2013年度日本思想史研究会月例会報告要旨(予告)


開催日報告者題目
3月29日 杉原慶子氏 「中世における来世観の構造」
2月5日 2月特別例会 「文と武のあいだ」
2月1日 卒論・修論発表会
12月14日 飯島孝良氏 「鈴木大拙の禅思想史観をたずねて〜『禅思想史研究第一―盤珪禅―』を手 がかりに」
11月9日 舩田淳一氏 「西大寺長老清算の宗教活動をめぐって」
7月27日 吉川裕氏 「江戸漢詩における「日常性」の獲得――徂徠学を出発点として」
小嶋翔氏 「近代思想史研究における「生活」概念史」
6月15日 安江哲志氏 「西田幾多郎の気概――主権・国体・皇室・民族」
柴田一郎氏 「保田與重郎の文学論 ―ロマン主義から国学へ―」
5月25日 菊地敬氏 明恵上人の思想―思慕から捨身へ―
4月27日 若色智史氏 幕末における儒学者の立場について―大橋訥庵・池田草庵を中心に―

3月例会

杉原慶子氏「中世における来世観の構造」

中世の来世観を考える手がかりとしてその当時の来世に関するいくつかの語の 変遷を辿っていくと、12世紀頃をひとつの転換点として、来世を問うことと死者 を弔う意識が密接に結びついていく動きが見てとれる。当然それまでも死者を弔 うという意識はあったはずだが、なぜその時期を境として来世観においてこのよ うな現象が顕著にみられるようになったのか。そのような視点から中世の来世観 の構造の一旦を考察したい。 (奈良女子大学大学院)

2月特別例会  「文と武のあいだ」

時間 発表者 題目
中嶋英介氏 「近世士道論と死」
吉川裕氏 「文人服部南郭における文と武」
高橋恭寛氏 「徳川儒者による教道のかたち」
李月珊氏 「近世武家社会の文運と武運―釈奠礼の変遷を通して―」

2月例会 修士論文・卒業論文発表会

時間 発表者 題目
10:00-10:30  小屋松奨氏 「近世武士道思想の研究 「葉隠」の思想」
10:30-11:00 石田健太氏 「「芸人」としてのマルセ太郎―その思想史的背景と身体描写―」
(休憩10分)
11:10-11:40 遠藤直美氏 「四世鶴屋南北の思想について」
11:40-12:10 柴田燻 「日本における近代演劇―川上音二郎とその時代―」
(休憩50分)
13:00-14:00 菊地敬氏 「明恵上人の思想―釈迦への思慕から捨身へ―」
(休憩10分)
14:10-15:10 若色智史氏 「幕末・維新期における儒学者の生と夢」
(休憩10分)
15:20-16:20 柴田一郎氏 「保田與重郎の思想―ロマン主義から国学へ―」

12月例会

飯島孝良氏「鈴木大拙の禅思想史観をたずねて〜『禅思想史研究第一―盤珪禅―』を手 がかりに」

鈴木大拙(1870〜1966)は、『禅と日本文化』『日本的霊性』などで日本の文 化や精神を伝えたことにより、とくに西欧からは「禅オリエンタリズム」の象徴 と看做される向きもある。その大拙は西欧思想に学びながら、自身が見性体験を 得た「公案禅」とは何であるか、そもそも中国から日本へ禅が根付く経緯とは如 何なるものか、そうした問いを基に「禅思想史」を構想するに至る。今回は、こ れまでその難解さ故に見逃されてきた『禅思想史研究』を再考し、大拙が独特に 用いる「禅思想史」とは如何なるものか、その現代的価値を近代日本思想の時代 状況や最新の禅語録研究も視野に入れて御紹介したい。 (東京大学宗教学研究室)

11月例会

舩田淳一氏「西大寺長老清算の宗教活動をめぐって」

南北朝期に第十一代西大寺長老を務めた彦証房(げんしょうぼう)清算(しょう さん)についての研究は、従来、若干の言及がなされた以外は、ほぼ皆無に等し い。だが最近、仏教学の側から、その教学的特質についての分析が進み、南都律 僧でありながら、天台系の戒律観に極めて近いものであったことが明らかになってきた。 本報告では、更に未紹介の文書類などを用いて、清算の宗教活動(武家祈祷や 諸国国分寺興隆の構想)に注目しつつ、清算の全体像を描き、いまだ大いに研究 の余地がある、叡尊の弟子・孫弟子世代の南都律宗像を究明する一助としたい。 (日本学術振興会特別研究員)

