木村邦博 2010年度の授業のシラバス (Last Updated 10/02/10)

(注)東北大学では、セメスターに次のような番号をつけている(学部・大学院それぞれ)。

4-9月 10-3月
1年次   1   2
2年次   3   4
3年次   5   6
4年次   7   8


計量行動科学研究演習I/行動科学演習
「ジェンダーと階層帰属意識の計量分析」
(大学院博士前期課程向け第1セメスター/学部3年生向け第5セメスター 月曜日 13:00-14:30)

1. 基本方針
 ジェンダーと階層帰属意識 (class identification) に関して計量行動科学的方法でアプローチした研究を取り上げ、検討する。特に、海外における代表的な文献を読み、この分野の研究動向を学ぶとともに、今後どのような研究が必要かを考える。同時に、学術的な英語文献の読解力、行動科学的思考法、重回帰分析・パス解析・ログリニア分析・ロジスティック回帰分析などの多変量解析の手法を身につけることをめざす。
 なお、学部生の場合、第6セメスターの行動科学演習「階層意識の計量分析」をあわせて履修することが望ましい。
 また、大学院生の場合、この科目は専門社会調査士資格認定科目Iに対応している。同時に、グローバルCOE授業科目・国際高等研究教育院授業科目も兼ねている。

2. 教科書・参考文献
 「教科書」という形のものは用いない。以下に挙げるような学術論文を検討の対象として用いる。また、参考文献も例示しておく。

【学術論文(演習の中で検討するもの)】

【参考文献(木村の観点からみて主なもの;ほかにもまだまだある)】
(1) ジェンダーと階層帰属意識に関するもの
(2) 検討対象の学術論文で使われている多変量解析の手法に関するもの

3. 授業の進め方
(1) この授業で取り上げる学術論文について、内容の把握、疑問・問題点の指摘と討論を行う。ひとつの論文につき(参加者数、長さや内容などに応じて)1〜3名の担当者を割り当て、内容・分析手法と問題点などに関する報告をしてもらう。ひとつの論文を複数名で担当する場合、機械的に分担してしまうのでなく、論文全体の内容を担当者全員が把握し、各回の報告がつながるように、共同で勉強や報告の準備を行うこと。
  報告と討論は、各論文について2回に分けて行う。そのうち第1回目は、内容について理解を深め、問題点や今後の課題について考えることを目的とする。第2回目は、特に、用いられている計量分析の手法について、報告者から解説をしてもらい、そのほかの人から質問などをしてもらう中から、その手法の特徴や用途などについて参加者全員が把握することを目指す。
(2) 学部生の場合、広く階層・階級と教育・ジェンダー・家族・労働・階層意識に関するその他の先行研究(授業で用いる学術論文に引用されているものや、各自が文献検索をして見つけたものなど)も参照しつつ、問題・課題の明確化を図る。大学院生の場合には、さらに、このテーマに関してどのような計量的研究が行われているかを調べるとともに自分が利用可能な調査データで追試や展開を試みてみるとよいだろう。
(3) 特に学部3年生の場合、以上の考察を踏まえ、今後の研究の展望を考え、行動科学研究室で利用可能な社会調査データ(SSM調査、高校生調査、静岡女性調査など)を用いた追試を企画する。(第6セメスターの行動科学演習「階層意識の計量分析」で、実際に追試を行ってみることになる。)これが、受講生諸君の卒業研究・卒業論文につながることを期待している。


4. スケジュール(予定)

