東北大学方言研究センター

研究活動
消滅する方言語彙の緊急調査研究

2000年度から2002年度までの3年間、340項目の語彙項目について、全国2000地点に及ぶ方言地理学的調査を行いました。文部科学省特定領域研究「環太平洋の『消滅に瀕した言語』にかんする緊急調査研究」(代表:宮岡伯人)の一環として実施したものです。

「消滅する方言語彙の緊急調査研究」


研究代表者: 小林 隆(東北大学大学院文学研究科教授)
研究分担者: 篠崎晃一(東京都立大学人文学部助教授)

収集したデータは一部を報告書『消滅の危機に瀕する全国方言語彙資料』として公刊しました。残るデータについては、現在、整備を進めており、いずれ公表したいと考えています。
ここでは、この調査の概要について紹介します。
なお、一部のデータを地図化したものがあります。そちらもご覧ください。
(459KB)『「しまった!」と叫ぶときに何と言うか』(澤村美幸・小林隆)

方言一筆箋「ひざがしら」 方言住所録「赤ちゃん」) 方言絵葉書「お化け」 方言絵葉書「はずかしい」
方言一筆箋
「ひざがしら」
方言住所録
「赤ちゃん」
(川越めぐみ絵)
方言絵葉書
「お化け」「はずかしい」
(笠井聡子・澤村美幸・塚野麻衣子・中西太郎絵)

1.研究目的

伝統的方言の衰退が進む中、記録調査のためにわれわれに残された時間は乏しい。語彙については他の分野より研究が進んでいるとはいうものの、全国的な方言地理学的調査ということになると、ほとんど『日本言語地図』しかないのが実態である。この地図の跡を襲うような、日本の東西をカバーした分布調査が待たれていたのである。
そこで、本研究の目的を次のように設定した。

《日本語における消滅の危機に瀕する方言語彙を、全国にわたる方言地理学的な分布調査によって記録する。》

この研究によって、『日本言語地図』以来の全国的な方言分布調査を実施することができた。その結果は回収された調査票のかたちで保管されており、公開に向けて整理・データベース化を進めている。その先には、このデータを用いた第二の『日本言語地図』の作成作業が待ち構えている(小林隆2005)。

2.調査方法

2.1.通信調査法・協力機関

調査にあたっては通信調査法を採用した。全国という広い範囲を短期期に調査するには、現実的にこの方法しかなかったと言ってよい。通信調査法のメリット・デメリットについては実験的な調査により検討を行ったことがあり、小林隆(1988)に報告している。また、その結果をもとに、すでに2度の全国調査を実施した(第1回の調査については、小林隆1987に報告)。今回の調査は、方法論的にそれらの成果を踏まえている。

具体的には、郵便を使ってインフォーマントとの間で調査票をやりとりした。ただし、直接インフォーマントに調査票を送るのではなく、各市町村の教育委員会に協力を依頼した。すなわち、調査票は教育委員会に送り、教育委員会の判断でインフォーマントとして適当な高年層話者を選んでいただき、その人に調査票を渡してもらうという方法をとった。

実際の調査においては、調査票が、教育委員会から関連する別の機関(公民館、博物館、図書館など)に回される場合があった。また、調査依頼が、かならずしも適当な部署に届かなかったケースのあることが、催促状を送ってみて判明した。一方、この調査では、インフォーマントが直接調査票に記入し、投函する方式をとったにもかかわらず、教育委員会の担当者が聞き取りをしてくれたり、回収・返送を行ってくれたりするケースが目についた。

2.2.調査地点・インフォーマント

調査地点は、全国約3200市町村の中から2000市町村を選定した。その際、分布調査一般の方法に倣い、特定地域に集中させるのではなく、日本全土をまんべんなく覆うように対象市町村を配置した。それぞれの市町村の範囲でインフォーマントが選ばれるので、正確にはそのインフォーマントの居住地(生育地)が調査地点という扱いになる。

