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『エスペラント』(La Revuo Orienta) 第80巻(2012)2月号, pp.9-10. 掲載

de vorto al vorto (26) nepre

後藤 斉


『エス日』やPIVなど、語根主義を採るエスペラントの辞書では、語根に代表的な品詞語尾をつけたものを主見出し語として扱っています。大部分は名詞、形容詞、動詞になり、-eの語尾がつく副詞形で主見出し語になる語はごく少数です。nepreはその数少ない一例ということになります。エスペラント・アカデミー選定のBaza Radikaro Oficialaのように形容詞nepraの形を採用する語彙表もありますが、nepraより副詞nepreの方が実際の使用頻度は圧倒的に高いのです。

『エス日』では「必ず, どうしても, きっと, ぜひ, 必然的に」と訳語が列挙されていますが、無造作に羅列しただけのようにも感じられます。「強い確実性ないし必然性を表す」と説明することもできますが、使い方を理解するためには例文を見る方がいいでしょう。

『エス日』の例文のLa kunveno nepre okazos.「会合は必ず開かれるだろう」を例にとると、この文では会合が開かれることの確実性ないし必然性を強く表現しています。客観的状況から言える確実さを表していることが多いのですが、多少なりとも話し手の判断を含み、主観的な決めつけも含まれるかもしれません。『エス日』のもう一つの例文Mi nepre venos.「私はきっと来ます」では、「万難を排して」の含みで周囲の状況も念頭に置いているのですが、話し手自身の意志にも関わっています。

この使い方ではcerteと意味的に重なるところがあります。上の例文はLa kunveno certe okazos.のように言い換えても実質的にはあまり変わりません。ただ、certeでは人が持つ確信の方に、nepreでは状況からくる必然性の方にそれぞれ力点があります。

certa [certe]を強めるためにnepreを重ねて使うこともあります。nepre certa faktoやMi rekonas lin nepre certe.などです。ただし、certeではEstas certe, ke ...という構文がよく使われているのに対して、Estas nepre, ke ...という構文で使われることはほとんどありません。nepreは大抵の場合に他の動詞や形容詞、副詞を修飾するために使われています。

いくつか例文を追加すれば、nepre utila libro「必ず役に立つ本」、Mi scias[sciis], ke vi nepre havas monon.「君はお金を持っているはずだと分かっている[いた]」、Ŝi nepre vizitis nin hieraŭ.「彼女は昨日訪ねてきてくれたに違いない」、Se li agas tiel, li nepre malsukcesos.「あのように行動していたら、彼は必ず失敗する」などです。Vojaĝantoj al ĉi tiu urbo nepre vizitas tiun templon.「この町に来る旅行者は必ずあの寺を訪れる」では、「多数の事例のうち例外なしに」の含みがでてきます。

ne nepreとして、nepreを否定することもよくあります。必然性を否定して、「必ずしも〜でない」の意味になります。La redakcio ne nepre konsentas kun la opinioj de la aŭtoroj.「編集部は執筆者の見解に必ずしも同意するものではない」、Alta prezo ne nepre signifas altan kvaliton.「値段が高いからといって質が高いとは限らない」、profito ne nepre mona「必ずしも金銭的なものとは限らない利益」などです。

逆にnepre neとなれば、nepreが否定を修飾して、否定を確実な、必然的なものとして述べる、つまり否定を強めることになります。Trovi la ĝustan respondon nepre ne estas facile.「正解を見つけるのは決して容易でない」など。また、疑問文に対してNepre ne.と答えれば、「絶対に違う[だめ]」と強く否定したことになります。

上の例文からは、nepreが比較的広い範囲の動詞とともに使え、時制についても過去、現在、未来のいずれでも使えることが見てとれるでしょう。一方、nepreが、その意味からして、特定の語句や文法形式と結びつくような例も観察されます。

『エス日』のもう一つの例文Vi devas nepre obei la ordonon.「あなたは必ず命令に服さなければならない」が典型ですが、nepreは義務を意味する動詞deviとつながりやすいのです。なお、Vi nepre devas ...の語順も可能で、意味はほとんど違いありません。

Nepre necesas daŭrigi la laboron.「仕事を継続することがぜひ必要だ」のように、動詞necesiもnepreと密接につながります。nepre necesa antaŭkondiĉo「ぜひとも必要な前提条件」、Pliaj informoj estas nepre necesaj.「一層の情報がぜひ必要だ」、Estas nepre necese, ke li venu tuj.「彼が直ちに来ることがぜひ必要だ」などでも同様です。

ほかに、bezoni, deziri, voli, intenci, postuli, promesiやrifuzi, malpermesiなど、必要や要求、意志を意味するする動詞もnepreとの結びつきが認められます。Ĉu vi nepre deziras scii?「どうしても知りたいのか」、Estas nepre malpermesite foti.「写真撮影は厳禁だ」などです。

また、意志法の動詞もnepreとよく結びつきます。Nepre kunportu la gvidlibron.「必ずガイドブックを持参せよ」、Nepre estu singarda.「絶対に用心しろ」、Ni nepre ne forgesu lin.「彼を決して忘れまい」など、命令や意志の強さを表すのにnepreはぴったりなのです。

動詞に接尾辞-ind-, -end-をつけた派生語も同様で、nepre leginda libro, nepre vizitinda muzeo, nepre havenda vidpunkto, nepre evitenda eraroなど、さまざまな表現が使えます。Nepre menciindas, ke ...「どうしても一言述べるに値することには、〜」といった使い方もできます。

形容詞nepraは、先に述べたようにnepreに比べれば頻度は低いのですが、決してまれという訳ではありません。nepra devo, neceso, bezonoなど、副詞nepreと平行した使い方も目立ちます。nepra (antaŭ)kondiĉo, prioritatoもそこから類推できるでしょう。nepra reformoは「必ずしなければならない改革」のように補うと分かりやすいでしょうか。

動詞nepriも好んで使う人がいるようです。Nepras kunlaboro inter ili.「彼らの協力関係が必須だ」、Nepras trovi taŭgan rimedon.「適切な方策を見つけることがぜひ必要だ」、Nepras, ke ni unue solvu la problemon.「まず問題を解決することがぜひ必要だ」など。

派生語としては、nepreco「必然性」やnepraĵo「必須の物」などが使われることがあります。


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