───────────────────────────────────────────
 回  月/日         内容                                                        担当
───────────────────────────────────────────
  1   4/12    授業計画の説明
        19    報告の準備、相談。特に木村(近刊), 盛山(1998)を読んでおく。
  2     26    Felson and Knoke (1974): 内容理解
  3   5/10    Felson and Knoke (1974): 方法的検討(重回帰分析とパス解析)
  4     17    Erikson and Goldthorpe (1992): 内容理解
  5     24    Erikson and Goldthorpe (1992): 方法論的検討(ログリニアモデル)
  6     31    Davis and Robinson (1998): 内容理解
  7   6/ 7    Davis and Robinson (1998): 方法論的検討
              (ロジスティック回帰分析)
  8     14    Baxter (1994): 内容理解
  9     21    Baxter (1994): 方法論的検討
              (ロジスティック回帰分析におけるモデル比較)
 10     28    Yamaguchi and Wang (2002): 内容理解
 11   7/ 5    Yamaguchi and Wang (2002): 方法論的検討
              (重みづけパラメータを導入したロジスティック回帰分析)
        12    (木村が国際学会出席で海外出張中のため休講予定)
 12     26    総合的討論
───────────────────────────────────────────
   *内容・日程については、参加者数・集中講義日程などに応じて変更することがある。

5. レポート課題
5.1 課題
(1) 学部学生の場合
 自分が担当した論文(のうちひとつ)について、(もちろん他の文献との関係を意識しながら)内容の要約とコメントを行う。ただし、そのコメントは、今後(自分や他の人が)どのような研究をしていけばよいのか、ということを考える上で建設的なものであること。この課題に取り組むことで、既存の研究をもとに自分がどのように研究を展開していけばよいのか、というイメージをつかんでいただければ幸いである。
(2) 大学院生の場合
 英語で書かれた関連文献(「2. 教科書・参考書」の中で参考文献(1)としてあげたものでもよい;ただし、邦訳のあるものを除く)を自分で検索し、そのうちのひとつ(特にジェンダーと階層帰属意識の計量分析にもとづくものに限る;編著の場合は全体でなく収録論文ひとつでもよい)を選び、内容と計量分析手法の両方についてその紹介を行うとともに、それがこれまでの研究の歴史の中で持っている意味と、今後の研究の展開にとって持つ意義について考察する。(もちろん、執筆の過程で他の文献を参照することはかまわないし、むしろ推奨したい。)さらに、できる限り、自分が利用可能な調査データで追試や展開を試みてみる。

注意:近年のレポートには、レポート課題の趣旨から離れた内容や形式のものが見受けられることがある。このようなレポートの成績は「不可」とするので注意してほしい。

5.2 書式
 ワープロを使用し、A4判の上質紙に横書きで印字する。『行動科学研究マニュアル』の「卒研報告・修士論文執筆要項」に準じた書式とする。具体的には、A4判の紙に30行×35〜40字(全角)で印字(横書き)。ただし、マージンは上・下30mm、左・右25mmとする。この書式で4枚以上6枚以内とする(引用文献リスト・図表を含む)。少々長くなる分にはかまわないが、冗長になりすぎるのも問題なので、一応この枚数を目安とする。
レポートの冒頭には、タイトル、学籍番号・氏名、提出日を記しておく。また、ページ番号をふっておくこと。
5.3 提出期限と提出場所
 2010年8月9日(月)まで。行動科学分析室にある(スタッフへの配布物用の)レターケースの木村の棚に入れる。

6. その他
6.1 オフィス・アワー
 *曜日、**:**-**:**とする。
6.2 成績評価
 成績は、レポートと、出席や議論への参加の状況とにより、総合的に判断する。
6.3 【重要】夏休みにしておいてほしいこと
(学部3年生が第6セメスターの行動科学演習「階層意識の計量分析」を履修する場合)

 第6セメスターの行動科学演習「階層意識の計量分析」を履修する意思のある人は、夏休み中に、階層・階級と教育・ジェンダー・家族・労働・社会意識に関する文献を自分で検索し、興味を持ったものを読み、利用可能な社会調査データを用いて先行研究の知見を追試するにはどのようにすればよいか、あらかじめ予備的な検討をしておいてほしい。さらに、それと自分自身の卒業研究・卒業論文の構想とがどのように関連するかについても、考えてほしい。もちろん、夏休み中でも随時相談に乗るので、分からないことなどがあれば、木村の研究室に(アポイントメントを取った上で)来ていただければ幸いである。


