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『エスペラント』(La Revuo Orienta) 第78巻(2010)11月号, pp.12-13. 掲載

de vorto al vorto (15) zorgi

後藤 斉


『エス日』ではzorgiの基本義を「他の人によかれと気遣いをする」とした上で、第1義を「気遣う, 気を配る; 世話をする, 面倒をみる」と、第2義を「心配する, 気にかける」としています。第1義は行動に表れた面、第2義は心理的な面がそれぞれ中心ということになります。

行動と心理ですから、この二つの語義が隔たっていることは確かです。そもそも『エス日』の用例のzorgi pri la maljunulo「老人の世話をする」とzorgi pri la kaso de la asocio「協会の財政をみる」、zorgi pri sia malsano「自分の病気のことが気にかかる」とでは、気遣いや世話、心配の程度にかなりの違いがありそうです。

しかし、この場合、心理と行動は表裏一体で、必ずしもはっきりと分けられるものでもありません。表現としては、共通の語zorgiで表されるのです。

気づきにくいことですが、実際の使用例ではdevas zorgiというつながりで使われているのがかなり目立ちます。現実の場面では、zorgiで表される心理や行動は義務づけられるものと捉えられることが多いのでしょうか。

Ne zorgu.「心配するな」のように、気を配ったり心配したりする対象を表現しないこともあります。しかし、たいていの場合には表現され、そしてその大多数の場合に上の例のように前置詞priで導きます。

『エス日』では他動詞としての用法は第3義「責任を持って遂行する, 配慮する」として挙がっています。しかし、実際の用例は、辞書での整理のようにきれいに割り切れるものではありません。辞書に挙がっていないからといって使えない訳ではありません。意味として第1義である場合に他動詞として使われた例はありますし、La arestitoj estas bone zorgataj.「逮捕者はきちんとした取り扱いを受けている」のように受動文で使った実例もあります。ただ、zorgi pri iuに比べると頻度がずっと低いことは意識しましょう。

前置詞porを用いることもあります。zorgi por la infanojとすると、「子供のために」の感じがはっきり表されます。また、zorgi por kiel plej eble senbara komunikado「できるだけ円滑な意思疎通に向けて気を配る」のように、めざすべき目的として表現するときにも使えるでしょう。

めざすべき目的は、名詞でなく節で表現するほうが言いやすいことが多いようです。その場合、zorgi, ke la rivero ne malpuriĝu 「川が汚れないように気を配る」のようにke節で表すのが普通です。この構文では、目的を実現しようという意志があるはずですから、ke節の中の動詞は語尾-uの意志法にしておきます。ついでながら、これは文法上の制約というよりは意味上の親和性によることですが、この例文のne puriĝu「汚れないように」のように、否定を伴うことが頻繁にあります。なお、zorgi por ke -uのように表現した実例も時として見られます。

zorgiに動詞不定形を続ける語法も見受けられます。zorgi uzi decajn vortojn「礼儀にかなった言葉づかいをするよう気をつける」など。ここでも、zorgi ne fali「落ちないよう気をつける」のように、不定形に否定が伴っている場合が目立ちます。

さらに間接疑問文が続く実例もあります。Oni ne zorgis, ĉu la hotelo estas luksa aŭ ne.「ホテルがデラックスかどうか、気にしなかった。」などです。

zorgiの程度を強めるには、multe, tre, tro, boneといった一般的な副詞を使うことが多いようです。弱めるにはmalmulteです。もう少し具体的な意味をもつ副詞としては、atente, dilegenteなどが使えそうです。

名詞zorg(ad)oは、心理的な語義としては「心配、懸念」に当たります。いろいろな構文で使うことができるのはもちろんですが、特にhavi zorgon「心配がある」やmontri [esprimi] zorgon「懸念を表す[表明する]」などといったつながりてよく使われます。強調するための形容詞をつけるならば、granda, grava, profunda, fortaなどが合っています。Mia ĉefa zorgo estas ...といった表現も時として使う必要が出てくるかもしれません。「心配して」はkun zorgoが多いようですが、en zorgoの用例もあります。

行為よりの意味では「世話、配慮」です。bezoni [postuli] zorgon「配慮を必要とする[要求する]」などとして使われます。

zorgiから派生した形容詞zorgaの頻度はそれほど高くありません。その中で、zorga vizaĝo「心配げな顔」、zorga dommastrino「気遣いのできる主婦」のような語義での使い方は、実例がないわけではないものの、あまり目立ちません。このような意味を伝えるにはzorgemaの方が使われます。zorgaは、zorga preparo, kontrolo, analizo, esploro, laboroのように行為名詞を修飾して「細心の、入念な」と訳せる場合が大半です。

それに比べると副詞zorgeはもっと広く使われます。ただ、「心配」の意味が強く残るzorge flegi, gardiのような例は、やはりそれほど目立ちません。konservi, kaŝiはそれに近いでしょうか。

副詞zorgeは対象に細かな注意を払うというところから、zorge atenti, aŭskulti, rigardiといったつながりができ、また、distingi, ekzameni, esplori, elekti, eviti, konsideri, kontroli, legi, observi, studi, pripensiなど、知的活動や判断を意味する動詞ともつながってきます。「注意深く、入念に」などに当たることになります。

また、準備や仕上げを意味する動詞aranĝi, prepari, ellabori, fariなどとのむすびつきも自然に響きます。さらに、balai, brosi, kombi, lavi, raziなど身づくろいや清掃に関する動詞を修飾するのもzorgeはぴったりです。

前置詞priを接頭辞としてzorgiにつけて、1語のprizorgiにすると他動詞になります。基本的な意味は元のzorgi pri ...とあまり違わないのですが、1語になったということは、観念的にも緊密になっていて、つまり意味が特定化しがちです。prizorgiは、単に心理面で心配するだけでなく、配慮を行動に表れた「面倒を見る」の意味で使われます。なお、目的語は人に限られるわけではありません。

senzorgeは「他への配慮なしに」というところから「無頓着に、気楽に」の意味になります。senzorge vivi, dormiといったつながりが代表的です。senzorgaでは、senzorga maniero, vivo, vizaĝo, ridetoが比較的目立ちます。


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