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『エスペラント』(La Revuo Orienta) 第79巻(2011)7月号, pp.23-24. 掲載

de vorto al vorto (22) peza

後藤 斉


形容詞pezaについて、『エス日』は、まず「重い」という概括的な訳語を与えた上で、語義をさらに「重量が大きい」、「強い, 激しい」、「重苦しい」、「耐え難い, つらい, 厳しい」、「消化に悪い, 胃にもたれる」の五つに細分しています。これらの語義の間のつながりは、それほど無理なく感じ取れるでしょうが、日本語の訳語から理解できる範囲で語義が尽くされているとも言えません。もう少し詳しく見てみましょう。

この語の語義として最も具体的なのは、手に持ったり、体で支えたりするときに重さを感じる物体の形容で、peza valizo, ŝtonoなどの場合です。peza kurteno, pordo, kamionoでは、実際に動かして重さを感じることもできるでしょうが、大きさや厚さ、しない方、きしみ方などから視覚的に重さを捉えている場合もありそうです。

peza konstruaĵo, muroになると、数字で表せる実際の重量だけではなく、見る人に与える重量感という心理的な側面も大きいようです。peza hararanĝoも、本人にとって重く感じられるかどうかより、周りから見たボリューム感が念頭にありそうです。さらに、前者では「どっしりした、安定した」といったプラス評価、後者では「うっとうしい」というマイナス評価も加わるでしょうか。

peza ŝarĝoは文字どおりには「重い積荷」ですが、名詞ŝarĝoは実際の積荷の意味から転じて「〔肉体的・精神的・経済的〕重荷, 負担」という、より抽象的な語義で使われることもあります。この場合にもその負担の大きさ、つまり、肉体的なつらさ、精神的な圧迫感、経済的な出費の多さなどをpezaで形容することができます。Geknaboj havis tre pezan ŝarĝon de la lernado.「子どもたちには勉強の大きな負担があった」などです。

pezaが重量とは無関係の意味をもつ名詞を修飾しているとき、この「負担の大きい」という語義がもとになってことが多いようです。peza labor(eg)o, devo, tasko, respondecoなどの労働に関係する名詞について肉体的なつらさやそれに伴う心理的な圧迫感を強調するのです。peza vivo, jaro, tago, tempoなどの時間を表わす表現でも同様の働きをします。また、peza elspezo, investo, imposto, kostoなど出費に関する名詞を修飾するときには、その出費の多さを表わします。当然、これらの多くの場合にはマイナス評価が伴っています。

jugo「〔牛につける〕くびき」も実物を日常生活で目にすることはほとんどありませんが、「拘束, 束縛, 圧制」という転義でならばこの単語を目にする機会もありそうです。家畜や奴隷への強い連想を残していて、vivi sub la jugo de koloniismo「植民地主義の圧政の下に暮らす」などと使われます。くびきという語義がもとにあるため、厳しさを形容するにはpezaがよく使われます。liberigi sin de la peza jugo de komercismo「商業主義の厳しい束縛から自由になる」など。

pezaはもっと直接に心理状態を意味する名詞を修飾することもあります。peza koro, aflikto, apatio, atmosfero, funebro, humoro, sentoなどです。心理的な重圧、つまり重苦しさ、陰鬱さなどが表わされます。peza preĝo. penso, demando, silento, spiradoも、これらの名詞で表わされる行為に伴って人が感じる重苦しさを表わしています。pezaj larmojも、涙の重量を話題にしているというより、重苦しい感情から出てくる涙のことを指すのが普通でしょう。

pezaは音を形容することもあります。peza bruado, sono, muziko, basa voĉoなどです。「低い音」ということになりますが、多くの場合、音の物理的な性質だけではなく、それに伴う心理的な重苦しさが伝わるでしょう。

ザメンホフ訳の「みにくいアヒルの子」には、La nuboj estis pezaj de hajlo kaj neĝo.という一節があります。あられや雪が今にも落ちてきそうな空の光景です。ただ、ここでは気象の描写と言うより、その前後の寒さやカラスの描写とあいまっての陰鬱さを読み取るのがいいでしょう。peza veteroも、天気そのものの描写と言うより、そこから人が感じる重苦しさを伝えます。

peza martelo「重いハンマー」は、打ちおろすときの打撃も強いものです。ここから、衝撃の強さを形容するpeza bato, frapo, premoなどの表現につながります。peza ondoは「激しい波」です。

peza doloro, malsanoやpeza eraro, punoも人に対して与える影響の大きさでつながっています。人を圧倒し、大きな損害を与えるような場合に使いやすいでしょう。他者を左右し、拘束するという点で、peza influo, ĵuroも似ています。

重いものは敏速に移動できないことから、緩慢な動作を形容するpezaj paŝoj, piedojやpeza iro, marŝado, trafiko, remadoというつながりもできます。表面的にはmalrapida「遅い, ゆっくりした」の意味に近くなっていますが、pezaでは移動に伴うつらさや気乗りしない様子も表わされます。

peza sistemo, komplikecoでは、移動そのものではありませんが、組織体の動きの効率の悪いさまなどが表わされています。こみいっていて、分かりにくい言語表現を形容するpeza esprimo, frazo, stiloもこれに近いでしょう。

副詞pezeの使い方はある程度まで形容詞pezaに対応しています。peze apogi, fali, pendi, premi, marteliなど重量に関して使われている場合が最も具体的な使い方です。ほかに、peze labori, traviviなどではつらさ、peze spiri, marŝadiなどでは重苦しさ、peze impresiでは影響の大きさが表わされています。

PIVは動詞peziを主見出し語に立てて、pezaをその副見出しとして扱っていますが、実例ではpeziはpezaほど頻度が高くはありません。peziの多くの実例は、La bebo pezas tri kilogramojn.のように重さを具体的に伝える使い方です。

負担や影響の大きさを伝えることもあり、La akcidento pezas sur la vivo de la urbanoj.は「事故は市民の生活に大きな影を投げかけている」に相当します。Lia argumento plej pezis, kaj ni decidis tiel.「彼の議論は一番の重みがあり、その通りに決めた」では、さらに進んで重要性を示唆しているようですが、形容詞pezaではこれに対応する使い方はあまり目立たないようです。


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