リンクは自由!
『月刊言語』第28巻(1999)2月号, pp.74-75 掲載
日本語の方言を扱うウェブサイトに関しては、山本和英氏の「ふるさとの方言」 (http://www.itl.atr.co.jp/dialect/) が早くから網羅的なリンク集として機能している。ここから リンクしてあるサイトの多くは俚言集に近く、体系的な記述とは言い難いが、「辞典」「講座」と 銘打ったものや、かな表記の不完全さを補うための音声データをもつものも目立つ。 各地の小中学校で方言を積極的に取り扱っていることなども含め、インターネット時代の 方言意識という観点からこの種のウェブサイトの多様さは興味深い現象ではなかろうか。 例えば、ラジオ沖縄の方言ニュース (http://www.cosmos.ne.jp/rok/newsfram.html) を聞くのに 地理的制約はない。また、後藤文彦氏は「石巻日本語東京日本語辞典案」を掲げるほか、 石巻日本語表記の頁 (http://plaza22.mbn.or.jp/~gthmhk/isnmg.html)で英語や「標準」日本語に対して 差別される側からの主張を「石巻日本語」によって展開し、さらにそれを文芸活動に使用している。
大学の授業の成果を発表するものとしては、弘前大学教育学部小倉肇ゼミによる 「津軽方言地図」 (http://www.fed.hirosaki-u.ac.jp/~ogura/tizu/tizu.htm) や岐阜大学教育学部佐藤貴裕研究室の 「美濃・尾張言語地図」(http://www.gifu-u.ac.jp/~satopy/chizu.htm) がある。一部だが、地図の解釈の説明もあるので、言語地理学の具体的な手法にも触れられる。 例えば、『蝸牛考』で有名な「かたつむり」を意味する語形が本州北端の津軽で示す 複雑な分布の解説は詳細で、読みごたえがある。この二個所の言語地図が印刷物の再利用であるのに 対して、広島大学学校教育学部高橋顕志研究室の「中国・四国言語地図」 (http://www.ipc.hiroshima-u.ac.jp/~hoogen/) では、コンピュータ出力の大量の地図をそのまま 画面で見ることができる。色数やページ数によるコストの上昇があまりないWWWの長所を生かした 効果的なプレゼンテーションだと言えよう。また、秋田大学教育文化学部日高水穂氏の 「秋田大学ことばの調査」 (http://cube.ed3.akita-u.ac.jp/staff/hidaka/tyousa/tyousa.html)では、授業時のアンケート調査を利用して、 大学生の使う地域言語の変容ぶりをグラフによって目に見える形で示している。
県立新潟女子短期大学福嶋秩子氏は 「言語地理学の部屋」 (http://www.nicol.ac.jp/~fukusima/inet/lg.html)で、言語地図の 作製・解析システムSEAL (Windows95用)を公開している。作成した地図の実例があるほか、 使用時のトラブルに対処するための配慮もあり、実際に利用者の要望によってシステムが 拡張されてもいる。
大阪樟蔭女子大学日本語研究センター (http://www.age.ne.jp/x/oswcjlrc/index.htm)のサイトでは、ダニエル・ロング氏の方言認知地図に関する ものを初めとする諸研究が積極的にウェブ上に載せられている。
おそらくあまり目立たないが資料性の高いものとして、明星大学柴田雅生氏による 「全国方言地図の項目対照表(LAJ番号順)」 (http://jcmac5.jc.meisei-u.ac.jp/dialect.htm)が ある。国立国語研究所編『日本言語地図』を基本に、その各項目が他の七種の資料の どの個所で扱われているかが一覧できる。井上史雄氏の「新方言辞典稿」 (http://triaez.kaisei.org/~yari/nddic/nddic.txt)も、改訂作業中とのことであるが、項目ごとに典拠資料が 明記してある。また、岐阜大学佐藤氏のサイトには 「江戸時代・東西方言対立語一覧」 (http://www.gifu-u.ac.jp/~satopy/tozai.html)もある。
方言を調査する側の体験談としては、Maco's word room (http://www1.nisiq.net/~macoto-s/)の「方言調査つれづれ日記」「方言調査日記2」や 山口大学人文学部乾研究室の 「琉球言語調査隊」 (http://www.sv.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~inui/inui/ryukyu/index2.html) などがあり、それぞれ具体的で おもしろい読み物になっている。
(ごとうひとし/言語学・ロマンス語学)
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