計量行動科学研究演習II
「社会調査法への認知科学的アプローチ」
(大学院博士前期課程向け;第2セメスター 木曜日 10:30-12:00)

1. 基本方針
 近年、認知科学・認知心理学の方法や成果をもとに、社会調査法に反省・検討を加ようという試みが行われるようになってきた。そのひとつの流れが、教科書として取り上げるSirken, et al. (1999) などの CASM (Cognitive Aspects of Survey Methodology) である。このような研究動向についてレビューするとともに、そこでの知見を社会調査の現場(企画・準備・実査から成果報告に至るまでのプロセス)に実践的に活かす道を探究する。あわせて、このアプローチから調査者−被調査者関係に関してどのような洞察が得られ、それが社会調査の倫理の問題について考える際にどのように役立つかも検討する。

2. 教科書・参考文献
2.1 教科書

2.2 主な参考文献

3. 授業の進め方
 教科書のうち、Chaps. 6, 7, 8, 9, 10, 13, 15, 16, 19, 20, 21 を取り上げて、内容の把握、疑問・問題点の指摘と討論を行う。ひとつの章につき1人の報告者が報告する。他の参加者も事前にその章を読んでおき、質問・コメントを行う。その上で、全員で討論する。
 以上の討論を踏まえ、社会調査の方法をどのように向上させていけばよいかについて、ともに考えて行きたい。


4. スケジュール(予定)

───────────────────────────────────────────
 回  月/日         内容                                                        担当
───────────────────────────────────────────
  1  10/ 7  授業計画の説明、担当の決定
  2     14  報告の準備・相談
  3     21   6. Making Sense of Questions: An Interactional Approach
  4     28   7. The Respondent's Confession: Autobiographical Memory in
                the Context of Surveys
  5  11/ 4   8. Context Effects on Answers to Attitude Questions
  6     11   9. Is the Bandwagon Headed to the Methodological Promised
                Land? Evaluating the Validity of Cognitive Interviewing
                Techniques
  7     18  10. Income Reporting in Surveys: Cognitive Issues and
                Measurement Error
  8     25  13. The Use of Computational Cognitive Models to Improve
                Questions on Surveys and Questionaires
  9  12/ 2  15. Survey Error Models and Cognitive Theories of Response
                Behavior
 10      9  16. New Connectionist Models of Mental Representation:
                Implications for Survey Research
 11     16 19. Customizing Survey Procedures to Reduce Mesurement Error
 12   1/ 6  20. Visualizing Categorical Data
 13     13  21. Statistical Graphs and Maps: Higher Level Cognitive 
                Processes
       20  (予備日)
───────────────────────────────────────────
   *参加者の人数などに応じて、取り上げる章やスケジュールを変更することがある。

5. レポート課題
5.1 課題
 自分の担当した章のうちひとつについて、授業時間での討論を活かして、その内容を紹介するとともに、コメントを加えた文章を作成する。その際、その章に関連した最近の文献を自分で検索して読み、その文献から得た情報も活用すること。
5.2 書式
 ワープロを使用し、A4判の上質紙に横書きで印字する。『行動科学研究マニュアル』の「卒研報告・修士論文執筆要項」に準じた書式とする。具体的には、A4判の紙に30行×35〜40字(全角)で印字(横書き)。ただし、マージンは上・下30mm、左・右25mmとする。この書式で5枚以上8枚以内とする(引用文献リスト・図表を含む)。(少々長くなる分にはかまわないが、冗長になりすぎるのも問題なので、一応この枚数を目安とする。)
レポートの冒頭には、タイトル、学籍番号・氏名、提出日を記しておく。また、ページ番号をふっておくこと。
5.3 提出期限と提出場所
 2011年2月7日(月)まで。行動科学分析室にある(スタッフへの配布物用の)レターケースの木村の棚に入れる。

