header
東北大学大学院文学研究科・文学部 英語学研究室

英語学研究室の紹介

英語学研究室の沿革

昭和38(1963)年東北大学文学部に新設された英語学講座に、安井 稔が初代講座担当教授として着任、同講座の基礎作りをした。安井は昭和37(1962)年に音韻論の分野では文学博士となっているが、統語論及び意味論の分野での著作も数多い。また世界の言語学会の動向に関心が深く、学生は、英語学のあらゆる分野における最先端の言語理論を学ぶことができた。

昭和40(1965)年には桑原 輝男が助教授として着任し、おもに音韻論を担当。昭和51(1976)年安井が退職した後は、平成元年まで桑原が教授として在任した。

昭和56(1981)年には、中村 捷が助教授として着任し、平成2(1990)年から教授として、統語論と意味論を担当している。また、平成6(1994)年に統語論・意味論の分野で博士号を取得している。平成6年に金子 義明が助教授として着任、統語論と形式意味論を担当している。

平成9(1997)年には、学部改組に伴い、大講座化された西洋文化学講座に属する専門分野となった。その際、英語学と英語解析学の2つの教授ポストを擁する体制となった

昭和57(1982)年には研究誌 『英語学論考』 が創刊され、また、国内外から多くの講師を招いて講演会を開くなど、さらに積極的な活動が行われている。

現在の研究活動

英語学研究室では、人間の言語知識・言語能力の科学的解明を中心課題とし、生成文法理論を理論的枠組みとした研究を行っている。研究対象となる言語は英語に限らず、日本語、フランス語、イタリア語など、すべての人間言語であり、統語的・意味的・音韻的側面からの研究が行われている。

研究の口頭発表の場としては、日本英語学会、日本英文学会、日本言語学会などがあり、毎年、数名の卒業生・大学院生が研究発表を行っている。また、学会でのシンポジウム・ワークショップには、教官や卒業生が司会者、あるいは講師として度々参加し、活躍している。また、学会とは別に、東北大学に海外から言語学者を招いて言語学ワークショップや研究会・講演会を行っている。 1987年には、第一回の日本語・日英語比較のワークショップ、また、1994年には第二回の日英語比較のワークショップが開かれ、全国から多数の参加者が集まる中、国内外の研究者が研究発表を行い、その成果はCurrent Topics in English and Japanese(ひつじ書房、1994) として出版されている。当専門分野の発表会として、講座開講当時からの月例会である「仙台英語学談話会」 があり、教官・院生による発表会が行われている。

論文投稿の場としては、日本英語学会の機関誌English Linguistics、日本英文学会の機関誌 『英文学研究』、日本言語学会の機関誌『言語研究』 をはじめ、東北大学文学会の研究誌である 『文化』、専攻分野研究誌である 『英語学論考』 などがあるが、海外学術誌への投稿も積極的に行われており、最近もThe Linguistic Review等に採用されている。

教官・卒業生などの編集・執筆による刊行物も数多くあり、辞典としては、安井 稔編 『新言語学辞典』 (研究社、1971)、安井 稔編 『例解現代文法辞典』 (大修館、1987)、荒木 一雄・安井 稔編 『現代英文法辞典』 (三省堂、1992)、原口 庄輔・中村 捷編 『チョムスキー理論辞典』 (研究社、1992) などがある。

専門書・解説書としては、大塚 高信也監修・安井 稔他編 『現代の英文法全12巻』 (研究社)、太田 朗編 『英語学体系全14巻』(大修館)、安井 稔監修 『現代の英語学シリーズ全10巻』 (開拓社) (これらのシリーズ中の数巻を卒業生が担当)、中村 捷・金子 義明・菊池 朗著 『生成文法の基礎』 (研究社、1989) などがあり、これらは、近年急速な進展を見せた生成文法理論を知るうえで欠かすことのできない文献として、多くの言語理論研究者に役立っている。

また、他大学との情報交換のために作られた研究ネットワークがあり、世界の最先端で次々と生産される未出版論文が非常に早い時期に入手できるようになっている。

研究室の教育と学生の研究活動

学部では、毎年、定員数のほぼ10人程度の学生が英語学を専攻分野としている。授業は、概論、各論、演習、講読に分かれており、英語の学力向上・拡充が計られるとともに、英語学の諸分野に関する標準的な知識が与えられ、4年次には、各自で研究テーマを選び、卒業論文を書く。

大学院生は、基本的には、自由に研究テーマを選び、各自研究を深めていくことになるが、理論上重要と思われる文献は、授業で取り上げ、厳密な検討を加え、議論を重ねる。授業とは別に、週に一度、院生独自で行う読書会があり、活発な議論が行われる。また、博士課程後期の学生が前期1年生のための読書会を開き、研究上の基礎知識、思考法などについて指導する。

研究室には、必要な文献のほとんどがあり、自由に利用できる。また、院生同士が活発に議論を交わし情報交換をする場として、また、学生の縦軸と横軸の関係を深める場としても研究室が利用されていて、学部生と院生の交流も密であり、早い段階から大学院への進学を希望する学部生も少なくない。

院生は、一年に二度、各自の研究について口頭発表を行い、論文として仕上げている。1996年度および1997年度にはそれぞれ一名ずつ課程博士論文が提出されている。

国際交流

海外から研究者を招いて、連続講義や講演会などを積極的に行っている。最近の例をあげれば、Henk van Riemsdijk氏(Tilberg大学)、Stuart Davis氏(Indiana大学)、Joseph E. Emonds氏 (Durham大学)(以上1996年度)、Merrill Garrett氏(Arizona 大学)、Cecile McKee氏(Arizona 大学)、James D. McCawley氏(Chicago 大学)、福井 直樹氏(California 大学)(以上1997年度)などの講演会を行っている。

また、常時複数名の大学院生が米国の大学に留学しているが、これまで、MIT、Connecticut 大学、Cornell大学等で延べ5名の博士号取得者がいる。現在も2名が留学中である。海外からの留学希望者も毎年数名いるが、94年度には、台湾からの留学生を1名受け入れている。