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『エスペラント』(La Revuo Orienta) 第80巻(2012)4月号, pp.11-12. 掲載

de vorto al vorto (28) kreski

後藤 斉


『エス日』はkreskiの基本義を「生き物が育つ」とした上で、第1義の中でまず「〔動植物・人やそれらの器官が〕成長する, 発育する; 育つ, 伸びる, 発達する」と説明しています。日本語の訳語がたくさん並んでしまいましたが、例文「La pizoj kreskis pli kaj pli alten. 豆が上へ上へと伸びた」や「Kreskas dentoj[haroj]. 歯[髪]が生えてくる」も合わせて、語義を理解するのは難しくないはずです。

この語義では、子どもや木が主語になっている場合の方が典型的な使い方として理解しやすいでしょうか。La infanoj sane kreskis.「子どもらは健やかに成長した」、El tiu semo kreskos granda arbo.「その種から大木が育つだろう」などです。

第1義の後半には「〔動植物が〕生育する,生える」という訳語があります。例文のうち「Oranĝoj ne kreskas en nordaj landoj. 北国にオレンジはできない」に当たります。

この第1義の前半と後半の間に意味的な関連があることは明らかですが、意味の重点は少し違っています。前半の方では時間の流れの中での変化に焦点が当てられているのに対して、後半の方では存在のあり方に注目しています。

そのため、前者では、副詞として、上の例文のpli kaj pli altenのように、変化の大きさや速さについての修飾語がつくことが目立ちます。一方、後者では、上の例文のen nordaj landojのような場所の表現のほか、kreski abunde, amase, dense, ĉieなど、生育の状態について修飾する語句が多いようです。

育つのは、生物学的な成長とは限りません。Kreskis junaj talentuloj.「若い才能ある人たちが育った」などのように、能力や人間性、社会性などの面での成長も含むことは言うまでもないでしょう。

人や動植物以外についてもkreskiを使うことができます。第1義からのつながりは見てとれるものの、比喩的な転義として別扱いしておくのがよさそうです。『エス日』では第2義として「成長する, 発達する, 大きくなる; 増大する, 増えていく」の訳語を挙げています。

一番分かりやすいのは、組織や地域の場合でしょう。人数が増え活動が活発になることを生物の成長と同じくkreskiで表現することは、十分に自然なことに感じられます。『エス日』の例文「La urbo daŭre kreskas. 町は引き続き発展している」に当たります。ほかにasocio, regionoなどや具体的な団体や地域の名前が主語として使われることがあります。

さらに、さまざまな活動を表す名詞もkreskiの主語になります。実例ではekonomio, produktado, konsumado, komerco, industrio, merkatoのように経済活動に使われている例が目立ちます。しかし、これに限られるものではなく、afero「事業」を使う例は、ザメンホフ作詞のエスペラント賛歌La esperoの一節Kaj rapide kreskas la afero / Per laboro de la esperantoj.としてよく知られています。

また、人の感情や感覚もkreskiするものです。(mal)amo, amikeco, malsato, konfuzo, zorgo, intereso, fieroなどです。

数や量、比率などもkreskiの主語になります。nombro, kvanto, proporcioなどのほか、senlaboreco「失業率」、temperaturo「温度」、membraro「会員数」、loĝantaro「人口」などが使われています。La membraro kreskis de 100 al 200.など。特に、お金に関係するenspezo, elspezo, salajro, kapitalo, ŝuldo, prezo, kosto, investo, deficito「欠損」などの語もよく使われます。

ほかに、kreskiの主語として、influo, interkompreniĝo, prestiĝo, bezono, minaco, risko, respondeco, mizero, problemoなど、さまざまな名詞が使われており、全体として第1義より頻度はずっと高いのです。

この転義の使い方では、おおむね時間的な変化に焦点が当てられています。このため、修飾する副詞も第1義の前半の場合に似ていますが、頻度が高いだけに様々な副詞が実際に現れています。まず、変化の大きさを表すkreski multe, forte, grandmezure, signife, rimarkinde, konsiderinde, videble, okulfrapeです。

また、一貫した変化であることを表すkreski daŭre, konstante, plu, senĉese, ĉiam, ĉiam pli, pli kaj pli, de tago al tago「日に日に」などや、変化の速さや遅さを表すkreski (mal)rapide, iom post iom, poiometeなどもよく使われます。

kreski eksponenciale「指数関数的に増加する」は数学の専門用語を利用した表現で、硬い論説文の中であれば使えそうです。急激に大きく増加することを表します。

変化量を表すにはkreski je 10%のように前置詞jeを用います。また、La membraro kreskis ĝis mil.「会員数は千人にまで増加した」、La vilaĝo kreskis ĝis urbego.「村は大都市にまで発展した」のように、帰着点を表す前置詞ĝisともよくつながります。

malkreskiは、『エス日』に注記してあるように、もっぱらkreskiの第2義に対する反義語として使われており、上で第2義について述べたことがほぼ当てはまります。Malkreskis legemo de junaj generacioj.「若い世代の読書意欲は減退している」も例文として挙げておきましょう。

kreskigiは第1義に対応する意味では「<動植物・人を>成長させる, 育てる, 生えさせる」で、kreskigi infanon, rizonなどが分かりやすいでしょう。ただ、kreskigiの主語は人であるとは限りません。La pluvo [tero] kreskigas grenon.「雨[大地]が穀物を成長させる」などの表現も可能です。

第2義に対応した使い方もかなり広く見られます。kreskigi ekonomion, membraronなど。kreskigi kapablon「能力を伸ばす」、kreskigi kulturon「文化を育成する」、kreskigi vortoprovizon「語彙を増やす」などもあります。 Mia admono nur kreskigis reciprokajn suspektojn inter ili.「私の忠告は彼らの互いの疑念を増しただけだった」のように、感情についても使えます。

kreskiからの合成語は、第1義に対応しているようです。altkreska「背の高い」、malaltkreska「背の低い」、mezkreska「中背の」plenkreska「成年の」などが主なもので、さらにplenkreskulo「成人」が作られます。


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