6. その他
6.1 オフィス・アワー
 *曜日、**:**-**:**とする。
6.2 成績評価
 成績は期末レポートおよび授業での活動をもとに総合的に評価する。


行動科学概論
「社会調査の基礎」
(学部2年生向け第3セメスター 月曜日 10:30-12:00)

1. 基本方針
 現代社会を特徴づける人間活動のひとつである社会調査について、その進め方(調査内容の決定、調査対象の決定、調査の実施方法、調査結果の分析方法とまとめ方)を知るとともに、その歴史と成果について学習する。個人が身の回りからさまざまな情報を得る場合と社会調査との違いに着目しながら、細かい技法よりも、基本的な考え方を修得することを目指す。
 なお、この授業科目は社会調査士資格認定標準科目Aに対応している。(社会調査士資格認定標準科目Bに対応している)第4セメスターの行動科学概論(「社会調査の実際」)とあわせて履修することが望ましい。また、第3セメスターで同時に開講されている「人文統計学」(社会調査士資格認定標準科目Cに対応)も受講していれば、なお理解が深まるだろう。

2. 教科書・参考書
【教科書】

【参考文献(特に重要なもののみ】

3. 授業の進め方
 基本的に、教科書に沿って授業を進めていく。ただし、教科書8章5節と13章の内容については第4セメスターの行動科学概論(「社会調査の実際」)で取り上げること、14章は扱わないことに注意していただきたい。また、教科書は放送大学のテキストなので、簡略にしか書かれていない傾向もある。そこで、教科書の内容を補足するための資料を随時配布し、もう少し厳密に説明を加える。
 なお、この補足資料とは別に、木村が各回の内容について特に大事と思われる点について、「問い」の形で記したメモも配布する。授業中には、このメモに書かれた問いに関して、受講生から発言・意見を求め、その発言・意見を糸口にして解説を加えていく(そしてさらに受講生からの質問や意見などを求めていく)という形を取りたい。そのためには予習・復習を欠かさないでいただきたい。この意味で、基本的に、「講義を一方的に聴いているだけ」ということは許されないので、注意していただきたい。
 遅刻は厳禁である。その理由は主に2つある。第一に、諸君が話を途中から聞いてもおそらく理解できないからである。第二に、諸君が社会調査という、「ソーシャル・スキル」がとりわけ求められる活動を志す者であるならば、約束の時刻を守るということの重要性を理解してほしいと考えているからである。


4. スケジュール(予定)

───────────────────────────────────────────
 回  月/日         内容
───────────────────────────────────────────
  1   4/12    授業計画の説明
               1. 現代社会と社会調査
               2. 社会調査の用途と歴史
  2     19     3. 調査内容の決定(1): 調査テーマと調査事項
  3     26     4. 調査内容の決定(2): 調査票の作成
  4   5/10     5. 調査対象の決定(1): 標本調査の方法
  5     17     6. 調査対象の決定(2): サンプリング分布と統計的推測(その1)
        24    (学部2年生を対象にした健康診断のため休講)
  6     31     6. 調査対象の決定(2): サンプリング分布と統計的推測(その2)
  7   6/ 7     7. 調査の実施と処理(1): 実査と調査員
               8. 調査の実施と処理(2): 調査票の点検とデータ作成
  8     14     9. 結果の集計と分析(1): 基本統計量
              10. 結果の集計と分析(2): 因果分析の方法(その1)
  9     21    10. 結果の集計と分析(2): 因果分析の方法(その2)
 10     28    11. 聴取調査の方法
 11   7/ 5    12. 調査報告をまとめる
        12    (木村が国際学会出席で海外出張中のため休講予定)
 12     26    15. 調査者と被調査者
 13   8/ 2    期末試験(補講期間中に実施)
───────────────────────────────────────────
  *内容・日程については、集中講義日程などに応じて変更することがある。

