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『エスペラント』(La Revuo Orienta) 第80巻(2012)10月号, pp.22-23. 掲載

de vorto al vorto (33) trafi

後藤 斉


『エス日』での動詞trafiの語義区分は少し複雑になっています。第1義は「<ねらったものに>当てる, 命中させる」と「当たる, 命中する, ぶつかる」とに細分されています。第2義「〔災難などが〕降りかかる, 襲う」と第3義「<良いことに>出会う」もあり、これらの間の関係は、第1義の2つの区分同士の関係と似ているようです。

具体的に捉えやすいのは第1義の方でしょう。Li ĵetis ŝtonon kaj trafis la fenestron.「彼は石を投げて、窓に当てた」は状況を思い浮かべやすいはずです。この文では、窓めがけて石を投げて命中させた、と解釈するのはごく自然です。しかし、石を投げたらたまたま窓に当たってしまった、という状況を表すこともありえます。La ŝtono trafis la fenestron.「石は窓に当たった」のような文も、狙いをつけていた場合でもそうでない場合でも可能です。

ザメンホフ訳の『ことわざ集』にはCeli anseron, trafi aeron.「ガチョウを狙って空気に当てる」という、失敗を描写することわざがあります。結局trafiの語義全体としては、狙いの有無はともかく、「(当たらない可能性も十分ある中で)当てる/当たる」ところにポイントがあるようです。

trafiすることによって、対象物はなんらかの損傷や被害を蒙ることもよくあって、その結果(上の例文で言えば、窓が割れる)を含めて解釈したくなるのもまた自然です。ただ、それはtrafiの語義に含まれるというより、生じる結果が推論しやすいということでしょう。

上の2つの例文に挙げたように、人を主語にすることも、当たる物体を主語にすることも可能です。いずれでも、当たる対象物は直接目的語になります。

当たる物体としては、ŝtonoの他に、kuglo「弾丸」、sago「矢」、pafo「発射」など飛び道具が関係している場合が目立ちますが、glavo「刀剣」、bato「打撃」、またpugno「こぶし」や体の他の部分なども見られます。La aŭto trafis arbon.「自動車が木にぶつかった」、Sunbrilo trafis liajn okulojn.「日光が彼の眼を刺した」のような例もあります。

副詞としては、当たるか当たらないかに関する修飾が目立ちます。trafi bone, hazarde, neatendite, neevitebleなどです。trafi forteのように衝撃の大きさを修飾するものもありますが、あまり多くはありません。

trafiは、少し抽象化して視線が物に当たることも表します。おもしろいことに、視線は、目から対象物に向かう方向と、対象物の姿が目に向かってくる方向の2通りで捉えることができるのです。そのため、Miaj okuloj trafis strangan spektaklon.とすることも、Miajn okulojn trafis stranga spektaklo.とすることも可能です。

音については、耳から対象物への方向を考えることはほとんどなく、耳に入ってくる方向が主でしょう。Akra krio trafis miajn orelojn.「鋭い叫びが私の耳に届いた」などです。

trafiの語義は拡張して「移動して<場所に>ぶつかる、行き当たる」を表すこともあります。trafi riveron「川に行き当たる」が分かりやすいでしょう。Hazarde mi trafis lin.「たまたま彼に出くわした」のように人についても使えます。

なお、『エス日』ほか多くの辞典でtrafiを他動詞としており、実例をみてもほとんど他動詞なのですが、直接目的語を取らない使用例もあります。とくに「行き当たる」の語義では、移動を表す前置詞句を伴って、trafi al arbo, trafi en strangan kvartalon, trafi sur insulonなどと使われることがあります。Kiamaniere la maloftaĵo trafis en viajn manojn?「どうしてまたその珍品が君の手に収まったのか」も同様です。

さらに、akurate trafi kunvenon「会合に時間通りに行き着く」、trafi fruan trajnon「早い列車をつかまえる」、trafi nafton「原油を掘り当てる」などの使い方もでてきます。ほかにLa libro bone trafis la celon.「その本はうまくターゲットをとらえた」、La elekto trafis mian amikon.は「私の友人に白羽の矢が立った」、Io stranga trafis mian atenton.「奇妙なものが私の注意を引いた」、Subite min trafis la penso, ke ...「突然…という考えが私を捕えた」など、さまざまな使い方が見られます。

第2義「〔災難などが〕降りかかる, 襲う」も、第1義からの拡張として捉えられます。具体的なSago trafis lin.から、少し抽象的なAtako trafis lin.、Atako trafis la urbon.などをへて、Pluvo trafis lin.、Uragano trafis la urbon.へつながっています。主語としてよく現れるのは、悪天候(pluvo, uragano, ŝtormo, varmondo)、災害(tertremo, cunamo, katastrofo)、事故(akcidento, incendio)、不運(sorto, malfeliĉo, malbono, malĝojo, problemo)などです。なお、Lin trafis feliĉo.のように良いことに関して使った例もまれには見られます。

Lin trafis la morto.「死が彼を襲った」も同様ですが、同じことをLi trafis la morton.とも言えるのがおもしろいところです。後者は「出くわす」の語義から理解できるでしょう。

Nun justa puno trafas lin.「いま公正な罰が彼に降りかかっている」、Forta kritiko trafis la programon.「厳しい批判がプログラムに向けられた」などの例もあります。

第3義「<良いことに>出会う」も「出くわす」の語義からの拡張として理解できそうです。

形容詞trafaは、動詞の「命中する」に対応した語義で使われることはほとんどなく、「的を射た, 的確な」の意味になっていることが普通です。trafa elekto, ekzemplo, maniero, metodo, prezentoなどの例があります。trafa vorto, respondo, traduko, rimarko, komento, esprimo, argumentoなど、言語表現や応答について使われている例も目立ちます。

副詞trafeも、trafe ĵetiのような具体的な語義での用例はまれで、やはり「的確に」の意味での使用がほとんどです。trafe elekti, kompari, uziなどですが、ここでもtrafe diri, esprimi, informi, klarigi, priskribi, respondi, tradukiなど言語表現に関する使い方が目につきます。

反対語maltrafiは「<的を>はずす, <チャンスを>逃す, 乗り遅れる」の語義で、maltrafi celon, okazon, busonのように使われます。


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