エスペラントは、中立で使いやすい国際共通語です。
エスペラントは民族の言語や文化をその歴史的遺産として尊重し、大切にすると同時に、それぞれの言語や文化の違いを越えて人々がコミュニケーションできるようにするために橋渡しの役目を果たすことを目的としています。
現在、多くの分野で英語が事実上の国際語として使われていることは否定できません。しかし、英語は特定の民族、国家の言葉です。英語でのコミュニケーションは英語の ネイティブスピーカーにとっては都合のよいことですが、外国語として勉強する必要のある人間にとっては不都合です。これはコミュニケーションとしてフェアなあり方ではありません。
エスペラントは、特定の民族集団や国家、地域と対応しておらず、その大部分の話者が、この言語を自分の意思によって選択して学習し、その結果として習得した人であるという点で、極めて特徴的です。自分の母語を他者におしつけることなく、それぞれが他者に歩み寄る姿勢をもっているのです。
このため、エスペラントの使用者(エスペランティスト)はそれぞれ個人として平等の立場に立って話し合うことができるのです。この意味でエスペラントは中立公平です。
エスペラントは1887年、当時ロシア領だった現在のポーランドに住むユダヤ人眼科医ザメンホフ(L.L. Zamenhof)が提唱したものです。単語の要素(形態素)を主にヨーロッパ諸語から取り入れながらも、語構成(造語法)と文法が整理されていて、他の言語に比べてはるかに容易に修得することができます。文法の概要は 「エスペラントの鍵」に手際よくまとめられています。
エスペラントの言語共同体は、自分の母語に加えて、特定の民族集団に属さない言語を意識的に選択した上で学習して使用するという共通の意思と行為を基礎にしてゆるやかに結ばれています。個人の自由意志に基づいているため、その基盤は必ずしも強固とはいえず、また、捉えにくい側面があります。しかし、2回の世界大戦、冷戦体制とその崩壊などの社会的な激動の中を、135年以上にわたって、エスペランティストたちは中立公平な国際共通語の実践を続けてきました。これらの人々の活動によって、エスペラントは生きた言語として育ってきています。
日本エスペラント協会による「Saluton! - エスペラントとは」(初めての方向け エスペラント広報ウェブサイト)にはエスペラントの紹介動画がいくつも掲載されているほか、基礎知識や学習方法についても紹介されています。ほかに、Youtubeの動画「エスペラント語の簡単な紹介」や「15分でわかるエスペラント講座」などに簡潔にまとめられています。学習教材の紹介もあります。エスペラント語初級 自習用教材集からも各種の教材にアクセスできるようになっています。
京都市のコミュニティ放送京都三条ラジオカフェでは2016年3月以来月に2回「エスペラントって何?」という番組を放送して、エスペラントの魅力を伝えています。NHKでは2020年9月7日にラジオ第1NHKジャーナルの中で、「コロナ禍で人気再燃。“希望”の言語、エスペラント」のタイトルでジャーナリストのトニー・ラズロさんからエスペラントについて話を聞く番組を放送しました。朝日新聞は2020年1月18日に「(be report)国際語エスペラントは今 ネット時代に再ブレーク?」(要会員登録)を伝えました。
世界では、ヨーロッパが活動の最も盛んな地域ですが、アジア、アメリカ、オセアニアそしてアフリカなど世界各地にエスペランティストがいます。世界エスペラント大会が、1905年以来(世界大戦の間を除いて)毎年開かれているのをはじめ、世界青年大会やそのほか大小さまざまな会合が催され、通訳のいない国際会議が実現されています。
東アジアでは日本の活動が特に有力です。エスペラントは20世紀のはじめごろからさまざまなルートを通して日本に伝わってきましたが、1906年に二葉亭四迷が日本最初の教科書を刊行し、黒板勝美らによって日本エスペラント協会が設立されて、組織的な活動が始まりました。その後、多くの人々が直接間接にエスペラントに関わり、活動が続けられてきました。日本における組織的なエスペラント活動に関わった人々の事跡を記録した『日本エスペラント運動人名事典』が刊行されました。特に仙台という地域を例にとった、草の根でエスペラントを実践した人々の活動に関しては、エスペラントを育てた人々 ―仙台での歴史から―をご覧ください。
日本では年一度の日本大会が最大の行事です。他の主なものは 「行事 Eventoj」や 「主な国内外のエスペラント行事」や 「催し物情報」に案内があります。
韓国や中国にもしっかりした活動があります。特に中国は出版が盛んですし、中国国際放送局 (旧北京放送)は長く短波でエスペラント番組を放送していました(現在はネット配信)。長く広報誌として発行されていたEl Popola Ĉinioもネットに移行しています。1982年から続いていた日韓青年セミナーは、95年から中国を加え、2010年にはベトナムで開催され、より広範囲な東アジア青年エスペラント合宿になりました。
現在では講座類のほかにも多くの動画がYoutubeなどを通じて公開されており、世界大会など会合や個人間の交流の様子など、様々な実際の使用の場面を目と耳で確かめることも容易になりました。例えば、以下のリンクをお試しください。
