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『エスペラント』(La Revuo Orienta) 第80巻(2012)12月号, pp.9-10. 掲載

de vorto al vorto (35) favora

後藤 斉


『エス日』は形容詞favoraについて「あるものにとって有利な意図・効果をもつ」という基本義のあとで、第1義として「<物事に対し>好意的な; <人・意見に>賛成の」を、第2義として「<物事にとって>好都合な, 有利な」を挙げています。

違いが少し分かりにくいかもしれませんが、第1義の方は、人が他者に対して示す態度を形容する場合です。人やその言動を表す語とともに使って、他者によかれという思いがあること、言い換えると、賛同ないし支持していることを表します。例文として挙がっているfavora takso「好意的な評価」,Ili estas favoraj al via propono.「彼らは君の提案に好意的だ」は十分に分かりやすいでしょう。なお、後者に見られるように、だれ(何)に対して好意的であるかをはっきり示すには、通常は前置詞alを使いますが、まれにrilate ion [al io]とした実例も見られます。

例文をもう少し追加すると: favoraj voĉoj「賛成意見、支持票」、ĝui favoran traktadon「有利な取り計らいを受ける」、La urbestro montris tre favoran sintenon al nia projekto.「市長は私たちの企画に好意的な姿勢を見せた」、La verko ricevis favoran akcepton de la legantaro.「その著作は読者層から好意的に迎えられた」、Mi ne havas tre favoran impreson pri la kandidato.「私はその候補者についてあまりいい印象を持っていない」。favoraとよく結びつく語としては、decido, prijuĝo, reago, politiko「政策」などもあります。

ある対象に関する発言や文書についてfavoraと言うこともよくあります。例えばNitobe prezentis favoran raporton pri Esperanto.「新渡戸はエスペラントに好意的な報告書を提出した」。favora recenzo, mencio, opinio, komento, artikolo, rezolucioなども同様です。

第2義の「<物事にとって>好都合な, 有利な」は、人の意図や言動というより、所与の環境の性質を形容する場合です。用例としてfavora vento「順風」、favoraj cirkonstancoj [kondiĉoj]「有利な状況[条件]」、grundo favora por greno「穀物栽培によい土壌」が挙がっています。

ここでももう少し例文を追加しておきましょう: maltrafi [atendi] favoran okazon「好機を逃す[待つ]」、utiligi favorajn situaciojn「有利な状況を利用する」、krei pli favoran atmosferon「さらに有利な雰囲気を作り出す」、favora situo por evoluigo「開発に好適な立地」。

favora prezo「優待価格、お買い得な値段」のように金額について使うこともあります。favora kotizo, tarifoや、favora interezo, kompenso, kurzoなどもそれに近いでしょう。天候や時間について言うこともあります。favora klimato, vetero, momento, periodo, sezono, tempoなどです。

なお、favora klimato por disvastigado「普及活動に適した情勢」、favora grundo por sociaj reformoj「社会改革に適した土壌」のように、いくつかの語は比喩的にも使われることに注意しましょう。

すでに例に挙げたように、何にとって好都合なのかを表すには、よく前置詞porが使われます。ただし、politika situacio favora al reformo「改革に好都合な政治状況」のように前置詞alを使った実例を見かけることもあります。

第1義と第2義のいずれの場合にも、強調したいときは、副詞tre, aparte, speciale, eksterordinareなどを添えます。また、favoraはpli, plejやrelative, sufiĉeなどの副詞とも相性がいいようです。

副詞favoreは形容詞favoraに近い頻度でよく使われる語です。使い方も形容詞の場合とほぼ平行して、『エス日』の用例decidi aferon favore al iu「<人に> 有利に事柄を決める」が典型例です。例を追加すれば、favore aŭskulti [akcepti] peton「頼みを好意的に聞き入れる[受け入れる]」、favore konsideri proponon「提案を好意的に考慮する」、esti favore rigardata「好意的に判断されている」などです。

副詞は動詞などを修飾するのが主な使い方ですが、名詞を修飾するように使われている例もかなり見られます。行為名詞の場合が多いようですが、favoreはagado favore al demokratiigo「民主化に資する活動」のように使われることがあるのです。argumento favore al la registaro「政府寄りの議論」、iniciato [kampanjo] favore al lingva diverseco「言語の多様性を守るための発議[キャンペーン]」などもあります。

動詞favoriについて『エス日』は「<人に>恩恵を与える, <人を>優遇する, ひいきする」という語義を与えて、La vetero nin favoris.「われわれは天気に恵まれた」などの例文を添えています。mia favorata aktoro「私のひいきの俳優」のように受動分詞にすることもできます。

ただし、favoriが人以外のものを目的語にとる実例は少なくありません。Esperantistoj favoras internaciajn kontaktojn.「エスペランティストは国際交流を推進している」、Abunda pluvo favoris la kreskon de arboj.「豊富な雨量が木々の成長を促進した」、faktoroj, kiuj favoris la uzon de la angla「英語の使用に有利に働いた要因」などといった例です。受け身でtemo favorata de la aŭtoro「著者のお気に入りのテーマ」、malpli favorataj regionoj「あまり恩恵を受けていない地域」などの表現もあります。

名詞favoroの頻度はだいぶ下がります。『エス日』の語義「好意; 支持, 優遇; 恩恵」がおおむね当てはまります。これを目的語にとる動詞としてserĉi, trovi, perdiが列挙されていますが、ほかにpeti, (re)akiri, havi, ĝui, montriなどがあります。trakti kun speciala favoro「特別に優待する」のように使うこともできます。

接頭辞mal-がついた反対語malfavora, malfavore, malfavori, malfavoroの使い方も元の語から十分に類推できそうです。例をいくつか挙げるにとどめましょう: malfavore trakti「不利な取り扱いをする」、seksa malegaleco malfavore al la virinoj「女性に不利な性の不平等」、Geografia izoleco malfavoris niajn kontaktojn.「地理的に孤立していることで私たちの交流が阻害された」。

最後に『エス日』に載っていない合成語を挙げると、favorpreza bileto「おトクな切符」、favorpreze「優待価格で」があります。ザメンホフはfavorkora「心やさしい、思いやりのある」を多用しましたが、現代ではbonkora, indulgaが好まれています。


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