「ムカサリ絵馬」とは山形県村山地方において奉納が認められる絵の額です。 多くは50〜70cm×40〜50cmほどの大きさですが、一辺が1mを超すサイズのものも稀にあります。 また、やはり数は多くはないものの、絵ではなく、写真を合成したタイプのものもあります。

 「ムカサリ」という語は、方言で、「結婚)」や「花嫁」を意味するため、 「ムカサリ絵馬」とは、「結婚の状景(祝言や結婚の記念撮影など)を描いた絵馬」ということになりますが、 この結婚は、とりもなおさず、〈死者の結婚〉なのです。 そしてこうした「絵馬」は、死者(主に未婚で亡くなった者)を供養する意図のもと、村山地方にある観音堂や寺院に奉納されてきました。

 地域的な分布としては、村山地方の中でも特に村山市東根市天童市山形市上山市といった東部で顕著にみられます。 最近は、地域的な展開ではないものの、庄内地方などの県内の他地域、宮城県などの県外の寺院もこの習俗を各個に採用していることが散見されます。 また、現存する最古のものは明治後期からみられ、100年余りの歴史をもつことがわかります。

 今回の展覧会では村山地方の6つの寺院、2つの観音堂、そして山形県立博物館に御協力いただき、約80点の「ムカサリ絵馬」を一堂に集めて、一般公開します!  このような試みは過去にはなく、史上初であり、時に誤解されがちな「ムカサリ絵馬」〈死者の結婚〉について、みなさまの理解を深めていただく機会となることを願っております。

「ムカサリ絵馬」展 実行委員会