世界の多くの文学作品がエスペラントに翻訳されており、原作の文学も数多く著されています。実用書や科学技術の専門書はそれに比べれば多くはありませんが、碁や空手、マッサージ、料理から中国哲学、経済学、気象学、解剖学にいたる幅広い分野の本が出版されています。歌のテープやCD、ビデオもあります。その一端は日本エスペラント協会の「エスペラント図書カタログ」で知ることができるでしょう。Libroなどのサイトで無料ダウンロードできる本も数多くあります、とても読み切れないほどです。
上で中国に関連して述べたように、かつて各地から定期的にニュースなどを放送していたエスペラントのラジオ放送は、ネット配信に移行しつつあります。参入障壁が低くなったことから、新しく生まれた配信サイトもあり、内容も多岐にわたるようです。Pola retRadio (ポーランド)、バチカン放送、Radio Havano Kubo (キューバ)などが比較的よく知られています。
Wikipediaエスペラント版は言語人口のわりに内容が充実していることで知られています。姉妹プロジェクトとしてウィキニュース、ウィキボヤージュなども運営されています。
言葉としてのエスペラントは、各地の講習会で学べる他、 学習教材を使って独習することもできます。沼津エスペラント会による 初級通信講座も定評があります。
ネット上にも、 Kurso de Esperanto (日本語版もあるエスペラント自習ソフトの無償配布)や、 12レッスンのエスペラント、 ドリル式エスペラント入門、 lernu!、 Duolingo、 沼津エスペラント会の 「ネットワーカーに贈るエスペラント入門」などのサイトがあり、オンラインで学習することもできます。ウェブ上で引ける実用エスペラント小辞典もあります。
2006年、後藤が編集副主幹として関わった『エスペラント日本語辞典』(日本エスペラント学会)が刊行されました。これは「高度な学習辞典」を目標に編集されたもので、重要語を中心に語義説明や用例を充実させ、学習上の疑問に答える注記も多くしてあります。LogoVistaから第二版の電子辞書も刊行されています。
世界エスペラント協会は NGOの一つとして国連やユネスコに協力しています。ユネスコはエスペラントの意義を認める決議を2回行いました。1954年ウルグアイのモンテビデオで開かれた 第4回総会で採択された決議(IV.1.4.422-4224)では、エスペラントがそれまで国際交流で示した成果を認め、それがユネスコの目的に合致すると述べています。1985年ブルガリアのソフィアで開かれた 第23回総会での決議(XXIII.11.11)は、エスペラントの百周年を2年後に控えて、それを祝賀するとともに、加盟国やNGOに対して祝賀行事に協賛するよう呼びかけるものでした。2017年はザメンホフ生誕150年を祝賀しています。ユネスコが発行する『クーリエ』誌はエスペラント版(Kuriero)も刊行されるようになりました(別サイト UNESCO Kuriero)。
日本エスペラント協会も、国内のユネスコ活動に協力しています。各地のエスペラント会の中にも、地域の国際交流に貢献しているところがいくつもあります。
1994年のノーベル経済学賞受賞者 Reinhard Selten氏 (元ボン大学教授)は、エスペラントを通じて夫人と知り合い、エスペラントは今でも人生に大きな影響を与えている、と語っています。
1996年7月チェコのプラハで開かれた第81回世界エスペラント大会で採択された「国際語エスペラント運動に関するプラハ宣言」もお読み下さい。これは言語権を保障する民主的な国際コミュニケーションという観点からエスペラント運動を捉え直そうとするものです。
外国語が読める方は Esperanto.net もご覧下さい。
直接にエスペラントに関するものではありませんが、ユネスコのLINGUAPAX Projectも参考になるでしょう。また、「言語権」という考え方についてはUniversal Declaration on Linguistic Rightsも一読の価値がありそうです。
エスペラントを言語学的に扱おうとする方には、まずは下記の文献を読むことをお勧めします。Fieldler and Brosch (2022)は無料でダウンロードできます。
参考として、後藤が書いた文章もどうぞ。なお、掲載誌によって想定する主な読者対象が異なりますので、お読みの際はお含みおきください。
参考として、後藤が行った講演の資料もどうぞ。なお、聴衆にある程度のエスペラントないし歴史の関連知識があることを前提としているところがあります。お含みおきください。
以前入力したエスペラントアカデミー選定のBaza Radikaro OficialaをCSVフォーマットに変え、テキストファイルで公開します。
Baza Radikaro Oficiala en CSV-formato (54K)
ただし、説明はありません。Baza Radikaro Oficiala の意味は別途お調べ
下さい。
日本エスペラント協会は、エスペラントの普及発展を目的として日本におけるエスペラント関係者の全国的法人組織として国内で種々の活動を行っています。1919(大正8)年に創立(1926年に財団法人として認可)された日本エスペラント学会が2012年に改称したものです。日本のエスペラント運動を国際的に代表して世界エスペラント協会(本部はオランダ、ロッテルダム)に加盟しています。
エスペラントに関するお問い合わせは:
日本エスペラント協会
〒162-0042 東京都新宿区早稲田町12-3
Tel. 03-3203-4581, Fax: 03-3203-4582
メールは上記ウェブサイトから。