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『エスペラント』(La Revuo Orienta) 第79巻(2011)6月号, pp.11-12. 掲載

de vorto al vorto (21) pluvo

後藤 斉


pluvoは「雨、降雨」で、学習の早い段階で覚えたはずの単語です。天候は会話で話題にすることも多く、日常的にも使う機会がよくあることでしょう。

念のためですが、pluvoが意味するのは、一つ一つの雨滴(pluvero, pluvguto)ではなく、降り落ちる水の総体ないしは気象現象としての雨です。降ってから地面などにたまったり流れたりしているものもpluvoで表すことができますが、より明確にpluvakvo「雨水」と言うこともあります。

pluvoを「一回の降雨、一降りの雨」と捉えれば、その数回分として複数形にすることもありえます。一日の内に降ったりやんだりする雨(periodaj pluvoj)、比較的長い期間の内に何度も降る雨(printempaj pluvoj)、何か所かで降る雨(Tutlande estas nubece kun lokaj pluvoj.「全国的に曇りがちで、所により雨」)などの場合には、複数形で言うのが適当だと感じられます。

もっとも、雨というものは、物体のように一つ一つがはっきり分かれていて、明瞭に一つ二つ三つと数えられるわけではありません。全体をまとめて捉えることも十分に可能であり、むしろ自然なのかもしれません。ですから、単数複数の区別にあまりこだわるまでもないようです。ザメンホフのProverbaroにはPluvo en Aprilo -- por la tero utilo.「4月の雨は地への恵み」がありますが、そのような捉え方に基づくのでしょう。oftaj pluvojもofta pluvoも、実例にはどちらも見られます。

promeni en (la) pluvo「雨の中を散歩する」とも、ほぼ同義でpromeni sub (la) pluvoとも言うことができます。これは、どちらが正しいというものではなく、動作と雨との関係をどのように捉えて相手に伝えたいか、によります。雨は人を包むように降りますから、「雨の中」と捉えて前置詞enを使うことができますし、あるいは空から降り注いでくる雨の下に人がいると捉えれば、subで表すことになります。雨を動作に対する障害と見るならば、malgraŭ (la) pluvoです。「雨を貫いて」と捉えるのであれば、tra (la) pluvoでいいのです。ただし、traはなんらかの動きを予想させますので、stari tra la pluvoは意味的に整合しません。また、雨を時間の流れの中での出来事と捉えれば前置詞dumも使えますが、resti hejme dum la pluvoのように、雨に当たらない状況で使いやすいでしょう。

雨のいろいろな様態は、接尾辞によるpluveto, pluvegoのほかには、修飾する形容詞で表現しわけられます。実例では、雨の強さ、激しさを指す形容詞が目立ちます。forta「強い」、torenta「急流のような」、granda「大きい」、intensa「激しい」、terura「恐ろしい」、densa「密な」、ŝtorma「嵐の」などです。すでに強調されているpluvegoを、eksterordinara「並外れた」、furioza「荒れ狂う」、diluva「ノアの洪水のような」などの形容詞を添えることで、一層強めることもあります。plumba pluvoは直訳すれば「鉛の雨」ですが、暗灰色のどんよりした様子を表わしています。

一方、穏やかな雨を表わす表現はそれほど目立っては現れませんが、milda「穏やかな」、modera「ほどほどの」、kvieta「静かな」、maldensa「希薄な」、nebula「霧のような」、subtila「微細な」、tenera「 和やかな」などの形容詞が使われます。pluvetoをさらにdelikataなどで修飾することもあります。

longa, daŭra, kontinua, senĉesa, senfinaなどを添えて、時間的な長さを強調することもあります。逆に短さを表わすのはもちろんmallongaですが、pasemaj pluvojという言い方がポーランド放送の天気予報ではよく聞かれました。

雨が降ることを表わす動詞はfaliが最も普通です。持続を強調する接尾辞をつけたfaladiも見られます。激しさを同時に表わしてtorenti, furioziを使った例もあります。La pluvo frapis[batis] la fenestron.のように「打ちつける」ことを表わすこともよくありますが、この場合は打ち付ける対象も一緒に表現することになります。

少し凝った表現としてはverŝiĝi「降り注ぐ」があります。さらに文学的な表現になってしまいますが、音を表現する動詞plaŭdi「ばしゃと音を立てる」、susuri「さらさらと音を立てる」、tamburi「〔太鼓のように〕打ち鳴らす」などで雨の降り方を表わすことも可能です。Ekstere la pluvo susuris.は「外では雨がしとしと降っていた」に近いでしょうか。

実際の場面では、pluvoから品詞語尾を取り替えて作った動詞pluviを使うことの方が多いでしょう。Pluvo pluvas.という言い方も間違いというわけではありませんが、普通は重複した表現として避けたくなるでしょう。この動詞は無主語で使うのが普通であって、無主語文で使う動詞の代表格として学習したはずです。

ザメンホフにはPluvoという詩があり、Pluvas kaj pluvas kaj pluvas kaj pluvas / senĉese, senfine, senhalte, /と始まります。この引用にあるように雨の降り方の様態を表す副詞を添えることもよくありますが、上に挙げたようなpluvoを修飾する形容詞と比較的きれいに対応しているようです。pluvi forte, intense, torenteなどです。

接尾辞によるpluveti, pluvegiもよく使います。ポーランド放送の天気予報では独特なetpluviがよく聞かれたのですが、何か特別の意図があったのでしょうか。

雨は身近な現象ですので、kiel [kvazaŭ] pluvo「雨のように」と比喩としても働きます。steloj falantaj kiel pluvoのように「大量に降り注ぐ」イメージを生き生きと表現する際に使えます。kiel[kvazaŭ]を使わない比喩もあります。pluvo da[de] kugloj「雨あられと降り注ぐ弾丸」などです。

動詞pluviにも同様の使い方があります。Ŝtonoj pluvis sur lin.「石が彼の上に降り注いだ」などです。Diversaj demandoj pluvis sur ŝin.「さまざまな質問が彼女に降り注いだ」のように具体的な物でない場合にも使えます。当然ながら、この使い方では、無主語文ではありません。

pluvoが後部要素になる合成語には、glacipluvo「氷雨」、neĝpluvo「みぞれ」などがあります。leterpluvo「手紙の雨」、protestopluvo「抗議の雨」など、比喩的な使い方からの合成語もありますが、これらは今のところはあまり熟してはおらず、臨時的なものでしょう。


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