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言語学のための音響音声学
概論
音響音声学は、19世紀末に始まると言えるが、20世紀の特に後半に種々の測定機械が
開発されたことで大いに進展した。とりわけ、1990年代以降はパーソナル
コンピュータ上で音声データを録音・再生・保存し、音声分析を行うことが
極めて容易になった。必要なソフトウェアは高価な商品もあるが、個人や研究機関が
ネットワークを通じて公開しているフリーウェアにも優れたものがある。
また、音声データが公開されていることもある。
ただし、音響音声学のきちんとした理解には物理学・数学的基礎が必要であり、
信頼できる参考書を読むことが望ましい。
学会
- 日本音声学会
- (一社)日本音響学会
- 音のなんでもコーナーも。
- 情報処理学会音声言語情報処理研究会 (SIG-SLP)
- International Phonetic Association
- Acoustical Society of America
ソフトウェア
- 「インターネット言語学情報 第23回 ソフトウェア」
- 後藤、『月刊言語』第28巻(1999)11月号, pp.86-87.
- Vector Windows 画像&サウンド 音声 録音・再生
- 音声を扱うWindows用のフリーウェアとシェアウェア。
- Vector Mac 画像&サウンド 音声 録音・再生
- 音声を扱うMac用のフリーウェアとシェアウェア。
- SIL Software Products
- Speech Analyzer, IPA Helpなどあるが、サポート終了。
- 音声録聞見
- フリーウェアの音声分析ソフトウェア。
- Audacity
- オープンソースでクロスプラットフォームのレコーディング・サウンド編集ソフトウェア。
有用なサイト
- 上智大学理工学部情報理工学科荒井研究室
- 音響音声学デモンストレーションなど。
- 東京大学大学院情報理工学系研究科峯松研究室
- 音響音声学の講義資料など。
- 「インターネット言語学情報 第8回 音声学」
- 後藤、『月刊言語』第27巻(1998)8月号, pp.102-103.
- 『日本語話し言葉コーパス』
- 国立国語研究所等によるプロジェクト。
- 音声資源コンソーシアム
- 音声資源のデータベース。国立情報学研究所による。
- Division of Psychology and Linguistic Sciences, University College London (UCL)
- 音声学の中心の一つ。各種フリーウェアの配布も。
- Internet Institute for Speech and Hearing
- 音声言語と聴覚のための仮想情報センター。UCLで配布のフリーウェアの別サイト。Web版あり。Mark Huckvale氏による。
- Speech Internet Dictionary
- John Maidment氏(UCL)による。
- Institute of Phonetic Sciences, Amsterdam
- フリーウェア(Praat)・音声コーパスの配布。関連リンク集も。
- Division of Speech, Music and Hearing, KTH, Stockholm
- wavesurfer
- 音声分析フリーウェア
- U. W. Linguistics Phonetics Laboratory
- Praatのスクリプトなど。
- Prof. Peter Ladefoged
- UCLAラディフォギッド教授(2006年没)。著書の付録CD-ROMの内容が掲載されている。
- 音響音声学デモンストレーション
- 上智大学理工学部情報理工学科 荒井隆行研究室。
- Phonetics resources
- Jennifer Smithさん。豊富な音声学リンク集。
- (株)アニモ
- SUGI Speech Analyzer の製造販売元。
- ARI エー・アール・アイ
- 音響機器・書籍やその他の関係情報がまとまっている。
- ノートパソコンで手軽に音響測定入門
- 吉正電子株式会社による。ソフトウェアの試用も。
- カワイサウンド技術・音楽振興財団
- 研究報告書が読める。
参考文献
日本語で読める、あまり高度に専門的でないもの。
- 石井直樹 2002 『音声工房を用いた音声処理入門』 コロナ社.
- 説明が具体的。良書。市販ソフトウェア(音声工房。販売終了)の試用版(60日限定)つき。
- 石井直樹 2018 『フリーソフトを用いた音声処理の実際』 コロナ社.
- 説明が具体的。良書。WASP、Praatほかのソフトウェアの機能や操作法だけでなく、理論や分析法についても詳しい。
- 今石元久編 2005 『音声研究入門』 和泉書院.
- 方言を含めた日本語の音声の具体例が多い。フリー版の ソフトウェア(音声録聞見) とサンプル音声データがはいったCD-ROMが付属。
- 今泉 敏 2007 『言語聴覚士のための音響学』医歯薬出版.
- わかりやすくてよいが、教科書にするには少し高価なのが難点。
- 岩宮眞一郎 2007 『図解入門 よくわかる 最新 音響の基本と仕組み』 秀和システム.