インフォーマントは、ひとつの調査票につき各市町村1名ずつとした。教育委員会あての依頼状に記したインフォーマントの条件は次のとおりである。

  1. その市町村に生育し、成人してからもほとんど他の市町村に出たことのない人
  2. 方言をよく残していると思われる人
  3. 男性(無理な場合は女性も可)
  4. 高年層で、できれば70歳以上の人。伝統的な方言を知りたいので、回答可能なかぎり高齢の人。

実際には、この条件に合わない人がインフォーマントに選ばれた場合もある。生育地や在外歴の点では、別の市町村に生まれたり、長期間、他地域で生活した経験をもつ人が含まれている。また、年齢については、教育委員会の職員が回答したと思われるケースで20歳代のインフォーマントがいるが、多くは50歳代から80歳代に分布し、特に70歳代に集中している。

2.3.調査票

調査票は6種類を作成した。
 第1調査票第2調査票第3調査票第4調査票第5調査票第6調査票

調査票の名称は「方言記入票」とし、表紙にはフェイスシート項目を配置した。見返し(2ページ目)に回答の記入方法を記した「記入のしかた」を置き、3ページ目からが質問項目となる。最終ページには「調査項目一覧」を掲げた。
これを研究期間の3年間で、次のように実施した。

第1回調査(2000年度)
 第1調査票:63 項目
 第2調査票:53項目

第2回調査(2001年度)
 第3調査票:65項目
 第4調査票:46項目

第3回調査(2002年度)
 第5調査票:61項目
 第6調査票:52項目

各回2冊ずつの調査票を発送したことになるが、インフォーマントの負担を考慮し、教育委員会には原則としてそれぞれ別の人に回答してもらうよう依頼した。

2.4.質問法

以下に、調査文の一例を掲げる。

1、頭に生えている毛を何と言いますか。

参考:
アカマジ、アマジ、アンモ、オゴシ、カシラ、カシラガミ、カマチ、カミゲ、カミスジ、カミヒゲ、カラジ、カンザシ、ガンタ、クシ、ケバ、コーズカ、センガ、ツブリ、ヒゲ、ビンタ、ビンズラ、メメ

質問は上の例のように基本的に「なぞなぞ式」を採用し、なぞなぞによる説明が難しい場合は「共通語翻訳式」を用いた。また、必要に応じて挿し絵を利用した。さらに、インフォーマントが方言形を思い出す手がかりになるように、各地で使用されている方言形を「参考」として示した。通信調査の場合、なぞなぞ式に参考語形の提示を組み合わせることによって回収率が向上することは、過去に行った実験的な調査で検討済みであり、その成果に従った(小林隆1988)。
参考語形は、次の方法で選んだ。

a.全国で広く使用されている方言形を選ぶ。
具体的には、尚学図書編(1989)『日本方言大辞典』索引編(小学館)において、太字で示された語形(本編の見出し語形)で、2つ以上の使用地域情報があがっているもの

b.中央語史(文献に基づく)の上で使用された語形、いわゆる古語を選ぶ。
具体的には、芹生公男編(1995)『古語類語辞典』(三省堂)にあがっているもの

これらの規準によって選定した参考語形が、結果として多すぎたときには、a.の場合3つ以上の回答地点のものにしぼるとか、あるいは、似たような形態の語形は一方のみを選ぶなど、最終的に適当な分量になるよう調整した。

2.5.回収率

通信調査においては回収率が問題になる。第1回調査と第2回調査の回収率は次のとおりである(第2回は最終的な数字ではない)。

[回収率](2002年9月4日現在)
 第1回調査:1191市町村(59.6%)
 第2回調査:1149市町村(57.5%)

この回収率をどう評価するかはにわかには断じがたいが、例えば、小林が1986年に実施した同規模の調査では68.1%の回収率であった(小林隆1987)。その調査は国立国語研究所名で行ったこと、調査項目数が少なかったことなどが、今回との差に影響しているものと推測される。なお、1986年の調査もそうだが、今回の調査でも、催促状を使用している。つまり、調査票の回収がほぼ一段落したところで、教育委員会あてにインフォーマントへの依頼状況を確認するはがきを送った。これは最終的な回収率の向上に一定の効果をもたらしたと言える。

