中村完先生のご逝去を悼む


本会初代代表者、東北大学名誉教授中村完先生は、2005年1月24日、 肺炎のため逝去された。まさに突然のご訃報であった。

中村先生のご経歴は、中村完教授退官記念号とした本誌第4号に掲載の通りで あるが、簡潔に繰り返せば以下の通りである。1932年2月20日、栃木県宇都宮市に お生まれ。1956年東京教育大学文学部言語学専攻を卒業の後、天理大学 おやさと研究所助教授、韓国外国語大学日語科招聘講師を経て、1970年4月 東北大学文学部に発足間もない言語学講座の助教授として着任。1981年1月 教授に昇任し、1995年3月停年により退官。この間、言語学講座を担当、 また、新設された言語交流学講座も当初兼担された。

先生は、東京教育大学において河野六郎博士の薫陶を受け、一貫して朝鮮語学、 とりわけ中期から近世にいたる朝鮮語の歴史言語学的研究に従事された。 文法研究を通しての中期朝鮮語の全体的把握および厳密な文献学的考察に 裏打ちされた朝鮮語の文字文化の考察は高く評価されるところであり、 このことは、先生が2000年に韓国東崇学術財団から第4回東崇学術賞を 受賞したことに如実に示されている。

先生は東北大学文学部言語学講座の草創期をお一人で担われ、その基礎を固め、 25年の在任期間中に研究と教育をとりまく環境が変化しつづけるなかで 講座の発展に絶えず意を用いられた。とりわけ、1988年から数年をかけて、 言語学講座が国語学講座とともに新設講座を加えて新しく日本語学科を作るに あたっては、先生の多大なる尽力があったことは言うまでもない。本会が 1992年に発足したのも、このような講座の発展を背景としてのことであった。

先生は退官と前後して体調を崩されることが多くなられていたが、退官後は 野鳥の観察や俳句などを楽しんでおられるとも伺っていた。直接お会いする機会は 減っていたが、突然の訃報に接して、なお我々後進へのご指導をいただき たかったという無念の思いを禁じることができない。ご冥福をお祈りする。

なお、先生はご生前の功により従四位瑞宝中授章を追贈された。

東北大学言語学研究会
後藤 斉

『東北大学言語学論集』No.14 (2005) 掲載


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2005-08-12T11:54:47+09:00
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