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『エスペラント』(La Revuo Orienta) 第78巻(2010)6月号, pp.12-13. 掲載

de vorto al vorto (12) profunda

後藤 斉


形容詞profundaの基本的な語義は表面から内側への隔たりが大きいさまです。profunda valo, maroなど自然の地形の場合でも、profunda fosaĵo, puto「深い堀、井戸」など人工物の場合でも、地表や水面を基準にして垂直に下方向への隔たりを思い浮かべることが多いでしょう。

副詞profundeの形も、profunde en la maro, profunde sub la teroなど、前置詞による場所の表現とともに位置関係を表す使い方で目立ちます。もちろん動詞を直接に修飾することもできます:fosi profunde「深く掘る」。profunde kliniĝi「深く屈み込む」、profunde riverenci「深くお辞儀する」などでは、通常の位置から下に大きく移動する様態を表しています。

この中心的な語義は日本語の「深い」とかなり重なっていて、類推して考えることができるでしょう。しかし、profundaにも「深い」にも派生的な語義の広がりがあります。これはどの程度まで重なりあっているのでしょうか。

なお、隔たりは下に向かってのものとは限りません。profunda fendo, truoなどのように、物体の表面から内側に入り込んでいればよいのです。profundaj okuloj「くぼんだ目、彫りの深い目」のような例もあります。profunda arbaroも、内部への奥深さを表しています。

profunda montaro, profundaj montojの実例も見られます。ただ、東洋系の文章に目立って多く見られ、どうも中国語「深山」などの直訳として生まれた表現のようにも思われます。かりにそうであるにしても、profunda arbaroなどとの類推で十分に理解できますから、エスペラントの表現力を豊かにするものと考えることができるでしょう。

下あるいは内側への動きが認められれば対格語尾をとってprofundenです。penetri profunden en la landonならば「国内深く侵入する」、iri pli profunden en la ĉambronは「部屋のずっと奥の方へ進んで行く」です。

形容詞や副詞より頻度は落ちますが、名詞profundo「深さ、深み」として使うこともあります。このような抽象名詞は少し使いにくく思われるかもしれませんが、en la profundo de la maroといった表現があります。

profunda radikoは、文字通りに地中深く伸びている植物の根を表すことがありますが、La malamo havas profundajn radikojn en la historio.「憎しみは歴史に深く根ざしている」のような比喩的な使い方もあります。profunde enradikiĝinta「深く根ざした」も同様です。ここでprofundaは「しっかり定着した」というイメージを強めています。

ここから、緊密さを表すprofunda kunlaboro, dialogo, interkompreno, integreco, interkonsiliĝo, ligo, rilatoなどの表現で使いやすいことが理解できるでしょう。その一方で、profunda fendo「深い亀裂」などから、profunda izoliteco, diferencoなど隔絶に関係する表現へとつながるのもおもしろいことです。

このようにprofundaの語義は、修飾する名詞の意味との関係で広がっていきます。今回取り上げることができるのは一部に過ぎません。その場その場で適切な訳語を探すことは必要ですが、基本的な語義と共通するイメージを感じることを忘れないようにしましょう。

profunda vundoは「深い傷」ですが、具体的に何センチの深さというよりは、抽象的に影響力の大きさ(ここでは生命に対する危険の度合い)を意識しているのではないでしょうか。このようにprofundaは「影響の大きい、根本的な」というイメージにつながります。profunda reformo、ŝanĝo, eraro, krizo, influo, efikoなどです。

profunde en la koroは「心の奥底で」、el la profundo de ies koro「心の奥底から」もよく使う表現です。profundaは人の心情を表す語句と結びついて、心の底から強く感じているさまを表します。profunda emocio, admiro, amo, amikeco, danko, fido, kontentiĝo, pieco, respektoなどです。

ただ、どちらかと言うとネガティブな感情との結びつきがめだちます。例えば、profunda malamo, malespero, malĝojo, malestimo, malfeliĉo, malgajo, antipatio, lamentado, doloro、funebro, maltrankvilo, melankolioなど、多くの例があります。このことは下方がマイナスイメージと結びつきやすいことから説明できるでしょう。profunda ĝojo, trankviloの例は見られない訳ではありません。しかし、profunda malĝojo, maltrankviloの方がずっとおさまりがいいのです。

profunda malriĉeco, mizeroなど、ネガティブな状態の表現も同様でしょう。不活発で特徴づけられるような動作や状態を表す場合もそれに近いと言えます。profunda dormo, sveno, laceco, laciĝo, silento、kvietoなどです。暗さを強調するprofunda mallumo, ombro, nokto, krepuskoなどもよく見られる表現です。

profundaは色の濃さとも結びつきます。profunda bluo, ruĝo, koloroなど。

知的活動や認識を表す名詞と結びつくときは、「表面にとどまらない、中核にまで至る、本質を捉えた」です。profunda analizo, studo, ekzamen(ad)o, esploro, enketado, klarigo, lernado, legado, traktado, penso, kono, intereso, kompreno, kredo, scioなど、これも多くの例があります。また、profunda atento, rigardoでは「内面まで貫くような」といったイメージでしょう。

「表面からは見えない、隠れた、難解な」とつながる表現もあります。profunda kaŭzo, fono, kialo, sekreto, signifo, sencoなどです。profunda, kaŝita signifoのようにして意味をはっきりさせることもできます。profunda demando, dubo, enigmo, problemoでは、文脈によって「本質を捉えた」とも「難解な」とも解釈できそうです。

反対語「浅い」はmalprofundaですが、実際に使われることはあまり多くありません。しかも大抵の場合に基本的な語義で使われていて、派生的な語義での使用例ががほとんど見られないことはprofundaと比べて対照的です。つまり、Li havas nur malprofundan konon de ekonomio.のような表現は、あまり慣用的ではありません。ただし、誤りと言うべきものではありませんから、表現効果を考えた上で使うのは差し支えないでしょう。


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