!!!教員推薦書籍―社会学ことはじめ― !!永井彰 教授 *1.'''マックス・ヴェーバー[『職業としての学問』|https://www.iwanami.co.jp/book/b248663.html]'''(岩波文庫、1936)、'''[『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」』|https://www.iwanami.co.jp/book/b248661.html]'''(岩波文庫,1998) 前者は、マックス・ヴェーバーが学生たちに語った講演をもとにしている。直接的には、学問に携わる者の心構えを語っていて、それはそれで興味深いのだが、かれは、そのことをとおして「近代」という時代の意味について語っている。 これを読み終えたら、後者にも挑戦してほしい(こちらは、学術論文なので前者よりは難解)。社会科学的認識ははたして客観性を持ちうるのか、持ちうるとしたらいかなる意味においてかという問題をヴェーバーは論じている。こんにちの科学方法論の水準からすると、やや古いということは否めないが、それでも一読する意味は大いにある(これから社会科学を勉強しようとする人は、方法論の問題を一度はくぐっておく必要があるから)。またこの論文にも、近代という時代についての洞察がちりばめられている。これについても味わって読んでほしい。 *2.'''内田義彦[『社会認識の歩み』|https://www.iwanami.co.jp/book/b267086.html]'''(岩波新書,1971) *3.'''大塚久雄[『社会科学の方法―ヴェーバーとマルクス』|https://www.iwanami.co.jp/book/b267085.html]'''(岩波新書,1966) !!小松丈晃 教授 社会学の内容に関わる本ではなく、これからの大学で(知的)生活を送る上で必要な「考え方」や「学び方」を養うのに参考になる本を挙げておきます。 *1. '''内田義彦[『読書と社会科学』|https://www.iwanami.co.jp/book/b267085.html]'''(岩波新書、1985年) 社会思想史家の著者が、「社会を見る目」を養うための読書法を説いた本。ここで言われている、「古典として読む」ことと「情報として読む」こととの違いを念頭においておくと、社会学の(とくに古典と呼ばれる)本との向きあい方もかなり違ってきます。 *2. '''苅谷剛彦[『知的複眼思考法』|https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000177195]'''(講談社+α文庫、2002年) 「脱常識の社会学」とよく言われますが、創造的で常識にとらわれない考え方をするにはどうすればいいのでしょうか――教育社会学者の著者が、「複眼的思考」の方法をわかりやすく説いています。 *3. '''戸田山和久[『新版 論文の教室』|https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000911942012.html]'''(NHKブックス、2012年)/'''宮内泰介[『自分で調べる技術―市民のための調査入門』|https://www.iwanami.co.jp/book/b268993.html]'''(岩波アクティブ新書、2004年) 論文執筆法については名著と称されるものが多く、そのいずれを読んでもいいと思いますが、哲学者が書いたこの本はとてもわかりやすいものの一つで、(ダメ)事例をも交えながら解説してくれるので、読み終えたときには「論文」とはどういうものかが理解できているはずです。後者は、環境社会学者が書いた市民向けの調べ方読本。情報収集の方法やインタビュー術などがわかりやすく紹介されています。 !!田代志門 教授 様々な「問題経験」を抱えた人びとに実際に会いに行き、話をじっくりと聞く。可能な限り彼らと一緒に長く時間を過ごす。当事者の経験を内側から理解したうえで、その問題を社会につなげていく。自分の問題と彼らの問題を切り離さない。そうした方法で描かれた社会学の本のなかでも、読みやすく参考になるものを3冊あげます。 *1. '''中村英代[『摂食障害の語り―〈回復〉の臨床社会学』|https://www.shin-yo-sha.co.jp/book/b455748.html]'''(新曜社、2011年)  インタビュー調査を進めていくと、聞き取った多様なデータをどんなふうにまとめればよいのか困ってしまうことがあります。そんな時に読むことを進める本がこれです。多様な当事者の語りを活かしつつも、それを一つの社会学的知見にまとめていく手際の良さが際立っています。 *2. '''知念渉[『〈ヤンチャな子ら〉のエスノグラフィー―ヤンキーの生活世界を描き出す』|https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787234452/]'''(青弓社、2018年)  インタビュー調査と並ぶ質的社会調査の武器に「参与観察」という方法があります。話を聞くだけではわからないことが、同じ場に身を置くことで見えてくることがあるからです。この本を読んで、参与観察って面白い、と思ったら、ぜひ石岡丈昇さんの『ローカルボクサーと貧困世界――マニラのボクシングジムにみる身体文化』(世界思想社、2012年)も読んでみてください。 *3. '''矢吹康夫[『私がアルビノについて調べて考えて書いた本―当事者から始める社会学』|https://seikatsushoin.com/books/%E7%A7%81%E3%81%8C%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%93%E3%83%8E%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E8%AA%BF%E3%81%B9%E8%80%83%E3%81%88%E3%81%A6%E6%9B%B8%E3%81%84%E3%81%9F%E6%9C%AC/]'''(生活書院、2017年) 何らかの問題を抱えた当事者がその問題を研究する、研究者が自分の経験を研究する。「当事者研究」や「オートエスノグラフィー」呼ばれる研究の流れがあります。自分の問題であることにこだわりつつ、他者が理解可能なようにその問題を対象化していくことの面白さと難しさを感じられる本です。 !!青木聡子 准教授 自分では常識と思っていることや当たり前の選択が、他者にとってもそうであるとは限りません。自分とは異なる規範や価値観のもとに生きる他者が、なぜそのような行為や選択をするのかを理解したり想像力を働かせたりすることは、社会学を学ぶ上だけでなく日常生活においても重要です。ここでは、そうした力を育む/発揮している書籍を紹介します。 *1. '''植田今日子[『存続の岐路に立つむら――ダム・災害・限界集落の先に』|http://www.showado-kyoto.jp/book/b216115.html]'''(昭和堂, 2016年) * 既存の空間を積極的に放棄しダムの「早期着工」を求めた水没地域の人びと、よその踊り手を取り入れるという選択をせずに集落の伝統的な踊りを「畳んだ」人びと、津波常習地域であるにもかかわらず嵩上げや防潮堤無しで再び海辺に居住する人びと。こうした、一見すると「非合理」な選択や行為をする人びとが有する論理を、丹念なフィールドワークから明らかにしています。 *2. '''中西新太郎・高山智樹編[『ノンエリート青年の社会空間――働くこと、生きること、「大人になる」ということ』|http://www.otsukishoten.co.jp/book/b53122.html]'''(大月書店, 2009年) * 専門学校生、引っ越し屋、自転車メッセンジャー、製造業非正規労働者、高卒女性といった、ここにいる皆さんとは異なるライフコースを歩む人びとが、「何とかやっていける」生活環境を限定的な資源や厳しい条件の下で構築しようと模索するプロセスを丹念に描き出した研究です。 *3. '''エリザベート・バダンテール[『母性という神話』|https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480084101/]'''(ちくま学芸文庫, 1998年) * 時代が変われば常識も変わります。女性は本能的に「母性愛」を有するものだ、「母性愛」は普遍的なものだ......世間でそう思われてきたことが神話に過ぎないということを、18世紀フランス社会の育児事情を紐解くことにより明らかにするとともに、母性神話がいかに作り出されたのかを分析した一冊です。