2009年度日本思想史研究会月例会報告要旨(予告)


開催日報告者題目
2月6日 修論卒論発表会
12月12日 森川多聞氏 「天野貞祐の規範意識」
10月3日 古田武彦氏 「近世出土の金石文と日本歴史の骨格」
7月18日 西村玲氏
伊久間洋光氏
碧海寿広氏
三後明日香氏
クラウタウ,オリオン氏
桐原健真氏
「西村玲著『近世仏教思想の独創
僧侶普寂の思想と実践』合同批評会」
6月27日 高橋章則氏
曽根原理氏
大川真氏
「オランダにおける日本研究の現況と資料調査の報告」
5月23日 小嶋翔氏 「女流浪漫主義歌人の文明開化
―明治四〇年代から大正初年にかけての与謝野晶子を題材として―」
4月25日 モリス・ジョン氏「聖人のミイラ化と浄土思想について」

2月例会

修論卒論発表会

時間 発表者 題目
修士論文発表会…各60分間(発表40分、質疑応答20分)
10:00-11:00 モリス ジョナサン ポール 腐敗しない肉体―ミイラに見る聖人崇拝
卒業論文発表会…各30分間(発表20分、質疑応答10分)
11:00-11:30 柿原 真祐 寺山修司の初期演劇論
11:30-12:00 直井 正太 ニライ・カナイはどこにあるか
―『おもろさうし』に見る琉球の他界観―
(休憩1時間)
13:00-13:30 飯澤  蘭 鴨長明の思想
13:30-14:00 岩谷 侑子 岩木山信仰における「赤倉の鬼」
14:00-14:30 武田 理恵 裏千家茶道家元十一代玄々斎の思想
14:30-15:00 新田 里美 樹木信仰と柱信仰
(休憩15分)
15:15-15:45 長谷川祥子 浜田広介の描いた童話
15:45-16:15 平木 雄祐 竹内好の思想
16:15-16:45 廣野はるか 後白河院と今様
16:45-17:15 三原 好太 中江兆民の思想

12月例会

森川多聞氏「天野貞祐の規範意識」

天野貞祐(1884-1980)は、旧制一高、京都帝大に学んだ哲学者、教育者である。1937年には『道徳の感覚』を、
1951年に「国民実践要領」を発表し、一貫して道徳教育の必要性を訴えた人物であった。教育史で論じられること
の多い天野の思想を、同時代的なコンテクストのなかで捉えなおすことが、本発表の目的である。

天野は、「個人主義」「教養主義」の時代に青年期を過ごし、教育者になる夢を抱きつつ、哲学研究によって自
己形成をしていった。その過程で天野が体得した、「個人」「国家」における規範意識を中心に論じたい。(東北大学大学院)

参考文献:
貝塚茂樹『戦後教育のなかの道徳・宗教』文化書房博文社2003年
竹内洋『学歴貴族の栄光と挫折』中央公論新社1999年

10月例会

古田武彦氏「近世出土の金石文と日本歴史の骨格」

江戸時代出土の金石文(銘板)に次の二点がある。

  1. (1)小野毛人墓誌(京都、崇道神社。慶長十八年〔1613〕十一月二十四日出土)
  2. (2)船王後墓誌(大阪、松岳山出土。三井高遂氏蔵)

右の銘板の記述は、同時代(七世紀後半)の日本書紀の記述(天武紀等)と矛盾するため、種々の論議がなされ、なお決着がついていない。この問題に対し、「同時代の金石文」を重視する立場から再検討を行い、「近畿天皇家中心」の一元史観の「非」を論証し、日本思想史を含む日本歴史の骨格を確かめさせていただきたい。

7月例会

西村玲氏ほか「西村玲著『近世仏教思想の独創 僧侶普寂の思想と実践』合同批評会」

異端の学僧か、近代仏教思想の源泉か―江戸の中期、律僧普寂は富永仲基に代表される科学的合理主義といかに対峙したか。仏教堕落史観や政治思想中心主義を超えて、近世から近代に連なる新たな思想史の構築を目指す俊英の力作論考。(『近世仏教思想の独創』帯より)

メインパネリスト(著者)
西村玲氏(東方研究会研究員)
パネリスト(指定討論者)
伊久間洋光氏(東北大学文学研究科博士後期課程)
碧海寿広氏(国際宗教研究所研究員)
三後明日香氏(米国・カールトン大学助教授)
総合司会
クラウタウ,オリオン氏(東北大学文学研究科博士後期課程)
コーディネータ
桐原健真氏(東北大学助教)
共催
2009年度科学研究費・若手研究(B):「帝国」概念の思想史的研究(桐原健真代表)

6月例会

高橋章則氏、曽根原理氏、大川真氏「オランダにおける日本研究の現況と資料調査の報告」

周知の通り、オランダには日本関係の書籍・美術品が多く所蔵されており、またライデン大学を中心として日本研究も盛んに行われている。今年の3月に高橋は資料調査のため、6月に曽根原・大川は国際シンポジウム参加と資料調査のために、それぞれオランダを訪問した。その成果の一部を6月例会では発表する。(東北大学)

5月例会(修論構想発表)

小嶋翔氏
「女流浪漫主義歌人の文明開化―明治四〇年代から大正初年にかけての与謝野晶子を題材として―」

明治末の自然主義文学の台頭は、浪漫主義歌人である与謝野晶子(一八七八‐一九四二)に自分が未だ「文明」化されていない存在であるという強い反省をもたらした。改めて自らを「文明」化させようと試みる晶子は、やがて主体的な国民国家の一員たらんとする強いナショナル・アイデンティティーを獲得する。文学史や女性史の研究も視野に入れながら、一人の女流歌人が「文明」という時代の課題や国民国家に対していかに向き合おうとしたのかを明らかにしたい。(東北大学大学院)

4月例会(修論構想発表)

モリス・ジョン氏「聖人のミイラ化と浄土思想について」

『往生伝集』、または空海伝の資料の分析を主眼に置き、日本における修行者の遺体が腐敗しないことと、聖人崇拝の関係について考察する。『往生伝集』における往生人の遺体が腐敗せず瑞相を現すとともに計画的にミイラを残すことは、湯殿山系の即身仏の思想的背景の一部ではないかという問題点についても論じたい。空海入定説の影響や模範は、多くの即身仏に影響を与えた唯一の観念として、定説化されている。一方で浄土関係の「瑞相」として見なされた聖人のミイラ化の伝承が、空海の伝承に影響を与えた可能性についても論じたい。(東北大学大学院)

 主な参考文献:山崎誠(執筆)安部泰山郎、山崎誠(編集責任)『往生伝集』臨川書店刊 2004年


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