7月例会

吉川裕氏「江戸漢詩における「日常性」の獲得――徂徠学を出発点として」

本発表は荻生徂徠が提唱し大流行させた格調説から、それに反発した山本北山 らの主張した性霊説への漢詩論の転換とその背景について、「日常性」という視 点から考察するものである。周知の通りこの転換については すでに日野龍夫ら によって徂徠学を契機とする漢詩文の儒学から文学への独立、あるいは大衆化の 過程として詳細に論じられているが、思想史・文学史の枠組みに留まらず、その 歴史的意義を広く文化史的視点から位置づけることもできるだろう。まずは共通 テーマである「日常性」の持つ両面性や概念そのものを整理しつつ、当初は「雅」 の領域にあった儒学や江戸漢詩が商品経済や太平の世の中で「日常性」を獲得し ていくことを論じていきたい。 (東北大学大学院)

小嶋翔氏「近代思想史研究における「生活」概念史」

大正期から戦後まで、思想を「生活」に寄り添わせなければならないという理 念は汎く認められる。しかし、思想と「生活」の関係という問題については、古 くは 戦前における正宗白鳥と小林秀雄による「思想と実生活論争」(1936)、 また戦後では丸山眞男等による言及もあるが、少なくとも戦後の思想史研究では、 この問題についての理解が深められないまま、その時々における同時代的問題 関心を投影させる形で「生活」が語られてきたように思われる。本発表では、近 代 思想史研究における「生活」概念史を辿り、「日常性」を問う意味を歴史的 に考察したい。 (東北大学大学院)

6月例会(修論構想発表)

安江哲志氏「西田幾多郎の気概――主権・国体・皇室・民族」

本発表では、西田幾多郎(明治3年生/昭和20年没)がその晩年において―《 「大東亜戦争」の時代》を生きた者として―、思索を進めていったその背景にあ る意識、特に「日本」に対する気概(意志)を明らかにしていきたい。  具体的な方法としては、先ず表題に挙げた「主権」「国体」「皇室」「民族」 といった西田が実際に用いた4つの語に注目して、西田がどのように使い分け、 如何なる意味をそこに込めたかを検討していき、西田の立場を俯瞰していく。 (東北大学大学院)

柴田一郎氏「保田與重郎の文学論 ―ロマン主義から国学へ―」

文芸評論家の保田與重郎(1910〜81)。『日本浪曼派』(1935〜38)や『コギ ト』(1932〜44)誌上において彼が目指したのは、神話や古典を媒介として日本 の〈始原〉を再構築することにあった。その方法論としてのロマン主義は、しか し戦争の激化に伴い、「国学的言説」の色合いを次第に強めていくことになる。 「近代」批判と革命性を孕んだ「浪漫的イロニー」から、現状肯定としての「こ のみち」の追認へ。なぜロマン主義から国学の世界観が形成されるに至ったのか、 戦時下における保田の思想的変遷ついて本発表では考察したい。 (東北大学大学院)

5月例会(修論構想発表)

菊地敬氏「明恵上人の思想―思慕から捨身へ―」

「不犯の聖僧」と言われた明恵の生涯にはその時々において捨身の思想を垣間見 ることができる。これまで明恵の釈迦信仰は熱烈な釈迦思慕にあると論じられて きたが、本研究では明恵の釈迦信仰は釈迦を思慕するだけではなく、その基底と なる思想は捨身であるとの仮説をたてて論究する。 (東北大学大学院)

4月例会(修論構想発表)

若色智史氏「幕末における儒学者の立場について―大橋訥庵・池田草庵を中心に―」

大橋訥庵と池田草庵は互いに儒学、特に心性を講究し切磋琢磨する間柄であっ た。ペリー来航前後から訥庵の幕府への上書などといった政治的活動を盛んに行 うようになり、一方、草庵は、政治的活動は行わず、子弟の教育と講学に専念し ていた。彼らの行動は大きく異なるもペリー来航以後の日本のとるべき方針など はほぼ同じであった。同じ問題意識をもっていたにも関わらず、彼らの行動が何 故大きく異なるのか、本発表ではその前提となる訥庵・草庵らの社会的立場を考 察したい。 (東北大学大学院)


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