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『エスペラント』(La Revuo Orienta) 第78巻(2010)7月号, pp.14-15. 掲載

de vorto al vorto (13) tujとbaldaŭ

後藤 斉


tujは「すぐ, ただちに」、baldaŭは「やがて, まもなく, しばらくして」で、どちらも『エス日』でランクAの基本単語です。baldaŭの項には「比較: baldaŭは「比較的短い時間の後」であって,少し間があるのに対して,tujは「間をおかずに, ただちに」である」と解説がつけてあります。

tujとbaldaŭが意味の上でたがいに関連していることは明らかでしょう。しかし、その使い方にはいくつかの違いがあることも事実です。今回は主にその違いに注目することにしましょう。

tujとbaldaŭの違いは、「少しの間」があるかないかだけでなく、その間をどの時点から起算するかにも違いがあるようです。baldaŭでは、発話の時点ないし文脈から決まるある時点を起点とした時間の経過を表すだけなのに対して、tujではこれに加えて、刺激と反応とでも言えそうな、もっと密接な関係を表すことがあります。例えば、Mi baldaŭ respondos al lia letero.では「現時点を起点として間もなく」と解釈するのが普通ですが、Mi tuj respondos al lia letero.では、「現時点を起点としてただちに」の解釈のほかに、「(まだ受け取っていないが)彼の手紙を受け取ったらただちに」という解釈も十分成り立ちます。

tujは、それ自体の意味に絶対的な近接性が含まれているためか、他の単語を添えてさらにtujを強めるということはあまりないようです。例えば、tre tujといった表現はきわめてまれですし、pli tuj, plej tujなど比較の表現も同様です。

それでもtuj自体に手を加えて強調を表すことが時に見受けられます。tujtuj (tuj-tuj)という繰り返し、副詞語尾をつけてtuje, tujtuje、さらに増大接尾辞をつけてtujegeなどです。

tujは起点を明示する語句をつけることがよくあります。tuj antaŭ la komenco「開始の直前に」、tuj post lia alveno「彼の到着後ただちに」、tuj ĉe la fondiĝo「創立されるとただちに」、tuj de la komenco「始めからすぐに」などです。tuj antaŭe, tuj poste, tuj dekomenceと他の副詞を伴うこともあります。

起点となる時点を節によって表現する場合には、tuj (post) kiam li foriris「彼が立ち去るとすぐに」のように使います。同時性を強調すればtuj kiam ...、後であることをはっきり表せばtuj post kiam ...となるのでしょうが、実際にはほとんど無差別に使われているようです。

一方、baldaŭから作るbaldaŭeという副詞は、用例が皆無ではありませんが、tujeほどには目立ちません。反面、baldaŭを他の単語によって強調することは可能です。少しは間をおくものの、その間が短いことを強調するのです。このような場合は「あまり間をおかずに」と考えるとわかりやすいでしょう。実際、tre baldaŭは非常によく使われる表現です。ege baldaŭ, treege baldaŭ, tute baldaŭ, vere baldaŭもよさそうです。伝えたい意味によってはtro baldaŭも使えます。

plej baldaŭもありますが、この場合のplejは、他と比較して「最も〜」というより、「とても, 最高に」の意味で使っているでしょう。さらに、kiel eble plej baldaŭ, plejeble baldaŭ, laŭeble baldaŭ「できるだけ〜」という表現もあります。

これらは依頼のときに使いやすい表現です。Bonvolu veni tuj.では、こちらの都合を相手に一方的に強いているように響いて、状況によっては少し直接的すぎるように感じられるおそれがあります。Bonvolu veni plej baldaŭ.ならば、相手の都合で少し間をおくことも許容する言い方になっています。

baldaŭもさすがに典型的な比較構文ではあまり使われていませんが、Ju pli baldaŭ, des pli bone.「あまり間をおかなければおかないほどよい」ではそれほど違和感はないでしょう。pli-malpli baldaŭも使われます: Pli-malpli baldaŭ ŝi ekscios la veron.「遅かれ早かれ、やがて彼女は真実を知るだろう」

tujには、位置関係について、直接の隣接性を強める使い方もあります。tuj proksime, tuj apude, tuj dekstre, tuj apud la pordo, tuj antaŭ miaj okuloj, tuj malantaŭ la stacidomoなどです。baldaŭには位置関係に関わる使い方はありません。

品詞語尾をつけることによって、対応する意味を持つ別の品詞の単語が作られることは、エスペラントの大きな特徴です。日本語では「すぐの」や「まもなくの」はぎこちなく聞こえるかもしれませんが、エスペラントの形容詞tuja, baldaŭaは気軽に使える単語です。tuja konsento「即座の同意」、baldaŭa eldono「間もなくの刊行」などです。

ここでも、Mi dankas vin pro via tuja respondo.「さっそくご返事いただきありがとうございます」とMi atendas vian (tre) baldaŭan respondon.「お早いお返事をお待ちしております」とが、それぞれの状況で適切です。ここでtujaとbaldaŭaを入れ替えると、適切さが失われてしまいます。

例はあまり多くはないのですが、tuji, baldaŭiのように動詞として使われることもあります。La fino tujas.「終りはすぐだ」、La kongreso baldaŭas.「大会は間もなくだ」などは、いかにもエスペラントらしい表現にも思われます。ただ、実際には一般に広く使われているとは言えません。このような表現を使うと、文章になにがしかの文体的な特徴を添えることになると言えるでしょう。

tujはいくつかの合成語を作ることもできます。tujsekva「すぐ後続する、次の」、tujposta「直後の」、tujsuba「すぐ下の」などです。tujpreta「インスタントの」、tujmortiga「急性致死性の」もあります。インスタントコーヒーをtujkafoと、インスタント麺をtujnudelojと好んで言う人もあるようです。

インターネット上のサービスの一種としてインスタントメッセージが開発されましたが、これにはtujmesaĝadoという訳語が当てはめられました。そのためのソフトウェアであるインスタントメッセンジャーはtujmesaĝiloです。

それに比べるとbaldaŭの造語力はあまり高くありません。特に意識する必要のあるものはないと言ってもいいでしょう。malbaldaŭが時に見受けられますが、どうも冗談めかして使っていることが多いようです。


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