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教員一覧

教員のよこがお

人間科学 心理学

行場 次朗
教授行場 次朗
ぎょうば じろう

博士(文学)。
[主要担当科目]
実験心理学概論
実験心理学演習
実験心理学各論
心理学研究演習U

研究者データベース

1)心理学を学んだきっかけ

私はもともと、理科が好きでして、宇宙とか、地学とか、生物とかに興味がありました。 特に地学の単純な方法では、地表から奥の地殻の構造を推定するわけで、 地震のメカニズムなど、目に見えないものを模式図などを描いて推定することには、 わくわくする思いでした。心理学も目に見えるパフォーマンスや行動から、 内部のメカニズムを推定するわけで、フロイトの「いい間違い」の解釈や、 錯視が起こるメカニズムに関する仮説などに触れたときには、同じようにわくわくしてしまいました。 高校のとき、心理学が文学部にあることを知り、文科系進学コースに変えるのには結構、 決断が要りましたが、グループでやる大きな科学ではなく、 一人でも模式図を自由に考えることができそうと思い、文学部に進学することにしました。 当時の東北大では1年次の成績順で専攻希望が決まるので、心理学専攻に決まったときには、 入試に合格したときよりもうれしかったのを覚えています。

2)現在の研究領域

 卒論では、私はネズミ(ラット)の初期経験(視覚刺激および触覚刺激提示)が 発達後の学習に与える影響を調べました。 やはり動物好きだったのか、ラットの完全な個体識別は無理ですが、 表情ならある程度、わかります。修士論文では、人間の補完知覚の問題をとりあげ、 博士論文に結びついています。人間を被験者 (今は実験参加者といいますね)になってもらうときに、時間と場所さえ予約すれば、 勝手に食べて寝て、実験室にやってきてくれると妙に感激したものです。 そのかわり、実験前にどんな生活をしているのか、 自分が完全飼育しているラットと違って不明で、不安にもなりました。
 現在のテーマは、補完知覚にかかわる錯視、視覚・聴覚・触覚などのマルチモーダル現象、 文字認識やパターン認識、物体や顔の認知、SD法や美の感性心理学、受け渡し動作の分析、 言語認知など、院生や他の研究者と共同研究を幅広く展開しています。 また、電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーショングループ (HCG) の委員長をしたこともありました。文学研究科に所属しているHCG委員長は初めてだと思います。 HCGにはたくさんの研究会があり、非会員でも発表できますから、 他分野の研究者との交流にどんどん利用してください。Internet で HCG をキーワードに入れて検索すればすぐに各研究会のURLに行くことができると思います。

3)今後の取り組み

 これから、2〜5年かけて、科研費やいろいろなプロジェクトで、 以下のような課題に取り組まなければなりません。 「視覚芸術の特性と脳内基盤の解明」「長調美と短調美の特質と脳内基盤」 「マルチモーダル感覚情報の時空間統合」「顔と物体の高次視覚印象の予測モデルと造形デザインへの応用」 「感性次元の感覚関連性と対応する脳活動」「PETによる認知・注意・感情の機能研究」 「言語の発達・脳の成長に関する統合的研究」などです。 どれも工学や医学、言語学などの他分野の共同研究者や、 大学院生の強力な協力がないとやっていけません。研究費を補助してもらっている関係上、 成果をあげなければならず、「課題に取り組まなければならない。」 と義務的に書いてしまいましたが、本当はどのテーマも面白く奥深く、わくわくする気持ちで取り組んでいます。

4)これから心理学を学ぶ人へのメッセージ。

 心理学と他の学問分野(例えば、認知科学、脳科学、人間工学、情報科学、感性科学など) との垣根がどんどん低くなってきていることはどなたも実感されていることと思います。 そのような状況は、心理学の研究者がいろいろな分野で必要とされていることになり望ましいのですが、 逆に考えると攻め込まれて混戦状況に活路を見出さなければならない時代になっているともいえます。 特に若い方たちほどそのような状況は深刻でしょう。大学院大学の時代になって競争も厳しくなりました。 雇用も任期制が当たり前になっていますし。そのような中で研究を続けるには、 やはり自分のテーマによほどの好奇心と愛着がないと、もたないと思います。 これから研究者を目指す人には、既存の心理学の枠にとらわれず、果敢にいろいろな分野の知見に触れ、 吸収してほしいです。良いテーマとの出会いのチャンスを引き寄せる力も才能のうちなのでしょう。 そして、上述したことと一見矛盾する言い方かもしれませんが、誰にも負けない、 誰からも頼られる specialty (専門性、特技?)を持ってください。 ジャズピアニストの秋吉敏子の曲に '根なし草'というのがありますが、 音楽の世界を駆けめぐった若いときの彼女の不安をあらわしています。 広く分野を渡り歩いた末に根無し草になってはいけません。 ニューロイメージングの手法などいろいろ試してきて、 結局、心理物理学や基礎心理学が自分のベースという実感をもし将来、抱けるとしたらとても幸せなことだと思います。