5. 期末試験について
 補講期間の8月2日(月)に、期末試験を実施する。問題の形式は「論述式」を予定している。授業の内容を理解した上で柔軟な思考ができるようになっていないと解答できないような内容の問題を考えているので、「授業を聞いていればよく、特に試験の準備はいらない」と思わないでいただければ幸いである。
 なお、(筆記用具以外では)教科書・参考書・配付資料・ノート・参考文献・電卓・定規のみ、持ち込み(使用)を許可する。持ち込み(使用)不可とするものの例としては、携帯電話、電子辞書、パソコンなどを挙げておく。(たとえば、携帯電話の電卓機能を使うのは不可とする。メール等によってカンニングをしているのと外見上区別がつかないためである。「李下に冠を正さず!」)

6. その他
6.1 オフィス・アワー
 *曜日、**:**-**:**とする。
6.2 成績評価
 成績は、基本的に期末試験の得点による。ただし、合否ぎりぎりのラインにある場合には、出席状況や授業運営に対する貢献を考慮する。


行動科学概論
「社会調査の実際」
(学部2年生向け第4セメスター 月曜日 10:30-12:00)

1. 基本方針
 社会調査を遂行していく上で理解しておくべき、データ蒐集やデータ分析の主要な技法について解説する。基本的な考え方と同時に、現実に遭遇する具体的な問題を取り上げ、どのように実際的に対処していくかという観点を重視して解説する。特に、標本抽出の考え方、測定・因果推論の考え方、社会調査研究の具体例の紹介に重点を置く。社会調査データの分析手法の基礎については、この社会調査の具体例を紹介する中で説明する。
 なお、この授業科目は社会調査士資格認定標準科目Bに対応している。第3セメスターの行動科学概論(「社会調査の基礎」、社会調査士資格認定標準科目Aに対応)をすでに履修している(できれば単位を取得している)ことが望ましい。
 これに関連して、話の流れや時間的な制限などの理由から、第3セメスターの行動科学概論(「社会調査の基礎」)で取り上げることのできなかった、パネル調査・国際比較調査やテキスト・データ分析などに関することは、この授業の方で取り上げる。他方、調査票設計・ワーディングや因果推論の基礎などについては、すでに第3セメスターの行動科学概論(「社会調査の基礎」)で、ある程度詳しく説明したし、他の授業でも扱われているので、この授業では省略したり、より高度な話題について解説したりすることにする。

2. 教科書・参考書
 講義全体を通しての「教科書」となるものは特に指定しない。ただし、コーホート分析・パネル調査・国際比較調査について説明する際には、第3セメスターの行動科学概論(「社会調査の基礎」)の教科書である原・浅川 ([2005] 2009) を参照するので注意してほしい。そのほかの話題については、配付資料やコンピュータを用いたプレゼンテーションなどを適宜利用しながら、講義を進める。なお、特に重要な参考書のリストを以下に示しておく(この中には、授業で直接的に参照するものもある)。

【参考書(特に重要なもののみ;その中でも*印は必携)】

3. 授業の進め方
 基本的に、各回の内容に即した配付資料やコンピュータを用いたプレゼンテーションなどを適宜利用しながら、講義を進める。
 この配布資料の中で、受講生が講義内容をどれくらい理解できているかを確認する手助けとなるような「問い」を提示する。授業中には、この問いに関して、受講生から発言・意見を求め、その発言・意見を糸口にして解説を加えていく(そしてさらに受講生からの質問や意見などを求めていく)という形を取りたい。そのためにも、ぜひ予習・復習を欠かさないでいただきたい。この意味で、基本的に、「講義を一方的に聞いているだけ」ということは許されないので、注意していただきたい。
 なお、遅刻は厳禁である。その理由は主に2つある。第一に、諸君が話を途中から聞いてもおそらく理解できないからである。第二に、諸君が社会調査という、「ソーシャル・スキル」がとりわけ求められる活動を志す者であるならば、約束の時刻を守るということの重要性を理解してほしいと考えているからである。