- 科学、技術、文化にわたる幅広い解説。図解でわかりやすいが、詳しくはない。
- 大蔵康義 1999 『音と音楽の基礎知識』 国書刊行会.
- 音声言語は扱われないが、音の物理と工学の基礎が分りやすく、かつ詳しく解説してある。
- 小方厚 2007 『音律と音階の科学』(ブルーバックス B-1567) 講談社.
- 音階の物理学と心理。著者による正誤表。
- 加銅鉄平・山川正光 1998 『オーディオデータ便利帳』 誠文堂新光社.
- 資料集として便利。
- 川原繁人 2018 『ビジュアル 音声学』 三省堂.
- 調音音声学ではMRI画像が印象的だが、音響音声学も基本から実践まで。補足資料サイトあり。
- 北原真冬・田嶋圭一・田中邦佳 2017 『音声学を学ぶ人のためのPraat入門』 ひつじ書房.
- むしろスクリプトの書き方など高度な使用の参考になる。
- 北村俊樹 1996 『Windowsで知る音声と運動の実験室』森北出版.
- 基礎的な実験ができるソフトウェアと音声データつき。
(フリーの機能限定版:
作音,
音知)
- 北脇信彦 1999 『ディジタル音声・オーディオ技術』 電気通信協会.
- オーディオ技術、特に符号化技術について。
- 久野和宏他 2009 『音と振動との出会い 音響学ABC』 技報堂出版.
- 音響の基礎から建築、環境、音楽まで。音声言語はあまり詳しくない。CD-ROM付き。
- ケント, R. D. & C. リード 1996 『音声の音響分析』 海文堂.
- 基礎からかなり高度な部分までわかりやすい解説。良書。
- 小泉宣夫 2005 『基礎 音響・オーディオ学』 コロナ社.
- 音の基礎から音楽・音声までを扱う非理工系向け教科書。
- 坂本真一・蘆原郁 2016 『「音響学」を学ぶ前に読む本』 コロナ社.
- 音響学の基礎を分かりやすく扱う非理工系向け教科書。
- 重野 純 2014 『音の世界の心理学』第2版 ナカニシヤ出版.
- 生理学や物理学の基礎にも詳しく、種々の心理学的実験の紹介もある。
- 城生佰太郎編 2001 『コンピュータ音声学』(日本語教育学シリーズ 第3巻) おうふう.
- 専門的だが読みやすい。
- 城生佰太郎 2008 『実験音声学入門』サン・エデュケーショナル.
- 基礎の解説は多くないが、言語音の音響分析の例が豊富。ほかに生理実験、脳波実験についても。
- 杉藤美代子 1994-1999 『日本語音声の研究 1〜7』 和泉書院.
- 7巻の著作集。単音・韻律的特徴・談話など扱う範囲が広い。
- 鈴木誠史 2005 『声のふしぎ百科』 丸善.
- 日常的な話題を音響学的に分かりやすく説明している。
- スピークス, チャールズ E., 荒井隆行他監訳 2003 『音入門 ―聴覚・音声科学のための音響学―』 海文堂.
- 音の物理的側面を数式をなるべく使わないで解説。
- 竹内京子・稲田朋晃編 2023 『音響・音声学』(Crosslink 言語聴覚療法学テキスト) メジカルビュー社.
- 言語聴覚士向けの音声学・音響学・聴覚心理学の参考書。
- 田窪行則他 2004 『音声』(言語の科学2) 岩波書店.
- 言語学的音声学よりはむしろ生物学的基礎から音声合成・認識に詳しい。
- 谷口文和・中川克志・福田裕大 2015 『音響メディア史』 ナカニシヤ出版.
- エジソンから現代までの音響技術の歴史を概観。
- 千葉勉・梶山正登 杉藤美代子・本多清志訳 2003 『母音』 岩波書店.
- 音源フィルター理論の基礎を築いた世界的名著(1941)の翻訳。
- テイラー, チャールズ 1998 『音の不思議をさぐる 音楽と楽器の科学』 大月書店.
- 音楽に造詣の深い物理学者が語る音楽の科学。読みやすい。
- デニシュ, P. B. & E. N. ピンソン 1966 『話しことばの科学 その物理学と生物学』東京大学出版会.
- 古いが良書。もっとも、最新版の翻訳が望まれる(1993年の第2版以降は大きな変更はないようだが)。
- 中川聖一他 1990 『音声・聴覚と神経回路網モデル』 オーム社.
