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『エスペラント』(La Revuo Orienta) 第79巻(2011)4月号, pp.11-12. 掲載

de vorto al vorto (20) okazi

後藤 斉


okaziについて、『エス日』は基本義を「ある事態が自発的に生起する」とした上で、「〔事件が〕起きる, 〔行事などが〕おこなわれる, 催される」という語義を与えています。偶発的な事件にせよ準備された行事にせよ、あるいは地震のような自然現象であっても、その事象が「生起する」ことを言うのに広く使える動詞です。

『エス日』では動詞型として≪V≫と表示されていて、主語と動詞だけで完結できることを示しています。ただ、実際には、具体的な時や場所が情報として重要であることはよくあり、La kongreso okazis en julio en Tokio.のように、いつ、どこでを明示するための補足語が伴うことが多いのです。

なお、ある時に注目した上で、その時に何が起きたかを伝えたい際にはHieraŭ okazis grava akcidento.のように、時の表現を文頭に、主語を文末に置くことがよくあります。これは、エスペラントとしてごく自然な語順です。ここで、主語に冠詞がつくかどうかは、語順の違いとしばしば連動しています。

ほかに、頻度や様態を表わす語句がつくこともあります。(mal)ofte, kutime, subite, hazarde, finfine, laŭplaneなどです。主語である名詞の方にneatendita, senprecedencaなどの形容詞を添えることも表現としてありえます。予想や計画と対比して、実際に起きたかどうかが重要であるときには、efektive, fakte, vereといった副詞でそれを強調することになります。

主語としてはkongreso, ceremonioのような行事やakcidento, eksplodo, bataloなどの事件事故が現れることが最も典型的です。使う機会も多いことでしょう。interparolo、vizito, elektado「選挙」, problemo「問題」, malfeliĉo「不幸」なども、それを出来事と捉えれば、その生起をokaziで表すことがあります。La diskutado okazis en malgrandaj grupoj.「議論は小グループに分かれて行われた」などは、ちょっと思い浮かびにくい使い方かもしれません。

名詞で表現しにくい事象の場合は、ke節で表すことになります。Ofte okazas, ke la elspezo superas la enspezon.「支出が収入を上回ることがたびたびある」など。このようなke節も主語と考えられます。

事象が特に特定の人(あるいは団体など)に対して影響がある場合は、Kio okazis al vi?やOkazis al mi, ke iu nekonato alparolis min.「知らない人が話しかけてくるということがあった」のように前置詞alで表します。

事態を漠然と捉えている場合には、okaziを無主語で使うこともあります。Okazis, kiel mi deziris.「私の望んだとおりに起きた」。Okazis tiel [same / alie / inverse].「そのように[同様に/違って/逆に]起きた」といった表現が見られます。また、kiel ofte okazas en la vivo「人生でよくあるように」など、副詞節の中でも使いやすいでしょう。

名詞okazoは「機会, 場合; 事例, ケース」の意味で使われます。似た単語にkazoがあって、「格、訴訟事件、症例」など、言語、法律、医学の分野の専門用語として使うのが正用法とされています。望ましくないものの、okazoと重なる「事例、ケース」の意味での使用例も実際にはかなり見られます。

「機会、場合」の意味では、その適切さを表現したいことがよくあります。bona okazoでよいのですが、oportuna, taŭga, favoraなどの形容詞もよく使われます。malofta, unikaでも「絶好の機会」であることが伝わってきます。

いろいろな他動詞の目的語として使えますが、特に、serĉi, atendi, trovi, kapti, trafi, havi, doni, perdi, preterlasi, maltrafiといった動詞とつながりやすいことは特徴的です。Mi ĉiam serĉis okazon por malkaŝi la sekreton.「私は秘密を打ち明ける機会をずっと探していた」、Finfine mi trovis okazon demandi lin.「やっと彼に質問する機会を手に入れた」、Ni havos la okazon viziti ŝin.「彼女を訪ねる機会があるだろう」などです。なお、Okazon kaptu ĉe l' kapo, ĉar la vosto estas glita.ということわざがあり、Kaptu la okazon.「機会を逃すな」も決まり文句としてよく使われます。

また、uzi, utiligi, profitiもokazoとつながりやすい動詞です。Mi utiligis la donitan okazon kiel eble plej bone.「与えられた機会をできるだけうまく利用した」などです。Mi profitas la okazon por danki vin.「この機会を利用してお礼申し上げます」、Uzante la okazon, mi kore gratulas vin.「この機会を使ってお祝い申し上げます」といった表現も半ば決まり文句になっています。

形容詞okazaは『エス日』の訳語「偶然の」よりもう少し広く、「偶発的な;時折の」あたりの意味で使われているようです。ザメンホフにも用例はあるものの、それほど頻度が高くはありません。okazaj preterpasantoj「たまたま通りかかった人たち」、la laboro kaj okazaj babiloj「仕事と時折の雑談」がわかりやすい使用例でしょうか。

副詞okazeはそれに対応して「たまたま;時折」の意味で使われます。しかし、okazeの大部分は実はokaze de ...「〜に際して」として使われています。okaze de la deka datreveno「十周年記念日に際して」など、大きな行事や節目となる出来事について使われるのが普通です。

派生語okazigiは「<行事を>開催する」の意味で日常的に接することも多いはずです。ただ、あまり目立ちませんが、okazigi morton, problemonなど「<事件を>引きおこす」の意味もあることにも注意しましょう。

okazoからさらに一群の合成語が作られます。指示詞などと作られる副詞で、ĉiuokaze「すべての場合に」、tiuokaze「その場合に」、ĉi-okaze「この機会に」、aliokaze「別の機会に」などが頻度の高いものです。

このうち、ĉiuokazeはもともと「複数の選択肢のどの場合でも」ですが、「場合」の観念が薄くなって、「いずれにせよ、どっちみち」ほどの意味で会話でよく使われます: Ĉiuokaze mi devas labori.つきつめて考えるのをあきらめた感じが表されていて、接続詞sedや間投詞nuを前に置くとそれがさらに強められます。

合成語としては、ほかにesceptokaze「例外的な場合に」、ekstremokaze「極端な場合に」もあります。


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