4. スケジュール(予定)

───────────────────────────────────────────
 回  月/日         内容
───────────────────────────────────────────
  1  10/ 4   授業計画の説明
  2     18   標本抽出の考え方の基礎(1):サンプリング分布と統計的推測
  3     25   標本抽出の考え方の基礎(2):系統抽出、多段抽出、層化抽出
  4  11/ 1   標本抽出の考え方の基礎(3):標本規模の決定
  5      8   測定と分析の方法論的基礎(1):実験と社会調査の違い
  6     15   測定と分析の方法論的基礎(2):社会調査とデータ分析の目的と方法
  7     22   測定と分析の方法論的基礎(3):測定と尺度構成
  8     29   コーホート分析とパネル調査:現状と課題(原・浅川 [2005] 2009, 13章)
  9  12/ 6   国際比較調査:現状と課題(原・浅川 [2005] 2009, 13章)
 10     13   社会調査の実際(1):階層帰属意識研究の例(重回帰分析など)
 11     20   社会調査の実際(2):性別役割意識研究の例(ログリニア分析など)
 12   1/17   社会調査の実際(3):テキスト・データ分析の例(多次元尺度構成法など)
 13     24   期末試験
───────────────────────────────────────────
  *内容・日程については、授業の進行状況などに応じて変更することがある。

5. 期末試験について
 最終日の1月24日(月)に、期末試験を実施する。問題の形式は「論述式」を予定している。
 なお、(筆記用具以外では)教科書・参考書・配付資料・ノート・参考文献・電卓・定規のみ、持ち込み(使用)を許可する。持ち込み(使用)不可とするものの例としては、携帯電話、電子辞書、パソコンなどを挙げておく。(たとえば、携帯電話の電卓機能を使うのは不可とする。メール等によってカンニングをしているのと外見上区別がつかないためである。「李下に冠を正さず!」)

6. その他
6.1 オフィス・アワー
 *曜日、**:**-**:**とする。
6.2 成績評価
 成績は、基本的に期末試験の得点による。ただし、合否ぎりぎりのラインにある場合には、出席状況(遅刻をしないことなども含む)や授業運営に対する貢献を考慮する。


行動科学演習
「階層意識の計量分析」
(学部3年生向け;第6セメスター 月曜日 13:00-14:30)

1. 基本方針
 階層帰属意識、満足感、不公平感、政治意識、学歴意識、性別役割意識など、広い意味での階層意識について、既存の社会調査データの計量分析(「2次分析」による追試)を通して探求を行う。先行研究を検討し、問いや疑問(「なぜ?」)を明確化し、適切なデータセットを選択し、仮説を構築し、その仮説から導かれた予想がデータの統計的分析から支持されるか確かめる。さらに、その成果を、最終的に「報告書」の形にまとめる。このようにして、社会調査データの統計的分析を用いた研究のイメージを体得してもらうことも、この演習のねらいに含まれる。
 人文統計学・行動科学基礎実習などデータ分析に関する授業を履修していることを前提にする。第5セメスターの行動科学演習「ジェンダーと階層帰属意識の計量分析」を履修していたことが望ましい。

2. 主な参考文献

3. 授業の進め方
 受講生(学部3年生)に対して期待するのは以下のようなことである。第5セメスターの行動科学演習での勉強をふまえ、また他に夏休み中に読んでおいた文献などもふまえ、先行研究を検討し、各自の研究テーマ・課題を確定するとともに、今後の展望を考える。さらに、その展望にもとづいて、行動科学研究室で利用可能な社会調査データ(SSM調査、高校生調査、静岡女性調査など)を用いた追試を企画・実施する。中間報告と最終報告で、その成果を報告する。その際、先行研究でどのような「問い」がたてられ、その問いに対してどのような方法でアプローチがなされ、どのようなことが明らかになったのか、また依然として明らかになっていないのはどのようなことであり、その解明にはどのようなことが必要か、といったことをじっくりと考えて分析・考察を行っていただきたい。この演習での経験が、受講生諸君の卒業研究・卒業論文につながることを期待している。

