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『エスペラント』(La Revuo Orienta) 第78巻(2010)12月号, pp.12-13. 掲載

de vorto al vorto (16) riĉa

後藤 斉


形容詞riĉaの『エス日』での第1義は「金持ちの, 裕福な」です。人やその集団の経済的な豊かさを形容して使われたriĉa bankiero「金持ちの銀行家」、kreski en riĉa familio「裕福な家庭に育つ」といった例文は難しくないでしょう。また、この語義をもとにした派生語riĉulo「金持ち」もわかりやすいはずです。

ただ、このように経済的な豊かさを表すriĉaが修飾するのは人に限られるわけではありません。riĉa lando, regiono, urbo, kvartaloのように地域の場合、riĉa entrepreno, futbalkluboなど組織の場合もあり、riĉa tavolo「富裕層」やriĉa vivo, ekonomioなどのつながりもできます。

お金がかかっていることを示唆する「豪華な, ぜいたくな」の第2義は、これと直接のつながりが感じられるでしょう。riĉa ĉambro, salono、meblaroなど部屋のつくりや調度品、ŝtofo, veluro, vestoといった服飾品について使うことが多いようです。ただ、この使い方は、類義語luksaと重なるところが多く、またluksaの方が使いやすいかもしれません。

『エス日』には第2義に「豊富な」という訳語も挙げましたが、ここではriĉa heredaĵo「豊富な遺産」やriĉa trezoroのように、お金に換算して高額になる場合を念頭においています。

riĉa rikolto「豊かな収穫」は、確かに富の源泉であって、経済的な豊かさとのつながりが見てとれます。しかし、収穫物の山を前にして、その量の多さに注目しているとも言えます。riĉa bufedo, festenoでも、お金がかかっているさまから豪華さ,さらに品数の多さも表しているようです。つまり、riĉaの語義は量の豊富さないしは多様さへと広がっていくのです。riĉa bibliotekoは、文脈によっては「財政豊かな図書館」かもしれませんが、まずは「蔵書の豊富な図書館」の読みの方を採りたいところです。

riĉa programo de la kongreso「大会の豊富なプログラム」では、もはや経済的な豊かさは関係なくなっています。ただ、単に項目の数の多さだけでなく、充実していて人に満足感を与えるという含みを伴って、内容が豊富であるさまを表しています。なお、全体をとらえたprogramoと個々の項目のprogrameroを単語として区別する慣用ですので、riĉa programoという言い方とならんで、riĉaj programerojという言い方になります。

liveri riĉajn informojn「豊富な情報を提供する」、uzi riĉajn rimedojn「豊富な手段を使う」などでも、レパートリーが充実していることが伝わります。

havi riĉan sperton kiel ĵurnalisto「ジャーナリストとして豊富な経験を有する」では、多くの経験を重ねてジャーナリストとして成長したという含みでしょうか。なお、これまでの経験を全体としてとらえれば単数のriĉan spertonですが、個々の出来事を個別に見てriĉajn spertojnと複数で言うこともできます。

riĉa historio, kulturoでは、必ずしも個々の具体的な項目を念頭に置いている訳ではないかもしれませんが、全体としての多彩さが伝わります。riĉa lingvaĵo, esprimo, lingvo, beletro, literaturo, poezia mondoなど、言語表現に関わる場合にもよく使われます。

時としてriĉaの後に集合を意味する名詞を置いてから具体的な物の名前を続けることがあります。riĉa kolekto de pentraĵoj「絵画の豊富なコレクション」など。riĉa gamo de verkoj, riĉa sortimento de KD-ojでは、内容の幅広さが強調されます。riĉa librokolektoといった合成語にしてしまうこともあります。

何が豊富なのか明示したいときには、前置詞jeで導きます。regiono riĉa je riveroj「河川に富んだ地域」、persono riĉa je spertoj「経験豊富な人」などです。

豊富さを意味するabunda「おびただしい」、ampleksa「包括的な」、多様さを意味するbunta「色とりどりの、多彩な」、multfaceta「多面的な、多彩な」などは類義語として働くことがありますが、riĉaが最も基本的な語で、多くの場合に気軽に使えます。abunda kaj riĉa enhavo, riĉa kaj bunta aranĝoのように、類義語を重ねることもあります。

副詞riĉeは、もちろんvivi riĉeのような経済的豊かさを表す意味で使うことができます。しかし、それよりずっと目立つのは「豊富に」の意味での使い方です。riĉe ilustrita gazeto「イラストの豊富な雑誌」、riĉe dokumentita verko「ふんだんな資料に裏付けられた著述」、riĉe ekipita presejo「設備の充実した印刷所」、riĉe floranta rozo「花をいっぱいにつけたバラ」などです。また、「豪華に」の意味でもよく使われています。riĉe brodita kuseno「豪華な刺繍のクッション」、riĉe ornamita ŝipo「豪華に飾りつけられた船」、riĉe presita broŝuro「印刷の豪華な冊子」などです。これらの場合、例に挙げたように、分詞形容詞で表される状態を修飾することが特に多いようです。

反対語malriĉaは主に経済的貧しさの語義で使われているようです。lando malriĉa je akvo「水の乏しい土地」のような使い方は十分可能で、実例もありますが、それほど広く使われているとは言えません。副詞malriĉeも、実例はvivi malriĉeとmalriĉe vestita「貧しい身なりの」に集中しているようです。

派生動詞riĉigi, riĉiĝiにも、riĉigi la vivon de la popoloのような経済的な語義での使い方のほか、派生語義での使い方もあります。riĉigi la lingvon「言語を豊かにする」、riĉigi anime la partoprenantojn「参加者を精神的に豊かにする」、La esperanta vortoprovizo riĉiĝis.「エスペラントの語彙は豊かになった」、La ekskursoj riĉigis la programon.「遠足が加わってプログラムは豊かになった」など。

riĉa は多くの合成語を作りますが、特に名詞的要素と一緒に「〜の豊富な,〜に富んだ」の意味の形容詞のもとになります。enhavoriĉa「内容豊かな」、kolorriĉa「彩り豊かな」、informriĉa「情報の豊かな」、nutroriĉa「栄養豊富な」などが代表的なものですが、他にも、一つ一つの頻度はそれほど高くないのですが、多様な合成語が可能です。ombroriĉa, naftoriĉa, instruriĉa, vitaminriĉa, proteinriĉa, herboriĉa, akvoriĉa, sukoriĉa, esprimriĉa, vortriĉa, foliriĉa, fruktoriĉa, branĉoriĉa, montoriĉa, spertoriĉaなど、数多くのものがあります。


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