ところで、回収率には次に示すように地域的な差異の見られることも明らかになっている。事務局を東北大学に置いたことなどいくつかの理由が考えられるが、今後の調査におけるひとつの検討課題であろう。

[回収率の地域差](第1回調査の結果)
 東日本:東北67.1%、関東63.8%、中部63.3%
 西日本:近畿49.1%、中国59.7%、四国51.9%、九州57.3%
 それ以外:北海道56.1%、沖縄43.4%

2.6.調査項目

調査項目は第1調査票から第6調査票までを合わせて340項目になる。基本的に、これまでの調査で対象にならなかった項目であり、全国的な分布の解明が期待されるものである。主として3つの観点から項目を選定した。

  1. 『日本言語地図』の項目を補完する項目
  2. 方言地理学的調査が遅れている分野の項目
  3. 先行研究で成果の上げられている項目

これらの点を以下に少し詳しく解説してみたい。

(1)『日本言語地図』の項目を補完する項目

『日本言語地図』には、身体部位に関する項目が収められている。しかし、それは身体部位を網羅的にカバーしたものにはなっていない。例えば、足部では「くるぶし」「かかと」の2項目しかなく、「足」「もも」「ひざ」「ひざがしら」「すね」「ふくらはぎ」「足首」「足の甲」「足の裏」「土踏まず」といった項目は取り上げられていない。そこで、これらの項目を補うことを考えた。方言地理学では分布の興味を優先するあまり、調査項目間の関連性や体系性への指向が弱いと言われる。例えば、「くるぶし」を表す語形は「ひざがしら」を表す語形と歴史的な交渉をもつが、「ひざがしら」の地図がないため、その点を分布によって考察することが難しかった。いわゆる記述調査との有機的な連携をはかるためにも、同一意味分野の項目を充実させておくことは必要である。

(2)方言地理学的調査が遅れている分野の項目

上で述べたのは、すでに『日本言語地図』にいくつかの項目が取り上げられている分野への追加という観点である。一方、分野自体『日本言語地図』では対象にされていないという項目もある。例えば、意味分野では、職業、性格、料理、習慣・行事、地形、あいさつ言葉など、品詞では副詞や感動詞などが該当する。これらは、『日本言語地図』だけの問題でなく、全般に方言地理学的調査が遅れているものである。もちろん、これらが分布調査の対象とされにくかったことには理由がある。例えば、人の性格を表す言葉や副詞・感動詞の類は、その意味を正確に把握しにくく、方言間の比較も難しいことがひとつの障害になっていた。しかし、ここでは、そのような問題を抱えながらも分布の概観が明らかになることには意義があるという大局的な立場に立ち、一方、一定の例文により意味を細かく指定するといった工夫を行うことで、調査項目に採用することにした。

(3)先行研究で成果の上げられている項目

これは上の2つの観点と矛盾するように見えるが、正確には、「先行研究では成果が上げられてきたが、全国的な分布調査がなされておらず、その結果との対比が待たれている項目」と言うべきものである。先行研究の中には、地方ごとの方言地図はもちろんのこと、方言研究全般、あるいは文献学的な語史研究なども含めて考える。どのような項目が先行研究で取り上げられてきたかは、次のような目録類を利用して調査した。

佐藤喜代治編(1983)『語彙研究文献語別目録』(明治書院)
柳田征司(1991)「諸論考の取り上げた抄物・狂言語詞」同『室町時代語資料による基本語詞の研究』(武蔵野書院)
小林隆・白沢宏枝(2002)「方言地図項目一覧−主要語彙項目−」馬瀬良雄監修『方言地理学の課題』(明治書院)

例えば、「ありじごく」「あめんぼ」「みずすまし」「彼岸花」「末っ子」「お転婆」などといった項目は地域別の方言地図ではよく対象とされているが、全国調査がまだ行われていない。また、「新しい」「もったいない」といった項目は文献による語史研究では有名であるものの、方言分布からの検討がなされていなかったものである。これらの項目を調査することにより、従来の研究を深めることが可能である。