- 専門的。工学と生理学。音響工学から音声言語をどう見ているかがわかる。
- 中村健太郎 2005 『図解雑学 音のしくみ』第2版,ナツメ社.
- 音全般について素人向けにわかりやすく説明している。
- 日本音響学会 1996 『音のなんでも小事典』 講談社.
- 音全般に関してやさしく解説しているが、体系的でない。
- 日本音響学会 2003 『新版 音響用語辞典』 コロナ社.
- 図やグラフも多く、信頼できる用語辞典。
- 日本音響学会 2016 『音響キーワードブック』 コロナ社.
- 基本術語がそれぞれ見開き2ページで分かりやすく解説されている。
- 日本音響学会編 2018 『 実験音声科学 ―音声事象の成立過程を探る―』 コロナ社.
- 平坂文男 2009 『実験音声学のための音声分析』 関東学院大学出版会.
- 音響分析の背景にある分析手法の基本に詳しい。ただし、予備知識なしではつらいか? 著者のサイトでソフトウェア配布。
- 東山三樹夫 2010 『音の物理』 コロナ社.
- 音響学の入門書。
- 広瀬啓吉編著 2006 『韻律と音声言語情報処理―アクセント・イントネーション・リズムの科学―』 丸善.
- 特定領域研究「韻律と音声処理」の研究成果。
- 古井貞煕 1992 『音響・音声工学』 近代科学社.
- 工学部学生向けの教科書。
- 古井貞煕 1996 『音声情報処理』 森北出版.
- 工学部学生向けの教科書。
- 古井貞煕・酒井善則 2004 『画像・音声処理技術』 電波新聞社.
- 音声処理の基礎から音声合成・音声認識の最新技術までを紹介。
- 藤村靖編著 1972 『音声科学』 東京大学出版会.
- 古くなった部分が多いが、この時代を代表する名著。
- 藤村靖 2007 『音声科学原論―言語の本質を考える』 岩波書店.
- 音声現象としての言語の本質に関する著者の研究の集成。
- 本多清志 2018 『実験音声科学 ―音声事象の成立過程を探る―』, コロナ社.
- 音響音声学の基礎から先端まで。調音にも詳しい。
- 森芳久 1997 『カラヤンとデジタル こうして音は刻まれた』, ワック出版部.
- エジソンからDVDまで、録音技術の歴史。CD付属。改訂版はCDがない?
- 山田恒夫他 2005 『XP対応 英語スピーキング科学的上達法』 講談社(ブルーバックスB1486).
- 豊富なMRI画像が印象的。ただし、(少なくとも第1刷では)p.95に重大な誤りがある。ソフトウェア付属。
- 吉澤純夫 2002 『Visual Basicで物理がわかる 音波シミュレーション入門』 CQ出版社.
- ソフトウェアでシミュレートして音の物理を学ぶ。ソフトウェア付属。
- 吉澤純夫 2006 『音のなんでも実験室 遊んでわかる音のしくみ』(ブルーバックスB1521) 講談社.
- 実験によって音の物理を学ぶ。
- 吉田友敬 2020 『言語聴覚士の音響学入門 2訂版』 海文堂.
- 物理の知識を前提としない音響学教科書。良書。音声データがネットにアップされている。
- ラディフォギッド, P. 1976 『音響音声学入門』 大修館書店.
- コンピュータ時代以前の記述だが、基本は変わらない。もっとも、第二版(1996)の翻訳が望まれる。
- ラディフォギッド, P. 1999 『音声学概説』 大修館.
- 調音音声学が主だが、音響音声学にも一章あてられている。このレベルを押さえておけば、ほぼ十分ともいえる。
- Ladefoged, Peter & Sandra Ferrari Disner 田村幸誠・貞光宮城訳 2021 『母音と子音 ―音声学の世界に踏み出そう―』 開拓社.
- 調音音声学と音響音声学を織り交ぜながら、幅広い言語の音声を扱う。原著第3版の翻訳。良書。
- Raphael, L. J., G. L. Borden, & K. S. Harris 廣瀬肇訳 2008 『新 ことばの科学入門 第2版』 医学書院.
- 音響学、音声言語の生成知覚を幅広く扱う。原著第5版の翻訳。良書だが、高価。サポートサイト「耳で聞く資料集」あり。
- ローゼン, R. & P. ハウエル 1998 『音声・聴覚のための信号とシステム』 海文堂.
- 音響工学基礎の詳しい解説。
- 「特集 言語音声の科学」 『月刊言語』 第31巻(2002) No. 11 (10月号).
- 様々な分野の寄稿者による。基本的なものも専門的なものもあり、体系的ではない。
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