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『エスペラント』(La Revuo Orienta) 第79巻(2011)10月号, pp.9-10. 掲載

de vorto al vorto (23) plori

後藤 斉


動詞ploriの語義として、『エス日』は単に「〔涙を流して〕泣く」と記載するだけです。実際、これ自体は特に難しい単語ではなく、この訳語からだけでもその使い方はおおむね予想できます。ただ、泣くということには、悲しみ、喜び、痛みといった本人だけが感じる感情や感覚の側面と涙や声、表情、身振りなどの外観に現れる側面とがあり、そしてそれを引き起こす要因も関係しています。これらを含めて適切に伝えるためには、この単語の周辺を詳しく見ておくのがいいでしょう。

一般的に激しく泣くさまは、増大接尾辞によるploregiで表すことができ、副詞を使うならplori multe, forteが無難でしょう。泣くときに声を上げるさまならplori laŭte, laŭtvoĉeと、涙を激しく流すさまならplori torenteなどと表現できます。plori singulte「しゃくり上げて」, spasme「ひくひくと」など体の動きを描写することもできます。どうにも手がつけられないさまならば、plori senbride, sovaĝe, nehaltigebleなどでしょう。plori senĉese, daŭre, longe, senhalteのように、長く持続するさまを表わすこともよくあります。

逆に激しくない泣きかたは、声を上げないことを表すplori mallaŭte, kviete, silenteなどです。plori kaŝeもそれに近いでしょう。指小接尾辞によるploretiもありますが、実例はさほど多くはありません。

外観に現れない心理面をさまざまに描写したplori amare, maldolĉe, malespere, (mal)ĝoje, korŝire「心が引き裂かれるように」なども比較的よく使われます。

1語の副詞によってでなく、もう少し複雑に表現することもあります。例えば、plori kiel[kvazaŭ] bebo, (malgranda) infano, knaboなど、赤ん坊や子どもを引き合いに出して、激しく泣くさまを印象づけるのです。

大声を上げるさまはplori per laŭta voĉoと言うこともできます。顔を手で覆って泣くさまは、例えばplori kun la vizaĝo en la manojと表現できますが、ほかの言い方も可能でしょう。plori kvazaŭ la koro rompiĝusやplori tiel ke la koro povus kreviなど、心が張り裂けそうなさまをさまざまに表現できます。

plori verŝante larmojn「涙を流して泣く」などのように、分詞副詞による修飾ももちろん可能です。一方で、plori kaj krii「泣き叫ぶ」、tremi kaj plori「身を震わせてなく」のように、意味の上で関連した別の動詞をkajで等位接続することでもさまざまな表現効果が得られ、言いやすいためか、むしろよく使われています。関連した動詞の一つĝemiは、悲しみや痛みから低い声を出すところに意味の中心があり、lamentiでは悲痛の感情が主に伝えられます。

なお、ploriは基本的に自動詞です。plori sian infanonのように他動詞として使った実例もありますが、特殊な例と見なすのがよく、あまりお勧めできません。泣く対象を表すには前置詞priを接頭辞としてつけて作った他動詞priploriを使うのがいいでしょう。

ただし、特殊な構文としてplori larmojnとすることがあります。このlarmojnにはなんらかの修飾語をつけて、表現に彩りを添えるのが普通です。plori amarajn larmojn, larmojn de malĝojo, larmojn de malesperoなどがその例で、plori torentojn da larmoj, multe da varmegaj larmojといった使い方もできます。この構文を避けたいのであれば、plori per sangaj larmojのように前置詞perを使うのがいいでしょう。

名詞larmoから作られる動詞larmi「〔目に〕涙をためる; 涙を流す」もploriの類義語になり、似た使い方ができますし、plori kaj larmiと重ねて言うこともできます。ただ、larmiの意味の中心は涙を流すところにありますから、笑いすぎたり、煙が目にしみたりして涙が出る場合も含まれます。また、主語になるのはMi larmis pro ŝia kompatinda sorto.「私は彼女の可哀そうな運命のため涙した」のように人の場合が多いのですが、Ŝiaj okuloj larmis.「彼女の目は涙を流していた」のように、目が主語になることもあります。

泣くことの理由を明示したいことはよくあります。その理由が複雑で主語と動詞をそなえた節になるときは、La infano ploras, ĉar ĝi volas manĝi.のように接続詞ĉarで導きます。理由が名詞で表現できるのであれば、前置詞proを使うのがよいでしょう。plori pro perdo, mizeroのように原因となる出来事や状況、plori pro mortigitojのように要因となっている人など、plori pro ĝojoのように泣く人の感情など、さまざまの種類の理由を導くことができます。泣く理由を尋ねるにはKial [Pro kio] vi ploras?などです。

pro以外の前置詞でも理由を表すことができます。比較的広く使えるのはpriで、本来の意味はもちろん「~について、関して」で、泣く対象を表現するのですが、plori pri morto, mortintoでは結局のところ理由が表されているとも考えられます。感情など内在的な原因では、plori de ĝojoのように前置詞deを使うこともあります。前置詞ĉeは近接性を表すのが本来的な使い方ですが、plori ĉe la penso, ke ...「~と思って泣く」、plori ĉe la aŭskultado de la historio「その物語を聞いて泣く」などでは、やはり原因が表されています。

ploriから作る名詞plor(ad)o「泣くこと」もよく使われます。もちろん様々な使い方ができますが、plendi kun ploro「泣きながら不満を言う」のように、動詞的な性質がかなり感じられることもよくあります。この場合、ploranteと分詞にするのとあまり違いはありませんが、前後関係でつながりのよい方を使えばいいでしょう。

形容詞ploraや副詞ploreも可能です。kun plora voĉo, tono「泣き声で」、plore rifuzi「泣いて拒む」など、使える場面はありそうです。plore peti「泣いてお願いする」もそうですが、これはplorpetiと1語にしてしまうこともできます。このような合成語には、plorĝemi, plorsingulti, plorkrii, plorplendiなどもあります。

ploriからの派生語としては、plorinda「悲しむべき, 嘆かわしい」とplorema「すぐに泣く, 涙もろい」も比較的よく使われます。このうちplorindaは、plorinda situacio, stato「嘆かわしい状況」,plorinde nesufiĉa「嘆かわしいほど不十分な」などと使われます。Estas plorinde ke ...「~とは嘆かわしい」という構文も可能です。


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