このほか、語形を固定しその意味のバラエティをみる項目を多めに取り入れたり、通信法による調査の可能性を探るために文法項目を一部試みたりした。以上の観点から選ばれる項目はかなりの数になるため、さらに、方言量の豊富なものや分布類型上興味深いものを優先するといった措置をとった。また、小林が1986年と1991年に実施した、類似の趣旨による全国分布調査の項目は原則として除いた。

《調査項目一覧》

調査項目(300項目)をある程度の意味分類、品詞分類をほどこして以下に掲げる。小林が1986年と1991年に実施した全国分布調査の項目(80項目)も関連があるので合わせて示す。項目名のあとの( )内の数字は、「‐」より前が調査票の種類を、「‐」より後が調査項目番号を表す。調査票の種類は、次のように表示した。

1 :今回調査(2000年)の第1調査票
2 :今回調査(2000年)の第2調査票
3 :今回調査(2001年)の第3調査票
4 :今回調査(2001年)の第4調査票
5 :今回調査(2002年)の第5調査票
6 :今回調査(2002年)の第6調査票
86 :1986年調査の調査票
91 :1991年調査の調査票

項目の配列は、『日本言語地図』の補完という趣旨に合わせ、『日本言語地図』の配列を参考にして並べてある。

《調査項目一覧》

感覚・感情・状態

けむたい(2‐1)、にがい(2‐2)、しぶい(2‐3)、えがらっぽい(2‐4)、だるい(2‐5)、調子が悪い(2‐6)、痛い(2‐7)、痛む(2‐8)、賢い(4‐19)、ずる賢い(4‐20)、ずるい(4‐21)、生意気だ(4‐22)、かわいい(4‐23)、かわいそうだ(4‐24)、はずかしい(4‐25)、さびしい(4‐26)、退屈だ(4‐27)、苦しい(4‐28)、うらやましい(4‐29)、もったいない(4‐30)、みっともない(4‐31)、新しい(4‐32)、粗末だ(4‐33)、不潔だ(4‐34)、忙しい(6‐4)、面倒くさい(6‐5)、だらしない(6‐6)、いやだ(6‐10)、とんでもない(6‐11)、意外だ(6‐12)、たやすい(6‐13)、やかましい(6‐14)、「トゼンダ」の語形と意味(4‐43)、「メンコイ」の語形と意味(4‐44)、「ムゴイ・ムゾイ」の語形と意味(4‐45)、「エズイ」の語形と意味(4‐46)、「オショーシサマ」の語形と意味(6‐48)、「オゾイ」の意味(6‐49)、「ガオル」の語形と意味(6‐50)最下位(5‐20)、逆さま(6‐1)、裏返し(6‐2)、反対(6‐3)、めちゃくちゃ(6‐9)

行為・存在

歩く(2‐9)、走る(2‐10)、はう(2‐11)、かがむ(2‐12)、しゃがむ(2‐13)、あおむく(2‐14)、うつむく(2‐15)、あおむけ(2‐16)、うつぶせ(2‐17)、うつぶす(2‐18)、かぶる(2‐19)、抱く(2‐20)、持つ(2‐21)、掻く(2‐22)、産む(2‐23)、育てる(2‐24)、死ぬ(2‐25)、話す(2‐26)、さけぶ(2‐27)、泣く(2‐28)、食べる(2‐29)、疲れる(2‐30)、怒る(2‐31)、あわてる(2‐32)、騒ぐ(2‐33)、甘える(2‐34)、叱る(4‐38)、だます(4‐39)、からかう(4‐40)、いじめる(4‐41)、仲間に入れる(4‐42)、嘗める(5‐50)、破る(5‐51)、壊す(5‐52)、転ぶ(5−53)、失敗する(5‐54)、困る(5‐55)、弁償する(5‐56)、ふざける(5‐57)、すねる(5‐58)、盗む(5‐59)、片付ける(5‐60)、へらず口をたたく(86‐17)、おしゃべりをする(86‐18)、いる[あそこに〜](91‐21)、いる[休んでいる子供が〜](91‐22)、いる[姉には子供が〜](91‐23)、いる[どこに〜](91‐24)、いる[船が〜](91‐25)、いる[金魚が〜](91‐26)、ある[出目金が〜](91‐27)、ある[大根が〜](91‐28)、「イル」の語形と意味(91‐29)、「イテル」を〈すわっている〉の意で使うか(91‐30)、「ネマル」の意味(2‐35)、いたずら(4‐35)、でたらめ(4‐36)、冗談(4‐37)、悪口(5‐21)

