、実際には頻繁に見受けられます。

financa flanko「財政面」、teknika flanko「技術面」といった表現もよく使われるものです。例えば、firmigi la financan flankon de la asocio「協会の財政面を強化する」など。la enhava flanko de la verko, la eduka flanko de nia agado, la seksa flanko de la vivoなど、応用の可能性はかなり広いのです。

評価の形容詞をつけたbona [malbona] flanko「よい[悪い]面」、pozitiva [negativa] flanko「肯定的[否定的]な面」、nigra [malluma] flanko「暗黒面」といった表現も使いでのあるものです。negativaj flankoj de la disvolviĝo「発展の否定的な面」、Via laboro posedas multe da bonaj flankoj.「あなたの仕事ぶりにはよい面が多々ある」などです。

unu flankoはもちろん具体的な語義でも使えるのですが、使い方としておもしろいのは抽象的な使い方でしょう。特に、De unu flanko la libro estas utila.はこれだけで完結していません。de unu flankoは、別の面から見ての判断をあとで述べることを予告する働きをしているのです。それはde alia flankoで導かれます。例えば、De alia flanko ĝia stilo estas tro peza.「別の面では文体が重すぎる」などと続けて、長所を挙げたあとで短所を述べるような場合が典型的です。なお、unuflanke, aliflankeと1語の副詞にする方がむしろ多いでしょう。

形容詞flankaは名詞の意味に対応していくつかの使い方があります。flanka poŝo「脇のポケット」など、体の一部としての意味が読み取れる場合や、位置関係として「側面の、脇の」を意味しているflanka fenestroなどは難しくないでしょう。

flanka enirejoも「側面入り口」なのですが、「通用口」の意味にもなります。「正面(中央)から離れた」という位置関係だけでなく、機能の上で「副次的な」という意味をつけているのです。

この派生義は、「付随的な」「主要なものでない」「ついでの」と考えても構いません。flanka aferoは「周辺的なことがら」でしょう。ほかにagado, efiko, epizodo, informo, temo, intereso, rimarko, produktoなど、さまざまな名詞とつながります。この語義はLa aliaj problemoj estas nur flankaj.のようにnurと相性がいいようです。

副詞flankeでは、上述のflanke de ...と位置関係の「脇に」が主な使い方です。ただflanke lasiは文字通りに「脇に置いておく」から「副次的」の意味が強まって「放置する」になります。Mi intence lasis flanke la demandon.「その質問をわざと放っておいた」。さらにparoli flanke pri ...ならば「…のことをついでに話題にする」です。


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