インタビュー: 田鎖楠奈

2018年卒 修士

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東北大学日本語教育学研究室を卒業・修了してから、これまでの経歴を教えてください。

私は東北福祉大学を卒業してから、東北大学の大学院に入学しました。修了後、東北福祉大学国際交流センターに着任しました。学部時代は障害者・高齢者福祉を勉強し、今も月に1回、福祉現場に出ています。学部時代に海外で旅をしたことや、中国人介護士と一緒に福祉施設でアルバイトした経験から「『福祉×グローバル』っておもしろい!」と思い始め、「外国人介護士の日本語教育」について研究してみたいと思うようになりました。大学4年生の時、東北大学大学院の受験を決意しました。

現在のお仕事の内容について教えてください。

宮城県内の高齢者施設で働く外国人介護士に日本語を教えています。学生はEPAという制度で来日したインドネシア人と、宮城県に20年以上滞在する定住フィリピン人の計8名です。今後も増える予定です。  彼らは高齢者施設で働きながら、介護福祉士国家資格取得のための受験勉強をしています。この国家試験は日本人でも合格することが難しい試験です。特に外国人にとっては、日本ならではの社会保険制度や漢字が連なる疾病名などが理解しにくいため、図や写真を使って分かりやすく説明するよう心がけています。  また、彼らの生活が「仕事」と「勉強」だけで苦しくなってしまわないよう、文化体験や地域の人との関わりを持てるよう工夫しています。

東北大学日本語教育学研究室で学んだことは、現在のお仕事で生かされていると思いますか?具体的にどんな時にそう感じますか?

 とても生かされています。特に修士1年生の夏に行った実習は今の仕事に直結しているように思います。実習では、学習者のニーズを基にそれぞれのレベルに合った授業を一から考えました。同期の仲間と一緒に授業をデザインしたことで、自分にはないアイディアに気づいたり、自分の授業を客観的に捉えて見直す意識が生まれたりしました。  また、実習後は自分の授業のビデオを先生と同期の仲間と見返しました。私は学部時代、教育とは全く関係のない分野におり、実習で初めて授業(のようなもの)をさせていただいたのでひどい出来でしたが、先生が細かく的確なアドバイスをしてくださり、中国人留学生である同期にも学習者目線の貴重な意見をたくさんもらいました。  自分の授業はどうだったか、学習者の反応はどうだったかを振り返る癖がつき、今も授業後に記録をつけ、反省しながら授業を組み立て直しています。

今のお仕事の魅力を教えてください。

ある学生が「日本で介護の資格をとって一人前の外国人介護士として認められたい」と話してくれたことがありました。EPA介護士の場合、国家試験(日本人と同じ内容)を合格しないと日本で働き続けることができません。私の学生は皆、日本語を習得したその先のステージをいつも見据えています。介護の仕事について「利用者さんと一緒にいて楽しい。国家試験に合格して、もっと利用者さんを元気にしてあげたい」と、魅力を感じながら、介護のキャリアアップを目指しています。  今後日本で働く外国人はますます増えることが予測されます。これからの日本社会を一緒に作っていく彼らと関わることができるのがこの仕事の魅力だと思います。授業を通じて彼らの価値観や習慣・文化も感じることができますが、人間としての根っこの部分はきっと同じで、「自分をもっと高めていきたい」という思いもまた同じような気がしています。そこを全力で応援できるのもまた、この仕事のいいところです。  これからの日本は違いを尊重することももちろん大事ですが、お互いに共通する部分をもっと発見していくべきだと思います。私もそういう共通部分を大事に拾い集めて、彼らと一緒に成長していきたいと思う毎日です。

日本語教育学研究室の在籍生にメッセージをお願いします。

違いを楽しみながら、通じ合える部分を大切に、思いっきり勉強してください。皆さんを待っている学習者がきっといるはずです。

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