4. 利用可能な社会調査データについて(主なもの)
(1) 社会階層と社会移動全国調査(SSM調査:1955, 1965, 1975, 1985, 1995)
 日本の階層構造と階層意識に関する代表的な継続的調査研究。1955年から10年ごとに実施されている。女性が対象に含まれるようになったのは1985年調査から。直井ほか (1990)、盛山ほか (1998)、盛山ほか (2000)、富永 (1979) などを参照。
(2) 教育と社会に対する高校生の意識調査(高校生調査:第1次〜第6次)
 宮城県内(第2次は仙台圏以外、それ以外は仙台圏)の高校生とその両親を対象。主な調査項目は、進路志望、不公平感、文化資本、性別役割意識(第3次調査以降)、学習意識(第4次調査以降)など。詳しくは、東北大学文学部教育文化研究会 (1988)、海野・片瀬 (1990)、鈴木・海野・片瀬 (1996)、片瀬 (2001)、片瀬・木村・阿部(2005)、片瀬 (2005)、海野・片瀬 (2008)、木村 (2009) を参照。
(3) 現代女性の生活と意識に関する調査 (1992, 1993)
 静岡市内の既婚女性で、夫が生存しており、末子が小学校在学中の人を対象。主な調査項目は、家庭生活(家事分担など)、社会的ネットワーク、階層意識(階層帰属意識、不公平感など)、性別役割意識、ほか。詳しくは、木村・野沢 (1994) を参照。

5. スケジュール(予定)

───────────────────────────────────────────
 回  月/日         内容
───────────────────────────────────────────
  1  10/ 4    授業計画の説明
  2     18    先行研究の検討と課題設定に関する報告
        25    (行動科学集中講義のため休講予定)
  3  11/ 1    利用可能な既存データによる先行研究の追試(1)
  4      8    利用可能な既存データによる先行研究の追試(2)
  5     15    利用可能な既存データによる先行研究の追試(3)
  6     22    中間報告(1)
  7     29    中間報告(2)
  8  12/ 6    利用可能な既存データによる先行研究の追試(4)
  9     13    利用可能な既存データによる先行研究の追試(5)
        20    (行動科学集中講義のため休講予定)
 10   1/17    最終報告(1)
 11     24    最終報告(2)
───────────────────────────────────────────
  *授業時間以外にもコンピュータ実習室を活用してデータ分析等を進めてほしい。

6. レポート課題
6.1 課題
 階層帰属意識、満足感、不公平感、政治意識、学歴意識、性別役割意識など、広い意味での階層意識について、各自の研究テーマに関する先行研究の知見を追試した結果について、報告し、考察を行う。
6.2 書式
 ワープロを使用し、A4判の上質紙に横書きで印字する。『行動科学研究マニュアル』の「卒研報告・修士論文執筆要項」に準じた書式とする。具体的には、A4判の紙に30行×35〜40字(全角)で印字(横書き)。ただし、マージンは上・下30mm、左・右25mmとする。この書式で4枚以上6枚以内とする(引用文献リスト・図表を含む)。(枚数が多くなる分にはかまわないが、あまり散漫になるのも考えものなので、一応この程度とする。)
レポートの冒頭には、タイトル、学籍番号・氏名、提出日を記しておく。また、ページ番号をふっておくこと。
6.3 提出期限と提出場所
 2011年2月7日(月)まで。行動科学分析室にある(スタッフへの配布物用の)レターケースの木村の棚に入れる。

7. その他
7.1 オフィス・アワー
 *曜日、**:**-**:**とする積極的に相談に来ていただければ幸いである。。
7.2 成績評価
 成績は、レポートと、出席や議論への参加の状況とにより、総合的に判断する。


研究課題] [編著書・論文等] [略歴] [シラバス] [その他

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