身体部位

頭(91‐1)、頭[〜を横に振る](91‐9)、頭[〜をなでる](91‐10)、頭[〜を洗う](91‐11)、頭[〜がいい](91‐12)、頭[〜が痛い](91‐13)、頭頂(91‐2)、頭蓋骨(91‐3)、脳みそ(91‐4)、髪の毛(1‐1)、ひよめき(91‐5)、顔[顔面](86‐6@)、顔[人相](86‐6A)、顔[表情](86‐6B)、顔[器量](86‐6C)、ひたい(91‐6)、眉間(91‐7)、目玉(1‐2)、ひとみ(1‐3)、まぶた(1‐4)、まつ毛(86‐1)、眉毛(86‐2)、眉[眉墨](86‐3)、下あご[全体](86‐8)、下あご[先](86‐9)、下あご[脇](86‐10)、下あご[角](86‐11)、上あご(86‐12)、あご全体(86‐13)、あご[動物](86‐14)、えら(86‐29)、歯茎(86‐15)、ほお骨(86‐16)、首(91‐8)、首[〜を出す](91‐15)、のど(1‐5)、のどぼとけ(1‐6)、のどひこ(1‐7)、うで[全体](1‐8)、うで[ひじから手首](1‐9)、うで[肩からひじ](1‐10)、ひじ(1‐11)、手首の関節(86‐22)、手の甲(1−12)、手の平(1‐13)、からだ(1‐14)、背中(1‐15)、内臓(1−16)、へそ(1‐17)、尻(1‐18)、男性器(1‐19)、睾丸(1‐20)、女性器(1‐21)、肛門(1‐22)、足(1‐23)、もも・ひざ(1‐24・86‐21)、ひざがしら(86‐20)、すね[全体](1‐25)、すね[前側](1‐26)、ふくらはぎ(1‐27)、足の甲(1‐28)、足の裏(1‐29)、土踏まず(1‐30)、けづめ(8‐30)、「アタマ」の語形と意味(91‐17)、「アタマダ」を〈おおげさだ〉〈おおまかだ〉の意で使うか(91‐16)、「カシラ」の語形と意味(91‐18)、「コーベ」の語形と意味(91‐19)、「ナズキ」の語形と意味(91‐20)、「カオ」を〈スタイル〉の意で使うか(86‐7)、「マミ」の意味(86‐4)、「マミエ」の意味(86‐5)、「カマチ・カバチ」の語形と意味(86‐19)、「アゴ」に関する表現(86‐23)、〈牛馬のつむじ〉をツムジ・ツジと言うか(86‐31)

生理・分泌物

まばたき(1‐31)、めくばせ(1‐32)、声(1‐33)、せき(1‐34)、せきばらい(1‐35)、くしゃみ(1‐36)、しゃっくり(1‐37)、たん(1‐38)、嘔吐(1‐39)、乳(1‐40)、月経(1‐41)、性交(1‐42)、小便(1‐43)、大便(1‐44)、[大便を]する(1‐45)、屁(1‐46)、すかし屁(1‐47)、[屁を]する(1‐48)、居眠り(5‐14)、出産(5‐15)

病気・怪我

病気(1‐49)、風邪(1‐50)、喘息(1‐51)、眼病(1‐52)、下痢(1‐53)、痔(1‐54)、中気になる(1‐55)、てんかん(1‐56)、湿疹(1‐57)、できもの(1‐58)、あばた(1‐59)、あかぎれ(1‐60)、そばかす(86‐24)、しみ(86‐25)、こぶ(86‐27)、いぼ(86‐28)、怪我(1‐61)、傷あと(1‐62)、こむらがえり(1‐63)、〈腫れ物・吹き出物〉を「オモクサ・オモガネ・オモカニ」と言うか(86‐26)、「ナズキヤミ」の語形と意味(91‐14)

