リンクは自由!
『月刊言語』第30巻(2001)8月号, pp.122-123 掲載
西垣通、ジョナサン・ルイス著
タイトルは誤解を招く。本書の論点は日本語のみに限られているわけではなく、 広く二十一世紀における地球規模のコミュニケーションにおけるインターネットと 言語・社会の関わりに及び、扱われるテーマには英語公用語化論、コンピュータ上の 多言語情報処理、機械翻訳等々がある。とりわけ、著者らが運営するインターネット 上の多言語フォーラム「L/P(言語/権力)」の報告は、経験に基づくだけに 示唆に富む指摘が多い。脱「島国根性的モノリンガリズム」が日本人の取るべき 道筋として示されるが、その方向に向かうかどうかも不確実であることは、 本書中の各所で繰り返し示唆される通りであろう。
残念ながら、多くのテーマが浅く広く扱われているとの印象がぬぐいきれない。 十分な根拠なしの断定が目に付き、関連して扱われるべきだが著者の視点から 抜け落ちている事項もある。なにより、標準英語文に漢字を挿入する国際共通語の 提案はやはり「荒唐無稽」であろう。 (後藤斉)
[岩波書店・四六判274ページ・本体2000円]
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