人間関係・職業

父(2‐36)、母(2‐37)、祖母(2‐38)、曾祖母(2‐39)、兄弟(2‐40)、兄(2‐41)、姉(2‐42)、弟(2‐43)、妹(2‐44)、末子(2‐45)、伯母・叔母(2‐46)、主婦(2‐47)、赤ん坊(2‐48)、子供(2‐49)、乳母(2‐50)、親類(2‐51)、本家(2‐52)、分家(2‐53)、大工(4‐1)、木こり(4‐2)、猟師(4‐3)、神主(4‐4)、僧侶(4‐5)、乞食(4‐6)、漁師(5‐16)

性格

いたずらっ子(4‐7)、おてんば(4‐8)、泣き虫(4‐9)、おしゃべり(4‐10)、がんこもの(4‐11)、ばか(4‐12)、うそつき(4‐13)、おくびょうもの(4‐14)、けちん坊(4‐15)、道楽者(4‐16)、なまけもの(4‐17)、すけべえ(4‐18)、おっちょこちょい(5‐17)、乱暴者(5‐18)、欲張り(5‐19)、わがまま(6‐7)、間抜け(6‐8)

家屋・道具・金銭

いろり(3‐30)、かまど(3‐31)、台所(3‐32)、炊事(3‐33)、井戸(3‐34)、下水(3‐35)、便所(3‐36)、土間(3‐37)、墓場(3‐38)、針の穴(3‐39)、衣類(3‐40)、鳥もち(3‐41)、斧(3‐42)、天秤棒(3‐43)、財産(3‐54)、金持ち(3‐55)、へそくり(3‐56)、おつり(3‐57)熊手(5‐7)、備中鍬(5‐8)、たきぎ(5‐9)、みぞ(5‐12)、自分の家(5‐13)

農業

稲掛け(3‐44)、稲むら(3‐45)、開墾地(3‐46)、肥料(3‐47)、焼畑(3‐48)、もみがら(86‐34)、ぬか(86‐35)、麦の実の殻(86‐37)、ふすま(86‐38)、しいな(86‐39)、稲穂のくず(91‐36)、麦穂のくず(91‐37)、労働交換(3‐49)、飢饉(5‐6)、〈もみがら〉と〈ぬか〉をまとめて「ヌカ」と言うか(86‐36)、「スクモ・スクボ」の意味(86‐40)、「スクモ」の語形と意味(91‐38)

料理

おにぎり(3‐50)、餅(3‐51)、おはぎ(3‐52)、赤飯(5‐1)、五目飯(5‐2)、雑炊(5‐3)、味噌(5‐4)、鮮魚(5‐5)

習慣・行事・信仰

おやつ(3‐53)、田植え終了の祝い(3‐58)、収穫祝い(3‐59)、出産祝い(3‐60)、婚礼(3‐61)、葬式(3‐62)、お化け(3‐63)、どんど焼き(3‐64)、返礼の品(3‐65)

動物・鳥

雄(3‐14・91‐34)、雌(3‐15・91‐34)、雄馬(91‐31)、雌馬(91‐32)、馬の子(91‐33)、河童(3‐16)、きつつき(3‐17)、つばめ(3‐18)、みそさざい(3‐19)、こうもり(3‐20)、「コマ」の語形と意味(91‐35)

虫・貝

蟻(3‐1)、蟻地獄(3‐2)、毛虫(3‐3)、さなぎ(3‐4)、蝶(3‐5)、蚕(3‐6)、こおろぎ(3‐7)、きりぎりす(3‐8)、蜂(3‐9)、ごきぶり(3‐10)、あめんぼ(3‐11)、みずすまし(3‐12)、「スガリ」の意味(3‐13)、蚊(5‐10)、ぶゆ(5‐11)、つくつくぼうし(86‐32)、ぼうふら(86‐33)、さざえ(3‐21)

植物

おおばこ(3‐22)、いたどり(3‐23)、すいば(3‐24)、ひがんばな(3‐25)、桑の実(3‐26)、どんぐり(3‐27)、もろこし(3‐28)、麻(3‐29)、こずえ(5‐47)

気象・天体

天気雨(5‐22)、にわか雨(5‐23)、みぞれ(5‐24)、吹雪(5‐25)、入道雲(5‐26)、空(5‐27)、明星(5‐32)、北極星(5‐33)、北斗七星(5‐34)

時間・空間

明け方(5‐28)、夕方[早い時間](5‐29)、夕方[遅い時間](5‐30)、夜(5‐31)、大晦日(5‐61)、周囲(5‐48)、側(5‐49)

地形

湿地(5‐35)、泉(5‐36)、堰(5‐37)、藪(5‐38)、峰(5-39)、山の斜面(5‐40)、麓(5‐41)、谷(5‐42)、峠(5‐43)、崖(5‐44)、平地(5‐45)、砂(5‐46)、山頂(86‐41)、十字路(86‐42)

副詞

非常に(6‐15)、たくさん(6‐16)、少し(6‐17)、全部(6‐18)、突然(6‐19)、すぐに(6‐20)、ゆっくり(6‐21)、いつも(6‐22)、時々(6‐23)、一日中(6‐24)、一晩中(6‐25)、全然(6‐26)、いろいろ(6‐27)、一生懸命(6‐28)、やっと(6‐29)、結局(6‐30)、わざわざ(6‐31)、わざと(6‐32)、必ず(6‐33)、無理やり(6‐34)、もう(6‐35)、かわるがわる(6‐36)、大声で泣く様子(6‐41)、しくしく泣く様子(6‐42)

感動詞

話しかけの言葉(6‐37)、驚きの言葉(6‐38)、失敗したときの言葉(6‐39)、痛いときの言葉(6‐40)、ののしりの言葉(6‐43)

あいさつ

別れのあいさつ(6‐44)、客送りのあいさつ(6‐45)、入店のあいさつ(6‐46)、客迎えのあいさつ(6‐47)

文法項目

サメ」の語形と意味(6‐51)、「コソアレ」の語形と意味(6‐52)

※以上の項目は真に学術的な意図で設定したものであるが、病気や性格の語彙など、ともすると差別意識につながる恐れのある項目も含まれているので、結果の扱いには注意が必要である。

2.7.調査事務局

調査事務局は東北大学大学院文学研究科国語学研究室に置いた。調査票の発送・回収および整理作業はそこで行った。さまざまな作業には研究室の学生が参加した。また、調査道具の作成や調査結果のデータ化にあたっては、その設計段階から株式会社東北プリントの協力を得た。


研究補助者 (2000〜2002年度):
野林靖彦、橋本恵美子(以上、東北大学大学院文学研究科助手)アクセノフ・ユージン、飯柴綾、笠井聡子、川越めぐみ、澤村美幸、椎名渉子、鈴木早苗、鈴木洋一、瀧一文、田附敏尚、曹再京、張麗縁、塚野麻衣子、中西太郎、萩平薫、橋本洋輔、細谷久子、宮本康江、矢萩しのぶ、林姿呈(以上、東北大学学生・大学院生)
企画協力 株式会社東北プリント(高橋浩・庄子養通)

<参考文献>

小林 隆(1987)「『日本言語地図』関連意味項目の全国方言調査―語史構成を目的とした、文献国語史との対照における意味的視野からの必要に基づいて―」国立国語研究所『研究報告集』8
同  (1988)「通信調査法の再評価」国立国語研究所『方言研究法探索』秀英出版
同  (1999a)「日本語方言の危機に臨んで」『月刊言語』28−10(リレー連載「危機に瀕した言語を救え!10」)
同  (1999b)「消滅の危機に瀕する方言−方言形成史の立場から−」『日本語学』18−13(臨時増刊号「地域方言と社会方言」)
同  (2002)「方言学のパースペクティブ」日本方言研究会編『21世紀の方言学』国書刊行会
同  (2005)「第二の『日本言語地図』をめざして」『国文学』50−5

 
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